甲冑とは、鎧(よろい・甲)と兜(かぶと・冑)のことで、鎧は胴部を、兜は頭部を防御する用具です。日本では古墳時代から用いられたことが埴輪にみられます。

色彩豊かな威糸で装飾された中世の大鎧、個性を競うかのような戦国の具足など、日本の甲冑は、身を守るという機能を追求しながら華やかさも重視されました。

徳川美術館で開催の「夏季特別展 もののふの備え 甲冑の美学」展は、甲冑の歴史と美しさを紹介する展覧会です。(7月27日~9月16日)

朱塗啄木糸威具足 徳川義直(尾張徳川家初代)所用
江戸時代・17世紀
徳川美術館蔵

本展の見どころを、徳川美術館の学芸員、並木昌史さんにうかがいました。

「古今東西の鎧のなかでも、日本の甲冑は美しさや華やかさを重視して製作された特異な鎧と言えます。平安時代後期に登場した大鎧は、戦闘に用いる武具であるにも関わらず、王朝装束の「かさね色目」の影響を受け、色彩豊かな威糸で装飾されました。

平治物語絵巻 六波羅行幸の巻 今村随学筆 江戸時代・天明元年(1781) 徳川美術館蔵

大鎧を着ることの出来なかった武士たちが用いた胴丸や腹巻は、室町時代になると大袖や兜が付けられ上級武士も着用することとなりました。

銀箔置白糸威具足 松平忠吉(徳川家康四男)所用
桃山時代・16世紀
徳川美術館蔵

戦国時代に登場した当世具足は徒歩戦のために機能性を追求して構造がシンプルになる一方、戦場で目立ち、あるいは武運を祈るため、個性的で奇抜なデザインが取り込まれることもありました。

長烏帽子形兜 加藤清正所用 紀伊徳川家伝来
桃山時代・16世紀
徳川美術館蔵

これら装飾性豊かな日本の甲冑美を紹介するとともに、江戸時代以降、盛んに行われた中世武具の考証、復古にも焦点を当てます。装飾性豊かな日本の甲冑の素晴らしさをご堪能いただくとともに、戦場にかけた武将たちの心意気を偲んでいただければと存じます」

関ヶ原合戦絵巻 第四 冬 前期 徳川美術館蔵

隣接する名古屋市蓬左文庫で同時開催の「夏季特別展 もののふの備え 馬とともに」では、戦場に赴いた馬と人との歴史にも触れ、馬を扱った美術工芸品も展観します。ぜひ会場に足をお運びください。

【開催要項】
夏季特別展 もののふの備え 甲冑の美学/馬とともに
会期:2024年7月27日(土)~9月16日(月・祝)
会場:徳川美術館/名古屋市蓬左文庫
住所:愛知県名古屋市東区徳川町1017
電話:052・935・6262
公式サイト:http://tokugawa-art-museum.jp/
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし8月12日、8月13日、9月16日は開館)、9月17日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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