英語は世界中で話されていますが、地域や文化によってさまざまな形で変化します。イギリス英語の伝統を感じる響き、アメリカ英語の軽快さ、オーストラリア英語のユーモア、そしてインド英語の独特なリズム。それぞれがその土地の文化や歴史を反映しています。また、非英語圏の人々が話す英語にもその背景が垣間見えるでしょう。多文化ならではの発展を感じられることは、英語の特別な魅力のひとつかもしれません。

さて、今回紹介するのは “sleep on it”です。

目次
“sleep on it”の意味は?
「寝る」にまつわる他の表現
“sleep”から派生した表現
眠りの文化:シエスタからイネムリまで
最後に

 “sleep on it”の意味は?

“sleep on it”を直訳すると、“sleep”は(寝る)、“on”は(〜の上に)ですが……、そこから転じて

正解は……
「じっくり考える」という意味になります。

すぐに物事を決められない時やアイディアがまとまらない時など、その場で考えてもいい案が出ない時、時間を置いて考えるような場合に使います。『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)には、「ゆっくり考える」と書かれています。

たとえば、

“You don’t have to decide right now. Sleep on it and give me your answer later.”

(今すぐ決めなくていいよ。じっくり考えて、後で返事を聞かせて。)

また、

A: Should we book the early morning flight or the one in the afternoon?
B: I can’t decide right now. Let me sleep on it, and I’ll let you know tomorrow.
A: Sounds good. Just let me know before the prices go up!

A:(早朝の便と午後の便、どっちを予約する?)
B:(すぐ決められないな。ちょっと考えさせて。明日になったら知らせるよ。)
A:(いいよ。値段が上がる前に教えてね。)

などのように使います。

「寝る」にまつわる他の表現

英語には眠りに関する表現が多くあり、それぞれ微妙な違いがあります。代表的な単語とその使い方をいくつかご紹介します。

1. Doze(うとうと眠る)
うとうとと、軽く居眠りするような様子をあらわします。
例: He dozed off during the meeting.
(彼は会議中にうとうとしてしまった。)

2. Nap(短い昼寝)
日中の短い休憩やリフレッシュのための睡眠をさします。
例: I took a quick nap during my lunch break.
(昼休みに少し寝ました。)

3. Slumber(すやすや眠る)
穏やかで深い眠りを表現します。文語体の少し詩的な表現です。
例: She is in a deep slumber.
(彼女はよく眠っている。)

“sleep”から派生した表現

“sleep” から派生した表現も多くあります。前置詞や接頭辞がつくことで意味がずいぶん変わります。

  1. Oversleep  (寝過ごす)
    例: I overslept and missed the bus.
    (寝過ごしてバスに乗り遅れてしまった。)

2. Sleep in (わざといつもより遅くまで寝る)
例: I like to sleep in on Sundays and enjoy a slow morning.
(日曜日はゆっくり寝て、のんびりと朝を楽しむのが好きです。)

3. Stay up (遅くまで起きている)
例: I stayed up late to watch Netflix.
(Netflixを観て遅くまで起きていました。)

眠りの文化:シエスタからイネムリまで

世界にはいろんな眠りの形があるようです。スペインのシエスタなど有名ですね。シエスタはスペイン語で「昼休み」や「昼寝」。シエスタ文化は薄れつつありますが、郊外の町では昼過ぎに店を閉め、家庭で穏やかな昼寝を楽しむ習慣が今も残っているそうです。

また、私たちは昼は明るく、夜は暗いことを当然と考えていますが、北半球の高緯度地域に住むイヌイットの人たちにとってはどうやら違うようです。夏至には太陽が沈まず、冬至では太陽がほとんど姿を見せない地域で、人々は季節や太陽の光に合わせて柔軟に眠りや活動を調整し、私たちの感覚とは異なるリズムで生活しています。

北欧の夜明け

OECD(経済協力開発機構)がまとめた Time Use Across the World(世界の時間の使い方)に“sleeping” (睡眠)の項目があります。

日本を含む世界33カ国それぞれの平均睡眠時間が示されています。 2023年版のデータによれば、1日当たりの平均睡眠時間が最も長い国は南アフリカの553分(約9.21時間)、次いで中国の542分(約9.03時間)。一方、最短は日本の444分(約7.4時間)で、韓国とスウェーデンが続きます。勤勉が美徳とされる日本では、寝る時間を削って働くことがよしとされているからでしょうか。睡眠時間ワースト一位と表示されているのを見ると少しドキッとします。

日本には「居眠り」という言葉があります。実は海外で、“Inemuri”は、日本のユニークな文化として捉えられています。電車やバス、公園などの公共の場で居眠りする姿は、勤勉さや努力の象徴と捉えられているようです。

日本の長時間労働や通勤時間の長さによる睡眠不足を映し出しているともいえますが、「居眠り」に日本の文化を感じるっておもしろいですね。

最後に

いかがでしたか? 勤勉であることは素晴らしいですが、睡眠不足が原因でミスを重ねるのはイヤですね。こころを休めるために眠り、頭をスッキリさせて取り組む心地よさは、多くの方が体感されていると思います。

Embrace sleep as your ally, and let it guide your decisions by taking the time to sleep on it!
(睡眠を味方に、じっくり考えて良い決断をしましょう。)

次回もお楽しみに。

●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。  京都祇園にある建仁寺塔頭両足院をベースに、ひとつのテーマについて英語で語りあう『うごく哲学』を対面とオンラインで定期開催。その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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