茶々迫力渾身の演技が凄い!
I:茶々(演・北川景子)と阿茶(演・松本若菜)――、秀吉と家康という権力者の側室同士が大坂城内で対峙する場面が描かれました。実際にそんな対面があったかどうかはともかく、本作ならではの面白い場面になりました。
A:茶々役の北川景子さんの迫力ある渾身の演技を見て、『極道の妻たち』で姐さん役を演じてくれたら映えるのではないかと感じました。
I:『極妻』といえば、劇場版、Vシネマ版あわせて岩下志麻さん(8作)、十朱幸代さん(1作)、三田佳子さん(1作)、高島礼子さん(5作)、黒谷友香さん(1作)とありますが、北川景子さんであれば遜色ないですね。ただ今のご時世で極道の妻を主人公にした新作ができるのですかね?
家康と三成、最後のやり取り
I:関ヶ原合戦が終わった後に、三成(演・中村七之助)は戦場を離脱して伊吹山山中に身を潜めましたが、敢え無く徳川方に捕縛されます。通常、縄をかけられた姿で、家康と面会する場面が描かれることが多いのですが、本作では、城内で、しかも差しでの対面になりました。中村七之助さん、松本潤さんふたりきりという演出は、おそらく本作きっての名場面として記憶されることになるのではないかと、今感じています。目指すところは同じなのに、全くかみ合わないふたり。切ないものがありました。
A:確かに並の脚本、並の演出であれば、縄をかけられた光秀と家康が屋外で、「湯を所望する」→屋外なのですぐには用意できずに柿を与えようとする→三成がこれから斬首される身でありながら、柿は痰に悪いといって周囲をざわつかせた、という場面をテンプレート的に展開しがちです。
I:その有名なエピソードをあえて入れず、お互いの思いをぶつけ合うことで、より人間味のある、ある意味リアルな場面になったように思うんですよね。数々の別れを経験してきた家康にとっても、こんな別れ方はしたくなかった、というのがドラマとしてよく伝わってきました。
A:少し前にこの家康と三成のやり取りが「改悪されている」というゴシップ記事が出て、不安を感じたファンの方も多かったと思います。今週この場面を見て感じたことは「濁った視点でみると本質を見誤り、濁りきった記事ができあがる」ということです。
I: 本当にそうですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり