日本庭園の美しさで知られる足立美術館。創設者の足立全康は、美術館の所在地、島根県安来市で生まれ、大阪で実業家として活躍する傍ら、幼少の頃より興味をもっていた日本画を収集、日本画のコレクターとして世に知られるようになりました。

また、若い頃から何より好きであった庭造りへの関心も次第に大きくなりました。

日本画と庭の調和、四季の移ろいで変化する庭にかこまれて極上の名画を鑑賞する、それが創設者が深く強く願ったことでした。

足立美術館の「名画への誘い 心なごむ日本画の世界」は日本人なら誰も心がなごむ展覧会です。(12月1日~2024年2月29日)

川合玉堂「雪降る日」(昭和30年)

本展の見どころを、足立美術館学芸課長の織奥かおりさんにうかがいました。

「柔らかな色彩や流れるような美しい線描、余白を活かした構図などは、日本画の特徴としてよく挙げられます。描かれるテーマには、文学や仏教などを題材とした少し難解な作品がある一方、動物の愛らしい姿を描いたものや、思わず笑みがこぼれる人物画、穏やかな風景を描いた作品などもあります。

本展では、こうした見る人の心の琴線に触れ、どこか優しい気分にさせてくれる日本画を中心に紹介します。

竹内栖鳳「爐邊(ろべ)」(昭和10年)

竹内栖鳳「爐邊」は、寄り添う2匹の仔犬の姿が愛らしい一作。近くに火かき棒と炭を置くことで、ストーブの存在を示すという表現も見事です。

しっとりとした空気が漂う菱田春草「紫陽花」や、雪の冷たさまで伝わってくる川合玉堂「雪降る日」は、日本画独特の繊細な色づかいや表現に引き付けられます。

菱田春草「紫陽花」(明治35年)

金太郎をモチーフにした小杉放菴「金時」は、金太郎の躍動感ある姿が楽しい気分にさせてくれるでしょう。

名画を通して、ぜひ心なごむひとときをお過ごしください」

小杉放菴「金時」(昭和24年頃)

同時開催の小展示室「日本画家のことばと作品」は、作品を読み解く手がかりとなる画家の言葉を作品とともに紹介する展覧会です。併せてご鑑賞ください。

【開催要項】
名画への誘(いざな)い 心なごむ日本画の世界
会期:2023年12月1日(金)~2024年2月29日(木)
会場:足立美術館 大展示室
住所:島根県安来市古川町320
電話:0854・28・7111
公式サイト:https://www.adachi-museum.or.jp
開館時間:9時~17時(10月~3月)
休館日:会期中無休
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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