「季節ブルー」という言葉をご存じでしょうか? 特定の季節の変わり目に決まって心や体の不調が現れる状態を指し、医学的には「季節性感情障害」(SAD)と呼ばれています。

精神科医の長沼睦雄さんは「毎年やってくる季節の変わり目の不調。それは、あなたの『気のせい』でも『怠け』でもありません」と言います。

長沼睦雄著『その、しんどさは「季節ブルー」』(日本文芸社)の中から、冬に訪れる季節ブルーに対しての対策を紹介。今回は、「心も体も温めるゆずのお風呂」と「冬の運動は温存がキーワード」を取り上げます。

何かと塞ぎがちになる冬におすすめの入浴術&運動法を学びましょう。

ゆず湯など、入浴剤として自然の恵みを取り入れよう

厳しい寒さが続く冬において、1日の疲れを癒やし、心と体を芯から温める入浴は、単なる習慣以上に、非常に重要なセルフケア、養生となります。
冬の入浴の基本は、38〜40℃程度のぬるめのお湯に、15〜20分ほどゆっくりと浸かることです。熱すぎるお湯や長湯は必要以上に体力を消耗し、肌の乾燥を招くため避けましょう。
入浴は、体を温めて血行を促進するだけでなく、水の浮力が筋肉の緊張を和らげ、こわばった心と体を解放してくれます。蒸気は乾燥した鼻や喉の粘膜を潤し、「燥邪」(そうじゃ)から肺を守るのにも役立ちます。

日本では古くから、冬至の日にゆず湯に入るという習慣があります。ゆずの爽やかで強い香りには、滞った気の流れをスムーズにする作用があります。冬の寒さやストレスで内にこもりがちな気分をリフレッシュさせ、心を解きほぐしてくれるのです。また、ゆずの皮に含まれる精油成分には、血行を促進する効果があり、体を芯から温めてくれます。これにより、寒さで滞りがちだった「気血」(きけつ)のめぐりが良くなり、肩こりや腰痛の緩和にもつながります。ゆずには殺菌作用があり、ビタミンCも豊富に含まれているため、かぜの予防効果も期待できます。
冬至にゆず湯に入るのは、冬至と湯治、ゆずと融通の語呂合わせから、「融通が利くように」との願かけの意味もあると言われています。厳しい冬を元気に乗り切るための、先人の知恵だったのです。

冬至に限らず、冬の間は入浴剤として自然の恵みを取り入れるのがおすすめです
血行促進にはしょうがのスライスを入れ、リラックスしたいときにはハーブのカモミールやラベンダーなどを布袋に入れて浮かべると、より高い温浴効果とアロマテラピー効果が期待できます。また、自然の恵みではないですが、日本酒を入れるのも良いでしょう。
毎日のバスタイムを、心と体を慈しむ神聖な養生の時間へと変えてみませんか。

冬の運動は温めることを目的に、心地良い範囲で行おう

夏の運動はエネルギーの発散が目的であるのに対し、冬のキーワードは「温存」です。
「気血」(きけつ)のめぐりを良くして体を温めつつ、「気」を過度に消耗しないことが重要です
『黄帝内経』(こうていだいけい)では、「陽のエネルギーを使いすぎないように」「汗をかかないように」と、冬の過度な運動を戒めています。冬に汗をかきすぎると、体の熱が奪われるだけでなく、気も漏れ出てしまい、体を守るバリア機能が低下します。また、開いた毛穴から「寒邪」(かんじゃ)が侵入しやすくなり、かえってかぜをひく原因にもなりかねません。

冬は汗をかくほどの激しい運動や長時間の運動は避けて、ヨガやピラティス、太極拳、気功など体への負担が少ない運動がおすすめです。ゆっくりとした動きで、体の内側に意識を向け、呼吸を深めるような運動です。関節や筋肉を穏やかにほぐし、滞りがちな気血の流れを促進しながらも、エネルギーを過度に消耗しません。
冬は室内での筋力トレーニングも有効です。特に、大きな筋肉が集まる下半身を鍛えると、効率良く熱を生み出し、全身の血行を改善します。スクワットなどの簡単な運動を、無理のない範囲で続けると良いでしょう。
運動後は、体を冷やさないうちに温かいシャワーを浴びたり、乾いた服に着替えたりしましょう。

また、15分ほど散歩するだけで構いませんので、太陽の光を顔や手のひらに浴びるように意識してみてください。窓際で日向ぼっこをするだけでも効果があります。
冬は1年で最も日照時間が短く、太陽の光に触れる機会が減る季節です。そこで、晴れた日は外に出て、積極的に太陽の光を浴びるようにしましょう。午前中の光は、体内時計をリセットし、精神を安定させる「セロトニン」の分泌を促す上で非常に重要です
冬の太陽は夏と違い、優しく温かなエネルギーを持っています。この貴重な自然の恵みを積極的に体内に取り入れることが、心と体に温かさを補給し「陰」の季節を乗り切るための活力となるのです。短い日中の時間を最大限に有効活用しましょう。
冬の運動はがんばるのではなく、温めることを目的に、心地良い範囲で行うことが大切です。それが、エネルギーを温存しながら冬を健すこやかに過ごすための秘訣です。

*  *  *

 その、しんどさは「季節ブルー」
著/長沼睦雄
日本文芸社 1,870円(税込)

長沼睦雄(ながぬま・むつお)
十勝むつみのクリニック院長・精神科医。
昭和31年生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了。その後、障害児医療分野に転向し、道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と成人の診療を行う。平成28年に帯広にて十勝むつみのクリニックを開院(10年目)。急性期の症状を対症療法的に治療する西洋医学に疑問を感じ、HSP・アダルトチルドレン・神経発達症・発達性トラウマ障害・慢性疲労症候群などの慢性機能性疾患に対し、「脳と心と体と食と魂」を結んだ根本治療を目指す統合医療に取り組んでいる。
『敏感すぎて生きづらい人の 明日からラクになれる本』『繊細で敏感でも、自分らしくラクに生きていける本』(共に永岡書店)、『子どもの敏感さに困ったら読む本』『10代のための疲れた心がラクになる本』(共に誠文堂新光社)など著書多数。

※『そのしんどさは「季節ブルー」』(著・長沼睦雄/日本文芸社)より、一部を抜粋してご紹介しています。

 

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