日本の近代七宝は、江戸末期に尾張の梶常吉が有線七宝の技法を解明したことに始まります。のち、塚本貝助らによって尾張の産業として発展し、明治になって輸出品として期待されるようになると、京都・東京・横浜などにも産地が広がっていきました。

おりしも万国博覧会の時代、出品を重ねるごとに技術や意匠が改良され、発色はより多彩で鮮やかに、植線はより緻密に、そして幾何学的な意匠は余白と奥行をもつ絵画的な描写へと変遷していきます。こうして生産技術が最も円熟した明治中期から後期にかけて、日本の七宝は黄金期を迎えました。

並河靖之《蝶図香合》明治時代
42.7×33.1×15.6cm
清水三年坂美術館蔵

清水三年坂美術館で開催の「明治の七宝―The Golden Age of Cloisonné」展はこうした明治の七宝に注目した展覧会です。(9月11日~12月1日)

本展の見どころを、清水三年坂美術館の広報担当者にうかがいました。

「本展では、明治の七宝のなかでも特に人気を博した並河靖之、濤川惣助、林小傳治、安藤重兵衛、川出柴太郎、粂野締太郎らの作品を中心に、当時の名工が手掛けた優品の数々を展示いたします。

並河靖之《蝶図瓢形花瓶一対》明治26年頃
各10.4×高さ18.5cm
清水三年坂美術館蔵

並河靖之の特色とされる黒色釉薬地の上に、様々な蝶が表された対花瓶。シカゴ・コロンブス博物館(1893年)に出品されたもの(東京国立博物館蔵)と色違いのものです。

濤川惣助《富嶽図煙草盆》明治時代
14.5×20.0×1.0cm
清水三年坂美術館蔵

無線七宝によるやわらかな表現を得意とした濤川惣助は、陶磁器商から七宝の開発も始め、日本画家の渡辺省亭に依頼した下絵をもとに優美な七宝を制作しました。

平塚茂兵衛《紅葉図香炉》明治時代
8.8×高さ8.0cm
清水三年坂美術館蔵

純銀地の上に色とりどりの紅葉を七宝で配した香炉。紅葉の中に金線で縁取られた可憐な唐草模様が評されています。

世界に類を見ない繊細優美な七宝の輝きをぜひご高覧ください」

安藤製(林喜兵衛)《百華文大花瓶》明治時代
高さ92.0cm
清水三年坂美術館蔵

幻想的な花鳥風月の世界を、会場でじっくりご堪能ください。

【開催要項】
明治の七宝―The Golden Age of Cloisonné
会期:2024年9月11日(水)~12月1日(日)
会場:清水三年坂美術館
住所:京都府京都市東山区清水三丁目337-1
電話:075・532・4270
公式サイト:https://sannenzaka-museum.co.jp/
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月・火曜日(ただし祝日の場合は開館)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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