ライターI(以下I):『光る君へ』第18回では、関白藤原道隆(演・井浦新)、道兼(演・玉置玲央)が相次いで亡くなりました。一条天皇(演・塩野瑛久)は寵愛する中宮定子(演・高畑充希)の実兄藤原伊周(演・三浦翔平)を関白に据えようとします。
編集者A(以下A):伊周はこのとき22歳。藤原一族歴代の摂政、関白就任時の年齢が40代~60代が多い中で、さすがに若すぎる年齢でした。対抗馬の道長とて30歳ですから、前代未聞の後継者争いでした。
I:一条天皇の意中の人物は道隆の息子伊周でしたが、一条天皇の生母で道長の姉である東三条院詮子(演・吉田羊)が帝の寝所まで乗り込んで、涙を流して後継者には道長をと懇請しました。
(https://serai.jp/hobby/1185260)
A:史上初めての女院ということで、女帝同然の立場だった詮子の意向を無視できないという事情もあったのだと思いますが、「母の発言力」があったことを知ることができました。
I:確かに「母は強し」という感じでした。『大鏡』などの歴史書にも詮子のことは記録されていますから、貴族社会トップの人事に強い影響力を持っていたということですよね。
A:あの場面を見ていて、約160年後の源平合戦の時代のことが思い出されました。平治の乱(1159年)で敗れた源義朝の子どもたちの処分についてです。13歳の頼朝は平清盛の継母である池禅尼(いけのぜんに)から「今は亡き家盛とそっくりだ」ということで頼朝を助命するように清盛に歎願し、その結果、頼朝は伊豆に流罪となりました。
I:このとき処刑していたら、鎌倉幕府などなかったということですよね。
A:これも継母とはいえ、「母の発言力の強さ」かと思います。ちなみに池禅尼は、『光る君へ』にも登場している藤原隆家(演・竜星涼)の子孫になります。
I:歴史の系譜って本当に面白いですね。
A:ちなみに源義経と平泉藤原氏を結ぶ人脈の中にも、藤原隆家の子孫が絡んできます。これもいずれ詳述したいと思います。
【『独眼竜政宗』で伊達政宗の母、お東の方を演じた岩下志麻さん。次ページに続きます】