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「目的物を手に入れる為に費やすべき最後の租税は生命なり」(正岡子規)【漱石と明治人のことば21】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】
「目的物ヲ手ニ入レル為ニ費ヤスベキ最後ノ租税ハ生命ナリト云ウコトヲ記憶セヨ」
--正岡子規

正岡子規の、高浜虚子あて書簡(明治25年1月13日付)の中に書かれた一節である。

正岡子規は夏目漱石と同年の生まれ。一高の同級生として知り合い、互いの才能と人柄を認め、終生の友となった。掲出のことばが書かれた時点では、子規はまだ帝国大学(現・東京大学)在学中の身ながら、俳句の革新運動に取り組みはじめている。

一方の虚子はこの頃、松山の伊予尋常中学の卒業を間近に控えている。将来、小説家として立ちたい志がありながら、「小説家では飯が食えぬ」などと思い患い、郷里の先輩である子規に手紙で苦衷を訴えていた。

それに対し子規は、「貴兄は飯くうがために世に生れ給いたるか」と問い返す。飯を食うことそれ自体が人生の目標ではないだろう、というのである。そして「小説家となりたいが、食えぬに困ると仰せあらば、小生衰えたりと雖(いえども)、貴兄に半椀の飯を分たん」と背中を押し、上のことばも綴り込んだ。

子規はすでに、当時の死病ともいえる結核を病み、自らの「余命十年」を意識している。その子規のことばは重く、虚子の覚悟を促す。虚子はやがて、早世する子規の遺志をも引き継ぎながら、俳人・小説家・『ホトトギス』編集人として活躍するのである。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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