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「たたいても駄目だ。独りで開けて入れ」(夏目漱石)【漱石と明治人のことば102】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】
「敲(たた)いても駄目だ。独りで開けて入れ」
--夏目漱石

小説『門』は夏目漱石の前期三部作のひとつ。『三四郎』『それから』につづく作品として書かれた。

『それから』では、主人公の代助がヒロインの三千代と一緒になるため、仕事を求めて世間へ出ていったが、『門』では主人公の宗助と妻のお米は、ひっそりと仲睦まじく暮らしている。

そこに友人の安井が戻ってくるという話が浮上する。宗助は安井を裏切って、その妻だったお米と結婚した経緯があった。罪の意識に苛まれ、宗助は鎌倉の寺に参禅するのだが、悟りの門は容易には開かない。

上に掲げたのは、『門』の終盤に登場することば。前後を含めてその一節を改めて記せば、次のようになる。

「自分は門を開けてもらいに来た。けれども門番は扉の内側にいて、敲いても遂に顔さえ出してくれなかった。ただ、『敲いても駄目だ。独りで開けて入れ』という声が聞こえただけであった」

ちょっと叩いたくらいで、内側から門を開けてくれたりはしない。他人任せでなく、門は自分の力で開けなければ駄目だ。そういう意味が含まれているだろう。

なかなか簡単なことではないが、なにごとかを達成していくためには、それだけの覚悟と努力が要る。漱石はそう言って、私たちを励ましてくれているのだろう。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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