2028年の道長千年遠忌

A:4年後には道長が亡くなって1000年という遠忌の年を迎えます。

近衛:企画としてはまだ正式なタイトルも決まっていないです。2028年に東京国立博物館で催し物をやるっていうくらいで。それに向けてこれからいろんなことを企画していこうかなというところです。

I:それは楽しみですね。やはりメインは『御堂関白記』あたりでしょうか。

近衛:そうですね。実をいうと我々は勝手に、あと4年くらいあるので、その4年の間に何か出てくるんじゃないかと思っています(笑)。『御堂関白記』の記述通りに経筒が吉野の金峯山から出土していますが、あれと同様に、道長の経筒が、高野山奥の院の御影堂の真下に埋納されているのではないかといわれています。X線だとかCT的な現代の何らかの技術で見つけられたりしないのかな、と期待したりもするのですが。何かあることが確認できれば、保存状態を確認するためといって、取り出すことができたら、かなり話題になるのではないかと思います。奥の院御影堂を寄進したのが道長といわれていますが、あの辺りは高野山でも特別な聖域です。

A:高野山と近衛家は密なつながりがあるのですね。

近衛:そうですね。明治時代頃の当主の近衛忠熈は高野山と連絡を密にしながら新しい時代についていろいろと語ったようです。近衛文麿は第二次世界大戦中に米軍(「敵国」)に対して呪いをかけるようなことを高野山に依頼した、なんて話もあります。それぞれの時代の藤原家、近衛家と高野山をはじめとする寺などとの関わりを調べ上げるとおもしろいかもしれませんね。日本の仏教との関係性の一端でもあると思いますし。

A:仏教ということでは、『光る君へ』劇中でも、道長が金峯山詣でをする場面が描かれました。

近衛:藤原家には春日大社があり、談山神社があり、京都の八坂神社にもいろいろと寄進していたりしていて、藤原家ゆかりの寺社を巡ろうとすると1か月くらいかかるらしいんです。ありとあらゆるところでその時々のつながりがあるらしいんですね。ある種のパトロネージというか、あちこちに寄進していたんですね。道長の足跡などは教科書などでさらりとやってもなかなかぴんとこないと思うんですよ。戦後の政治家たちが果たした役割なんていうと我々現代人にはなんとなくピンときますけど、道長が果たした役割っていうとあまりわからないですよね。

A:前述のように近衛さんは、宮中歌会始めの講師(こうじ)を務めておられます。2025年の歌会始めも注目していただきたいですね。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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