サライ『2月号』は作家・藤沢周平を大特集。読者の背中をそっと押してくれるような優しい眼差しを持つ藤沢の魅力を、さまざまな角度から検証した。

今回はその中から、「海坂藩はかくありや!」と思わせる、藤沢周平の作品世界を体感できる山形・庄内の9カ所の見どころをご紹介しよう。

■1:鶴ヶ丘城址(鶴岡公園)

鶴ヶ丘城址は、「日本のさくら名所100選」にも選ばれ、県下で最も早く見ごろを迎える桜の名所。小説『花のあと』でも、《二ノ丸の濠ぞいの桜は、それは見事なもの》に始まり、藤沢らしい巧みさによって、花の美しさを賞賛している。
園内には、庄内藩酒井家の初代忠次公を祀る荘内神社が鎮座する。

住所:鶴岡市馬場町4
電話:0235-25-2111(鶴岡市役所都市計画課公園緑地係)
交通:JR鶴岡駅よりバスで約10分、市役所前下車、徒歩約2分

■2:致道博物館

鶴ヶ丘城(鶴岡公園)の三ノ丸、庄内藩御用座敷のあったあたりに明治期の旧西田川郡役所、旧鶴岡警察署庁舎(改修中)など、山形県の歴史的建造物が移築されている。それらのすべてで歴史的資料や美術品などを収蔵展示、全体で「致道博物館」を構成している。映画『蟬しぐれ』の撮影に使われたことでも有名。敷地内に移築された湯殿山麓にあった田麦俣(たむぎまた)の茅葺きの多層民家(旧渋谷家住宅)では、きぬた屋という酒屋の場面が撮られた。

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住所:鶴岡市家中新町10-18
電話:0235-21-1199
開館:9時~17時(最終入館16時30分。12月~2月は最終入館16時)
休日:水曜(12月~2月)、年末年始
料金:700円
交通:JR鶴岡駅からバスで約10分、致道博物館下車すぐ

■3:庄内藩校 致道館

庄内藩の藩校だった「致道館」は、東北で現存する唯一の藩校建造物。藤沢作品では、三省館(さんせいかん)(『蟬しぐれ』)や松柏館(しょうはくかん)(『山姥橋夜五ツ(やまんばばしよるいつつ)』として登場する。

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住所:鶴岡市馬場町11-45
電話:0235-23-4672
開館:9時~16時30分(冬場は天候によって中の門を閉めることもあるが、入り口にある管理事務所に声をかければ開けてくれる)
休日:水曜(祝日の場合は開館、翌日以降の平日休み)、
料金:無料
交通:JR鶴岡駅からバスで約10分、市役所前下車すぐ

■4:旧風間家住宅 丙申堂

平成17年に公開された映画『蟬しぐれ』に登場する、牧文四郎(まきぶんしろう)(市川染五郎)とふく(木村佳乃)が20四年ぶりに再開する場面の撮影に使われたのが丙申堂。庄内の豪商屋敷である。藤沢小説に登場する舞台ではないものの、作中に描かれる海坂(うなさか)の城下町を彷彿させる歴史遺産(国の重要文化財)である。

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住所:鶴岡市馬場町1-17
電話:0235-22-0015
開場:9時30~16時30分(最終入館16時)
休日:12月1日~4月9日(3月1日~31日は雛人形を展示、入館可能)
料金:400円
交通:JR鶴岡駅からバスで約10分、銀座通り下車徒歩約3分

■5:湯田川温泉

《城下からおよそ二里ほどの山麓に、家中、町方の者を問わずひとが行く湯治場がある。十軒あまりの湯宿がかたまる場所だった》
短編『花のあと』に登場するこの湯治場が、庄内三名湯のひとつに数えられる湯田川温泉。1300年前、白鷺が見つけた湯と伝えられる、鶴岡の奥座敷である。

