仏教に傾倒していた道長(演・柄本佑)。(C)NHK

ライターI(以下I):『光る君へ』第34回では、御嶽詣でに道長(演・柄本佑)の二妻源明子(演・瀧内公美)の兄である源俊賢(演・本田大輔)が同行し、ふたりの間で意味深なやり取りが展開されました。俊賢は藤原公任(演・町田啓太)、斉信(演・金田哲)、行政(演・渡辺大知)らと並んで「四納言」とも称された道長側近です。

編集者A(以下A):その俊賢に対して道長は、正妻倫子(演・黒木華)所生の頼通(演・渡邊圭祐)と明子所生の頼宗(演・上村海成)を競わせたくないことを明言します。

I:いわれた俊賢もびっくりしたかと思います。第31回では、倫子所生の頼通が元服し、「正五位上」に叙せられたことに対して、二妻の明子が対抗意識をあらわにしていましたからね。

A:劇中では描かれていませんが、頼通は元服して「正五位下」に叙せられた後に、明子所生の巖君が元服して頼宗となった際に叙せられたのは「従五位上」。わずかな違いですが、差をつけられました。しかも、頼通は15歳で従三位に昇進し、公卿に列します。道長の兄道隆(演・井浦新)が息子伊周(演・三浦翔平)を21歳で内大臣にして世間を驚かせましたが、その伊周でさえ公卿に列したのは17歳です。

I:以前、藤原実資(演:秋山竜次)、藤原斉信、藤原公任の3名による「平安コント」のような場面で、公任と斉信が「従二位(じゅにい)」と唱和したのに対して、実資が「正二位(しょうにい)」と自分の方が位が上だとアピールする場面がありました。「従」より「正」の方が上なんだということがはっきり伝わった場面でした。異例の昇進を遂げた伊周よりも、頼通の昇進の方が早かったのですね。

A:道長と俊賢のやり取りはそうした中で交わされたということに留意してください。 ただ、道長には、道長に張り合おうというそぶりをみじんも見せない異母兄道綱(演・上地雄輔)がいますが、大納言という要職につき、その娘も中宮彰子(演・見上愛)の後宮に女房として仕えている宰相の君(演・瀬戸さおり)。おそらく伊周も道長に対して恭順の意を表していれば、道長もそれなりの待遇で迎えたような気もするのですよね。

I:世の中には、ライバルが上位になった場合に、恭順できずに、最後まで「抗戦」しようという人が多くいます。会社組織なんかでもそんなことあるようですね。 この人たち仲良くやったらもっと会社もよくなるのにという場合でも、決してそうはならない。伊周も最後の最後まで道長に恭順できなかったのでしょう。

A:前週には、武力で物事を解決しようという勢力の伸長を憂慮する道長の姿が描かれましたが、今週は兄弟で地位を争うことを憂慮する場面が描かれたということになります。甥伊周との関係も道長の念頭にあったのだと思います。武士の勃興は150年後に保元の乱で暴発することに前週触れました。その保元の乱のきっかけとなったのが、皇位継承の争いと摂関家の権力闘争。摂関家では関白と内覧が並立するという異常事態になり、いずれの陣営も武士を味方につけて、最終的に武力衝突に発展したということになります。

I:つまり道長が150年後の保元の乱勃発を憂慮していた、まさかの預言者のような描かれ方ですね。まあ、でも孫の孫の孫の世代のことなぞ予見できませんよね。

恋多き女性、和泉式部が再び登場。次ページに続きます

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