まひろ(藤式部/演・吉高由里子)が辞し、賢子(演・南沙良)が宮仕えすることになった。
(C)NHK

ライターI(以下I):『光る君へ』も今週の第45回を含めて残すところあと4回となりました。

編集者A(以下A):『光る君へ』は、大河ドラマ全63作の中でも名作に数えられる作品になったのではないでしょうか。これまで大河ドラマ不毛の地だった平安中期を照射し、この時代の輪郭をくっきりと浮き彫りにした功績はあまりにも大きいと思います。

I:道長(演・柄本佑)とまひろ(演・吉高由里子)の出会いから始まる流れ、藤原氏が権力を掌握しようとする歴史の流れ、国司のこともしっかりおさえて、さらには打毬や五節舞、曲水の宴など平安文化をきちんと描いてくれました。

A:朝廷のなかの陣定の場面もしっかり描かれました。清少納言(演・ファーストサマーウイカ)やまひろが女房として出仕したことで、宮廷社会についても認識することができました。加えて、猫を効果的に登場させて、当時の貴族社会の中で猫が愛でられる存在であったことにも触れてくれました。

I:紫式部(まひろ)と藤原道長を軸に展開された歴史物語が胸を打ちましたね。なぜいままで平安中期を舞台にした大河ドラマが制作されなかったのか、不思議なくらいです。

A:かつて1995年の『八代将軍吉宗』の制作が決まった時に、『暴れん坊将軍』のイメージが強い徳川吉宗を主人公にして大河ドラマで受けるだろうか、と思いましたが、ジェームス三木さんの脚本、西田敏行さんの熱演で、ヒット作となりました。1997年の『毛利元就』も地方の国人領主などとの対立がわかりにくいのではないかと思いましたが、内館牧子さんの脚本が見事に地方の戦国史に光を当てました。大石静さんの脚本による『光る君へ』もまた不毛の平安中期に花を咲かせて、多くの人を惹きつける大河ドラマになりました。

A:さて、そういうことで、第45回です。前週の第44回で道長の有名な「このよをば わがよとぞおもう もちづきの かけたることも なしとおもえば」の歌が唱和されました。「この世」なのか「この夜」なのか、どちらなのだろうということでいえば、劇中では「この夜」を採用したような気がしています。

I:公任(演・町田啓太)たちが、いろんな説があることを代弁してくれていましたね。視聴者の方々は、どのように感じたでしょうか。私は「この世をば」で権力の絶頂をアピールするようなことではなくて、しみじみと「今宵の気分は格別」くらいの感じがする「この夜」でよかったのではないかと思っています。

A:例えば、本能寺の変のように大河ドラマでも幾度も描かれた大事件ですと、幾度も取り上げるうちにどんどん演出が派手になっていくことがありますが、望月の歌は大河ドラマでは初見。いつの日か、違った形で登場する時にどうなるだろうかと気になったりもしますね。

I:そういうところもまた、「大河ファンあるある」ですね。ところで、私は、道長のことを「太閤」というふうに呼ぶのが気になりました。

A:太閤といえば、いまや豊臣秀吉の代名詞のようになっていますが、摂政・関白を嫡男に譲った後の人物に対する呼称だそうです。道長は嫡男頼通(演・渡邊圭祐)に摂政職を譲っていましたからまさに太閤。

I:太閤道長と太閤秀吉の間には500年以上の時が流れます。道長のことを太閤と呼ぶ演出は、歴史が連綿と繋がっていることに思いを馳せるきっかけにもなりますね。

A;道長と秀吉の間がおよそ500年ですか。秀吉と現代の私たちと同じくらいの時が流れているのですね。

敦明親王と敦康親王。次ページに続きます

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