ライターI(以下I):今週は本能寺の変が描かれました。天下統一をほぼ見通せるようになった織田信長(演・岡田准一)という権力者が、家臣明智光秀(演・酒向芳)の謀反により討たれるという日本史上、特筆すべき大事件でした。
編集者A(以下A):織田信長本人だけではなく、羽柴秀吉(演・ムロツヨシ)、徳川家康(演・松本潤)に加え、お市の方(演・北川景子)など周囲の人々の人生をも激変させた大事件。その動機については、440年以上経過している今日に至るまではっきり確定していません。この日本史上の大事件をどう描いてくるのか大注目の『どうする家康』第28回となりました。
I:冒頭で、いわゆる噂好きの京雀(きょうすずめ)たちが口々に〈徳川さまがやりおったんや。織田さまの首を持って逃げとるいう噂やで〉〈家康の首を獲ったもんに褒美が出るいう話や〉と言っていました。
A:京雀がどうしてこんな情報を手に入れたのでしょう(笑)。実際に本能寺を攻めたのは明智光秀ですから、町の人々が叫んでいた、家康がやったという情報は虚偽だったわけです。明智光秀が虚偽の噂を流布したという設定なのでしょう。
I:なるほど。信長や秀吉が、やるとしたら家康と思い込んでいたことを、一般の人々も思っていたのかなと考えていましたが、光秀の策略の可能性があるわけですね。
せっかく岐阜から来たのだから……。
I:驚いたのは、緊迫した展開の中で、お市の方が家康と面会したことです。夫である浅井長政(演・大貫勇輔)が小谷城で敗死したあとは、茶々、江、初の「浅井三姉妹」とともに暮らし、このころは岐阜城にいたといわれています。そういえば、以前、家康が上洛した際にも、生まれたばかりの茶々を連れて来ていました。そのころ住んでいた小谷と京は比較的近いですが、わざわざ岐阜からやってくるとは。なんというアグレッシブな設定……。
A:本作のお市の方の初登場場面を覚えていますか? 竹柵の中で信長と格闘した家康(当時は元康)に向かって戦いを挑んだ姿を。あの回以降は普通の姫になりましたが、信長の本能寺入りにあわせて甲冑姿で随行する設定でもよかったくらいです。
I:なるほど。これまで信長正室濃姫(帰蝶)が本能寺でともに戦ったという大河ドラマはありましたが(1983年『徳川家康』/濃姫役は藤真利子)、お市の方が本能寺で奮闘するという設定は見たことがありません。
A:本来は絶対にありえない場面ですが、本作は、設定を振り切る「時代活劇」。思い切ってそういう場面を作ってもよかったかもしれません。信長とともに奮戦する「北川お市」、見たいですよね。初登場の際にあれだけインパクトのある設定でしたから、なおさらそう思います。
I:まあ、そこまでは必要ないという判断なのでしょう。ところで、お市の方と浅井三姉妹の物語、今後はどういう展開になっていくのでしょうか。あれ? そういえば、本作には濃姫(帰蝶)がキャスティングされていませんね。
【「信長殺し」を断念した家康にがっかり。次ページに続きます】