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山形県西田川郡の湯田川中学校の集団検診で、23歳の教員・小菅留治に肺結核が見つかったのは、今から60年前の昭和26年3月のことだった。

すぐに休職し、山形県鶴岡市内の病院で治療を施す。一時は快方へ向かったが、再び悪化し、上京して手術を受けることになった。

手術は3度にわたる大がかりなものとなり、術後も長い療養生活が続いた。退院したのは昭和32年11月。発見から6年半もの歳月が経っていた。もはや学校への復職も叶わなかった。

だが、運命とは不可思議なもの。この病苦による教職離脱が、日本を代表するひとりの時代小説家の誕生につながっていく。小菅留治は、あの藤沢周平の本名なのである。

といっても、退院後、すぐに作家へ転身できたわけではない。業界新聞で働きながら懸賞小説への応募を重ね、『溟(くら)い海』で「オール読物」新人賞を受賞したのは昭和46年4月。周平は43歳になっていた。遅いデビューであった。

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昭和30年2月、27歳の頃。東京・東村山の病室で結核療養中にギターを弾く。落語観賞や花札の愉しみを知ったのも療養所だった。(『サライ』2017年2月号より)

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『こぼれ落ちた一球 桑田真澄、明日へのダイビング』(日本テレビ)『石橋を叩いて豹変せよ 川上哲治V9巨人軍は生きている』(NHK出版)など多数。最新刊に、『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)がある。

※本記事は「まいにちサライ」2011年3月19日の掲載分を転載したものです。

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『サライ』2017年2月号は、作家・藤沢周平の大特集号です。

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