英語の前置詞、たとえば“ on”, “in”, “at” などには、文全体の意味をがらりと変える力があります。建物の中にいるのか、周りにいるのか、または向かい側にいるのか。前置詞ひとつで位置関係やニュアンスが変わります。
今回の連載では、そんな英語の前置詞である“on” について、具体的な例とともにご紹介しましょう。
さて、今回取り上げるのは“It’s on me.” です。

“It’s on me.”の意味は?
“It’s on me.” の、“on” は「~の上に」「接触している」という意味で、直訳すると「それは私の上にある」となりますが、
正解は……
「これは私のおごりだよ」「私が払うよ」
という意味になります。
食事代などを自分が負担することを伝えたいとき、相手の支払いをやんわり断りたいときに使えるカジュアルな表現です。
例えば、
“Lunch is on me today. ”
(今日はランチは私のおごりだよ。)
“Next round of drinks is on me. ”
(次の一杯は私のおごりね。)
“The tickets are on me. ”
(チケット代は私が出すよ。)
などと使うことができます。

前置詞“on” の基本的な使い方
英語の“on ”は、とても柔軟に使える前置詞です。もともとは「~の上に」という意味ですが、いろいろな場面で登場します。ここでは、基本的な使い方を7つに分けてご紹介しましょう。
1. 物の上・接触している
何かが表面に触れているときに使います。
“The book is on the table. ”
(本がテーブルの上にあります。)
“There’s a stain on your shirt. ”
(シャツにシミがついてるよ。)
2. 乗り物・電話・位置
必ずしも「上にある」わけではないけれど、接触や関わりを表します。
“He’s on the bus. ”
(彼はバスに乗っています。)
“She’s on the phone. ”
(彼女は電話中です。)
“The poster is on the ceiling. ”
(ポスターが天井に貼ってあります。)
3. 時間
曜日や日付を表すときに使います。
“The meeting is on Monday. ”
(会議は月曜日です。)
“We met on Christmas Day. ”
(私たちはクリスマスの日に会いました。)
4. 状態・状況
機器の状態や人の状況を表します。
“The computer is on. ”
(コンピュータはオンになっています。)
“She is on vacation. ”
(彼女は休暇中です。)
5. 原因・依存
何かの原因や依存関係を示します。
“Don’t blame it on me. ”
(それを私のせいにしないで。)
“The success of the project depends on your effort. ”
(プロジェクトの成功はあなたの努力次第だよ。)
6. ~について・関して
話題やテーマをさすときに使います。
“I read a book on climate change. ”
(気候変動についての本を読みました。)
“He gave a lecture on history. ”
(彼は歴史について講義をしました。)
7. 手段・媒体
どこで、何を通して行われたかを表します。
“I saw it on TV. ”
(テレビで見ました。)
“He found the article on the internet. ”
(インターネットでその記事を見つけました。)
“It’s on me.” の“on”
以上にあげた前置詞の意味とは少し異なり、“It’s on me.” の“on”には、誰かを「援助する」「責任を負う」などの意味があります。
“It’s on me.” は「私のおごりだよ」という意味ですが、同じような使い方で、店側が客におごるときにも“on” が使われます。
“Drinks are on the house! ”
(飲み物は店のおごりですよ。)
こんなふうに言われたら、うれしいですね。

最後に
“It’s on me.” はアメリカで生まれた表現ですが、今では世界中で広く使われています。
日本語でも、「おごります」「ごちそうします」以外に、
「出すよ」
「任せて」
「今日は私のおごり」
「ここは私に」
など、人との関係性や場面によってさまざまな言い方があります。
イギリスでは、“It’s on me.” も使われますが、友人同士などカジュアルな場面では、“I’ve got this.” と言ったり、少し丁寧に、“I’ve got the bill.”と言ったりします。
また、パブ文化では飲み物を順番に奢り合う習慣があり、「今回はおごるよ」という、 “This round’s on me.” というフレーズもあります。状況や関係性によって、さまざまな言い方ができます。
とは言え、いろんな言葉を知っていると便利ですが、必ずしもぴったりの表現を使えなくてもいいのかもしれません。ジェスチャーで気持ちを伝えたり、さりげなく会計を済ませておいたりすることもありますね。
大切なのは、相手を思い、共に過ごす時間を楽しむ気持ち。心地いい時間を分かち合えることが、いちばん大切なのかもしれません。
次回もお楽しみに。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
