新着記事

作家・石牟礼道子さんが問いかけた「食」の本来あるべき姿とは

文・撮影/大沼聡子私たちは日々、食べて生きている。昔とは違い、現代の暮らしは…

性欲減少だけじゃない!「男の更年期」が起こす体の不調あれこれ

文/緒方文大「生涯若々しくありたい!」と願う人は多いでしょう。しかし、男性は50代を…

国宝指定の縄文土器・土偶が勢揃い!特別展「縄文―1万年の美の鼓動」

取材・文/藤田麻希今からおよそ1万3000年前から約1万年つづいた縄文時代。氷期が終わり、安…

天然の鰻はどうして「狐うなぎ」と呼ばれるのか?【食いしん坊の作法 第7回】

文/山本益博夏の土用丑の日が近くなると、「鰻の蒲焼」が必ず話題に上ります。「蒲焼」の焼けるに…

あのドレッシング発祥の地!カナダのサウザンアイランド紀行【カナダ・オンタリオ州の旅1】キングストン市内とサウザンアイランドクルーズ

写真・文/石津祐介カナダの中東部に位置し、トロントやオタワといった主要都市を要するオンタリオ…

それでも貴方は寝ないのか?「睡眠不足」の危険すぎる悪影響5つ

文/中村康宏睡眠、足りてますか?睡眠には、身体の状態を一定に保つ(恒常性を維…

戦国の光と影~前田利家のライバル・佐々成政の悲話【にっぽん歴史夜話6】

 文/砂原浩太朗(小説家)武田信玄と上杉謙信、宮本武蔵と佐々木小次郎など、歴史上には…

【夕刊サライ/福澤朗】講演後のビールとつまみが最高!(福澤朗の美味・料理コラム 第7回)

夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。金…

もし有名高校の野球ユニフォームの文字がこんなだったら…【イシグロ妄想研究所 vol.6】

構想・文・イラスト/石黒謙吾(分類王)画像作成/澤田洋佑高校野球、甲子園の100…

作家・田中英光が自殺前に遺書を書いた太宰治の本【文士の逸品No.29】

◎No.29:田中英光の本文/矢島裕紀彦東京・駒場の日本近代文学館に蔵される…

サライ最新号

ピックアップ記事

>>過去の記事へ

サライの通販

>>過去の記事へ

趣味・教養

夜の河|若く美しい染物職人と学者の恋を描く名画【サライ名画館】

東京都内を中心に、全国の映画館で上映される映画史に残る往年の名作から、川本三郎さんが推薦する作品をご紹介します。

老舗京染屋の長女で染物職人のきわ(山本富士子)は、妻子がいる大学教授の竹村と出会い、恋に落ちてしまう。(c)KADOKAWA1956

角川シネマ新宿 特集上映「大映女優祭」より
夜の河(昭和31年) 選・文/川本三郎

山本富士子の代表作。京都の染物職人の娘を演じ、美しさと、働く女性の芯の強さを見せる。

澤野久雄が『文学界』に発表し芥川賞候補になった作品を田中澄江が脚色。監督は『偽れる盛装』(昭和26年、京マチ子主演)など京都ものに定評のある吉村公三郎。

大阪生まれ、京都の女学校に通った山本富士子が京女を演じる。

京都の堀川にある染物職人(東野英治郎)の娘で、自分も父の下で仕事をする。父が頑固なこともあって家業は厳しくなっている。若い職人は「こんな仕事、古臭い」と辞めてゆく。

娘のきわ、山本富士子は、そんななか父親を支え、古いのれんを守ってゆこうとする。自分から次々に新しいデザインを考える。

想を得るため、奈良の法隆寺を訪ねた時、女学生の娘(市川和子)を連れた大学教授の竹村(上原謙)に会い、心惹かれてゆく。

竹村は遺伝学の学者。遺伝子の研究に打ちこんでいる。ある時、彼女は仕事で東京に行くことになる。夜行列車の食堂で、偶然、竹村に会う。彼は、大事な実験に失敗したといって落込んでいる。

その姿を見て、彼女は言う。「先生がいちばんがっかりしている時におそばにいられて(うれしい)」。この時の山本富士子のはにかんだ美しさは特筆に値する。

二人は八月、大文字の夜、木屋町の旅館で結ばれる。このラブシーンも官能的でいて品がある。部屋に射し込む赤い夕日が二人を淡く包んでゆく(撮影は宮川一夫)。

竹村には実は長いあいだカリエスで寝ている妻がいる。その妻が亡くなり、竹村はきわに結婚を申込む。奥さんが死んだのを待っていたかのように求婚する男が信じられないし、奥さんの死によって自分が幸せになるのも潔しとしない。決然と男と別れる山本富士子が素晴しい。

宮川一夫のカメラは、要所要所で赤をうまく使う。染物、花、そして最後、京の町をメーデーのデモ隊が労働歌『世界をつなげ花の輪に』を歌いながら行進する時に持つ赤い旗。

まだ市電の走る堀川の通り、四条大橋、珈琲店イノダなど昭和三十年代の京都が懐しい。

文/川本三郎
評論家。昭和19年、東京生まれ。映画、都市、旅、漫画など、幅広いテーマで評論活動を繰り広げる。著書に『荷風と東京』『映画の昭和雑貨店』など多数。

【今日の名画】
『夜の河』
昭和31年(1956)日本
監督/吉村公三郎
原作/澤野久雄
出演//山本富士子、上原謙、小野道子、川崎敬三、ほか
上映時間/1時間44分

【上映スケジュール】
期間:12月9日(土)~1月12日(金)
 *上映時間は要問い合わせ
会場:角川シネマ新宿
東京都新宿区新宿3-13-3新宿文化ビル4・5階 交通:東京メトロ・都営地下鉄新宿三丁目駅より徒歩約2分 電話:03・5361・7878
http://www.kadokawa-cinema.jp/shinjuku/

※角川シネマ新宿では12月9日(土)~1月12日(金)まで、大映創立75周年を記念し、「大映女優祭」を開催。日本の映画史を彩った名女優たちの傑作全48本を上映。以後、全国で順次上映されます。

※この記事は『サライ』本誌2018年1月号より転載しました。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

関連記事

  1. 切腹したくない武士がなぜ切腹するに至ったか?映画『切腹』衝撃の物…
  2. 江分利満氏の優雅な生活|鬼才・岡本喜八が描く戦中派サラリーマンの…
  3. 『モスラ対ゴジラ』|マドンナ星由里子の可愛さにメロメロ!【面白す…
  4. 巨匠・小津安二郎の不朽の名作が「4Kデジタル修復」され一挙上映
  5. 嵐(昭和31年)|妻に先立たれた男を笠智衆が好演した家庭劇の秀作…
PAGE TOP