世界にはいろんな言葉や文化があって、それぞれに違った生き方があります。でも、よく見てみると、その根底には共通する思いが流れているように感じます。英語を通して、そうしたさまざまな生き方に触れてみるのはいかがでしょうか?
さて、今回ご紹介するのは“It’s up to you.” です。

目次
“It’s up to you.” の意味は?
「WH名詞節+ up to you」
イスラームの「タワックル」の考え方
最後に
“It’s up to you.” の意味は?
“It’s up to you.”を直訳すると、
“up” は(上に向かう)ですが……、そこから転じて
正解は……「あなた次第です」「お任せします」
という意味になります。
相手に決定を委ねたり、判断をゆだねたりするときに使われるフレーズです。

『ランダムハウス英和辞典』(小学館)には、「〈人の〉義務[責任]に,…の身[判断]にかかって,…次第で」と書かれています。
例えば、
1.
A:“Should we go out for dinner or order in?”
(外に食べに行く? それとも出前をとる?)
B:“It’s up to you. I’m fine with either.”
(あなた次第だよ、どちらでも大丈夫。)
2.
“It’s up to you. I think you can change this situation.”
(あなた次第でこの状況はかわると思うよ。)
気軽に使える便利なフレーズですが、言い方によっては「無責任」や「興味がない」と受け取られてしまうこともあるので、場面やトーンには気をつけて使いましょう。
「WH名詞節+up to you」
“It’s up to you. ”の“It”を、「WH名詞節」に置き換えると、表現の幅が広がります。
まず、「WH名詞節」とはなんでしょうか?
「WH名詞節」とは、“who” ,“what” ,“where” ,“when” ,“why” ,“how” ,“whether” などの「WH」から始まる、文の中で名詞のように働くかたまりをさします。
この「WH名詞節」を主語として“up to you” と組み合わせると、表現できることがぐんと増えます。間違いやすいポイントは、未来についてですが、現在形を使う点です。
例文
1. “Where we eat is up to you.”
(どこで食べるかは君次第だよ)
2. “Whether we stay or go is up to you.”
(残るか帰るかは任せます。)
3.
A: “What should I bring to the party?”
(パーティーに何を持って行けばいい?)
B: “What you bring is up to you.”
(何を持って行くかは任せるよ。)
このように、WH名詞節に置き換えるだけで、表現の幅が広がります。ぜひ使ってみてください。

イスラームの「タワックル」の考え方
以前、トルコの友人が、イスラームの信仰において、大切な概念のひとつである「タワックル“Tawakkul”」について話してくれたことがありました。
タワックルとは、簡単にいえば「できる限りの努力を尽くし、その結果はアッラーに委ねる」という姿勢です。
大切なのは、タワックルが「何もしないで待つこと」ではないという点です。むしろ「できることを尽くした上で委ねる」ことが、大事なのだと友人は教えてくれました。
彼女は、13世紀ペルシアの詩人ルーミー(1207–1273)を紹介してくれました。ルーミーはイスラーム神秘主義(スーフィズム)の指導者であり、偉大なる詩人として知られ、彼の作品は、欧米でも広く親しまれています。ルーミーの詩をひとつご紹介します。
The Guest House
This being human is a guest house.
Every morning a new arrival.A joy, a depression, a meanness,
some momentary awareness comes
as an unexpected visitor.Welcome and entertain them all!
Even if they’re a crowd of sorrows,
who violently sweep your house
empty of its furniture,
still, treat each guest honorably.
He may be clearing you out
for some new delight.The dark thought, the shame, the malice,
meet them at the door laughing,
and invite them in.Be grateful for whoever comes,
because each has been sent
as a guide from beyond.ゲストハウス
人間とは宿のようなもの
毎朝、新しい訪問者がやってくる
喜び、憂鬱、意地悪な心刹那に湧く思いは
思いがけない客人としてやってくる
訪れるものすべてを迎え、もてなそうたとえ、彼らが悲しみの集団で
家中の家具を荒々しく払いのけ、空っぽにしてしまうとしても
敬意をもってそれぞれの客人を迎えようもしかしたら彼らは新たな喜びのために
あなたを空っぽにしているのかもしれない
暗い考えや恥ずかしさ、悪意も
笑って戸口で出迎え
招き入れよう訪れるものすべてに感謝を
出典:Jalaluddin Rumi, Rumi: Selected Poems, translation Coleman Barks with John Moynce, A. J. Arberry, Reynold Nicholson (Penguin Books, 2004)
彼らははるか遠くから遣わされた案内人なのだから
最後に
私たちは、思い通りにならないことが起こらないように、また苦しい状況が早く過ぎ去るようにと願います。できることなら、つらい出来事など訪れなければいいと思う時もありますね。
けれど、もし悲しみや苦しみも、喜びと同じように笑顔で迎え入れることができたなら、ネガティヴな思いも、違うように捉えられるかもしれません。“It’s up to you.”(あなた次第)。 “you” とは誰をさしているのかと思いを巡らしてみるのもおもしろいです。
次回もお楽しみに。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
