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「末はのたれ死になってもいいんだ」(室生犀星)【漱石と明治人のことば104】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】
「末はのたれ死になってもいいんだ。千古の文学をひねくるのではないのだ。どうせ小説家の屑になって吹ッ飛んでしまうのだ、書けるだけ書いて廃艦になってもいいのだ」
--室生犀星

『文学的自叙伝』に上のように書きつけた通り、室生犀星は強い自意識と気概を有していた。「悪文」とも評された自己流の文体で、生涯、書き徹(とお)した。

明治22年(1889)金沢の生まれ。父親は旧加賀藩の足軽組頭。母親はその屋敷で働いていたお手伝いさんと伝わる。望まれぬ子として生後まもなく里子に出され、暗鬱な暮らしをなめた。

はじめ、自費出版した『愛の詩集』『抒情小曲集』で詩人として注目を集める。「ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの」という『抒情小曲集』中の一節は、今も暗誦している人が多いだろう。その後、小説にも手をそめ、『幼年時代』『杏っ子』などを書いた。

文人として世に出たのち、信州・軽井沢の地を好み、自身、愛着をこめて「コホロギ箱」と呼ぶ別荘を建てた。現在、そこは室生犀星記念館となっている。

私は以前、そこで、犀星遺品のガラス瓶を見せてもらった。ひと抱えほどの大きさ。食物の貴重な戦中・戦後、砂糖などの甘味をその中に入れ、大切に保管したらしい。

ある時期の犀星は、米軍から流出の闇物資のミックスピーナッツをこのガラス瓶の中に移し入れ、傍らに置いて、楽しみに食べていたという。老境に入っての童子にも似た所業。そこにふと、犀星の創作の原点ともなった、寂しい生い立ちの影を見た。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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