行成と道長、そして公任の家のこと
I:ドラマで描かれている時期よりもう少し後になりますが、今回登場した藤原斉信(演・金田哲)、藤原公任(演・町田啓太)、藤原行成(演・渡辺大知)、そして今回登場した源俊賢(演・本田大輔)の4人は、一条天皇の時代に斉信が大納言、他3人が権大納言という高い地位を得て、華々しく活躍したことで「四納言(しなごん)」と呼ばれています。その「四納言」のひとり藤原行成が道長に仮名を教えている場面が登場しました。
A:当時の男性貴族は「漢詩=漢字」が主流で、むしろ仮名は難解だったということを可視化する場面になりましたね。しかし、藤原行成の系譜を辿ると感慨深いですね。藤原行成は、藤原伊尹の孫にあたるのですが、伊尹は藤原兼家(演・段田安則)の長兄になります。伊尹の嫡男は義孝なのですが、義孝は行成が乳児の頃に亡くなってしまい、後ろ盾がいなくなったことで、兼家一族の後塵を拝すことになります。
I:よくよく考えれば、藤原行成、悲運の貴公子といってもいいかもしれないですね。
A:道長に近侍すること、そして三蹟のひとりと称されることになるほど有能で、立身することになります。それはそれで特筆すべき生涯だったのではないでしょうか。
I:でも、道長って仮名文字でまひろに和歌を送っていたのに、今更習うんですか?
A:倫子にもこれから送らなくてはいけないから、「業務用」ということじゃないですかね。
I:さて、劇中では、道長と同世代の若手貴族らの人生についても触れられ、藤原公任が父頼忠(演・橋爪淳)から政界引退を聞かされます。
A:頼忠の家系は俗に藤原北家小野宮流と称されます。本来藤原北家の嫡流で、本来であれば、実頼―頼忠の流れが政権を担っていてもおかしくないのですが天皇に入内させた娘たちがことごとく皇子を生むことがなく、権力を得ることができませんでした。
I:藤原公任も太政大臣の嫡男で、当初は道長よりも官位が上でした。それだけに複雑な思いを抱いていたはずです。
A:最終的には道長にひれ伏す形になるわけです。それがどのように描かれるのか、気になりますね。
【庚申待の夜、道長とまひろの恋の行方。次ページに続きます】