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警視庁物語 深夜便130列車|刑事ものドラマの先駆け【サライ名画館】

東京都内を中心に、全国の映画館で上映される映画史に残る往年の名作から、川本三郎さんが推薦する作品をご紹介します。

ラピュタ阿佐ヶ谷 モーニングショー「警視庁物語 DEKA SPIRITS」より
警視庁物語 深夜便130列車(昭和35年)
選・文/川本三郎

『警視庁物語 深夜便130列車』より。東京駅から急行「筑紫」に乗って乗客に紛まぎれ、犯人を追い詰める刑事たち(左から花沢徳衛、中山昭二)(C)東映。

昭和三十年代の人気シリーズに東映の『警視庁物語』がある。全二十四作が作られた。名探偵の推理によってではなく、刑事たちの足を使った地味な捜査によって事件が解決されてゆく。のちのテレビの刑事ものの先駆けとなる。

生みの親はクレジットに「企画」と出る斉藤安代(やすのり)と、大半の脚本を手がけた長谷川公之。長谷川は警
視庁で科学捜査の仕事をしていた体験を生かした。

第十二作『深夜便130列車』(昭和35年、新人の飯塚増一監督)はとくに秀作。

当時、新橋駅に併設されていた汐留貨物駅から始まる。「東京駅が乗客の玄関口とすれば、汐留駅は貨物の玄関口である」と説明がされる。ここは一代目の新橋駅が場所を現在の位置に移した時に貨物駅になった。八〇年代に民間に売却され、その広大な土地には現在、高層ビルが建つ。

汐留駅に大阪から運ばれてきたジェラルミンのトランクが届く。引取人が現われない。異臭がするので職員が開けると女性の死体が。

刑事たち( 神田隆、堀雄二、花沢徳衛、須藤健、山本麟一らおなじみのメンバー)の捜査が始まる。

死体の身許確認に手間取るが、当時まだ珍しかったコンタクトレンズからようやく化粧品のセールスをしていた女性と分かる。

このシリーズの特色は、刑事たちがよく町を歩くので、昭和三十年代の東京の懐しい風景が随所にとらえられていること。

汐留貨物駅をはじめ、新宿西口にあった文化服装学院の円型の校舎、南千住の隅田川貨物駅、三河島の築堤を走る常磐線の蒸気機関車、最後、犯人を逮捕する明け方の東京駅。

犯人の恋人(小宮光江)が船橋ヘルスセンターの踊子という設定も懐しい。昭和三十年に開場した庶民向けの娯楽センター。昭和五十二年に閉じるまで人気があった。

犯人が社会の底辺にいる人間なのが悲しい。犯人の実家は名古屋の干拓地の農家だったが、伊勢湾台風で被害を受けた。恋人は九州出身、父親は炭鉱夫で失職した。
社会派ドラマになっている。

毎回のように出演する傍役、菅井きんと谷本小夜子にも注目。

文/川本三郎
評論家。昭和19年、東京生まれ。映画、都市、旅、漫画など、幅広いテーマで評論活動を繰り広げる。著書に『荷風と東京』『映画の昭和雑貨店』など多数。

【今日の名画】
『夜の河』
昭和35年(1960)日本
監督/飯塚増一
脚本/長谷川公之
出演//堀雄二、中山昭二、神田隆、花沢徳衛、ほか
上映時間/1時間20分

【上映スケジュール】
期間:上映中~3月3日(土)
 *上映時間は要問い合わせ
会場:ラピュタ阿佐ヶ谷
東京都杉並区阿佐谷北2-12-21 交通:JR中央線阿佐ヶ谷駅より徒歩約2分 電話:03・3336・5440
http://www.laputa-jp.com

※ラピュタ阿佐ヶ谷では1月5日(金)から3月3日(土)まで、モーニングショー「警視庁物語 DEKA SPIRITS」と題してシリーズ全24作のうち、第12作『深夜便130列車』など中期以降の8作品を1週間ずつ上映する。

※この記事は『サライ』本誌2018年2月号より転載しました。

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