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湯田川温泉「正面湯」
住所:鶴岡市湯田川湯本47
電話:0235-35-4111(湯田川温泉観光協会)
営業時間:7時~19時(9時~10時30分は清掃で入浴不可)
料金:200円
休日:無休
交通:JR鶴岡駅からタクシーで約20分

湯田川温泉「田の湯」
住所:鶴岡市湯田川乙17
営業時間:7時~19時(10時~11時30分は清掃で入浴不可)
料金:200円
休日:無休
交通:JR鶴岡駅からタクシーで約20分

■6:湯野浜温泉

『蟬しぐれ』の最後の場面、文四郎とふくが思いを遂げ、そして別れていく湯宿のある箕浦(みのうら)は、この湯野浜温泉がモデルといわれている。南北に約80㎞続く庄内浜の向こうに沈む夕日の美しさ、そして見る者を圧倒する冬の日本海の荒々しさ、それがこの温泉郷の魅力だ。公衆浴場は、上区・下区と2か所ある。

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上区公衆浴場
住所:鶴岡市湯野浜1-6-1
電話:0235-75-2300(湯ノ沢コミュニティセンター)
営業時間:6時~7時、10時~21時30分(下区も同じ)
休日:第2・第4火曜
料金:200円(入湯券は上区・下区ともに建物の入口にある券売機で販売)

下区公衆浴場
住所:鶴岡市湯野浜1-1-7
休日:第2・第4木曜
料金:300円
交通:JR鶴岡駅からタクシーで約25分

■7:総穏寺

藤沢の初期作品『又三の火』は、史実に基づいた小説。兄・万次郎を切った甥の土屋丑蔵(うしぞう)に、兄を切られた弟の土屋又蔵(旧名・虎松)が、総穏寺の境内で仇討ちを挑み、刺し違えて果てる。文化8年(1811)に起こった事件である。仇討ちの現場である朱塗りの山門は、現在も往時と姿をほとんど変えずに立つ。

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住所:鶴岡市家陽光町5-2
電話:0235-22-3044
拝観自由、拝観無料
交通:JR鶴岡駅からタクシーで約10分

■8:大督寺

鶴岡公園から南西へ5分ほど歩いた場所にある、
三方領知替え、長岡転封禁止の史実をもとに構成された、藤沢初の長編歴史小説『義民が駆ける』に登場するのが、庄内藩主・酒井家の菩提寺・大督寺である。明治30年の火災によって、本尊をはじめすべての仏像が失われた。その後、本堂の建て替えと同時に、先代住職によって新しい阿弥陀如来が祀られることになった。希望すれば、内陣に安置された御本尊を拝むことができる。

住所:鶴岡市家中新町19-12
電話:0235-22-8269
拝観可能
交通:JR鶴岡駅からタクシーで約10分

■9:鶴岡市立 藤沢周平記念館

「鶴岡市立 藤沢周平記念館」は、鶴岡城の本丸に鎮座する庄内神社の表参道に面して建つ。藤沢周平の業績を顕彰し、貴重な資料と作品世界を後世に残すことを目的に、平成22年4月に開館した。11月28日まで、藤沢周平没後20年特別企画展『藤沢周平の世界』を開催中。各方面の要人がそれぞれの視点で語った藤沢作品の魅力を交えつつ、その芳醇多彩な作品世界の奥深さを紹介している。

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住所:鶴岡市馬場町4-6
電話:0235-29-1880
開館:9時~16時30分(最終入館)
休日:水曜(祝日の場合は翌平日休み)、年末年始
料金:320円
交通:JR鶴岡駅からバスで約10分、市役所前下車、徒歩約3分

以上、『サライ」2月号から藤沢周平の作品世界を体感できる、山形・庄内の9カ所の見どころをご紹介した。藤沢ファンにとっては一度は巡ってみたい地であろう。

※この記事は『サライ』2017年2月号掲載の藤沢周平特集の記事「いざ、名作の舞台へ」(取材/人見和生、撮影/宮地工)を元に、Web用に再構成したものです。(Web版構成/印南敦史)

 

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