敵中の伏見城を預かった  彦右衛門(演・音尾琢真)。(C)NHK

ライターI(以下I):会津に引っ越したばかりの上杉景勝(演・津田寛治)に「謀反の動きあり」ということで、徳川家康(演・松本潤)が上杉討伐軍を編成します。その征伐軍が現在の栃木県小山市に陣を敷いていた時に、石田三成(中村七之助)挙兵の報がもたらされます。

編集者A(以下A): 俗に「小山評定」と呼ばれる戦国史きっての有名な場面。近年、「小山評定なかった説」が出て論争があったのですが、劇中では「小山評定」が描かれていますので、ここでは「評定はあった」ということで話を進めていきます。

I:福島正則(演・深水元基)、黒田長政(演・阿部進之介)ら豊臣恩顧の大名があまたいる中で、かじ取りを誤れば家康の致命傷となったと思われる場面ですよね。

A:劇中ではわりとオーソドックスに、福島正則が真っ先に家康に味方することを高らかに宣言し、次いで山内一豊(演・山丸親也)が呼応するという展開でした。2006年の『功名が辻』などでは、居城である掛川城を家康に差し出すという山内一豊一世一代の名場面。この場面を見ると、福島正則はよっぽど石田三成のことを嫌っていたのだろうなといつも思います。

I:前田利長は秀吉死後の混乱の中で母まつを人質に差し出します。2002年の『利家とまつ』の名場面でした。ところで現代でもよくあることですが、上にはこびへつらい、同輩や後輩には上から目線という人はたくさんいますね。往々にして引き上げる立場の人間は、「本作の三成的人物」が同輩、後輩から蛇蝎のごとく嫌われているということを把握せずに、引き上げてしまう。

A:どこかで見てきたような言い草ですね。

I:フリーランスはいろんな会社のいろんな人たちを観察していますからね(笑)。

A:さて、余談になりますが、家康らの軍が会津を目指していた行程を、後に土方歳三らがなぞります。土方らが通った会津西街道(下野街道)は、家康の時代はまだ整備されていません。秀吉の小田原攻めの際には伊達政宗が通ったそうです。今は大内宿が観光スポットとしてにぎわっています。

I:どんな道をどんなふうに行軍していたのか。想像すると楽しいですね。

小山評定での家康。(C)NHK

落城した岐阜城の城主は信長嫡孫

I:関ヶ原合戦の前哨戦として、伏見城の攻防では、鳥居彦右衛門(演・音尾琢真)の最期が取り上げられました。そちらは別稿の音尾琢真さんの記事でも展開していますので、こちらでは岐阜城の戦いについて触れたいと思います。劇中では本多平八郎忠勝(演・山田裕貴)らが岐阜城に入りますが、誰が城主だったかには触れられませんでした。当時岐阜城を守っていたのは、本能寺の変で織田信長とともに討ち死にした織田信忠の嫡男織田秀信です。信長亡き後の「清須会議」で秀吉に抱かれていた三法師といった方がわかりやすいでしょうか。

A:あの三法師もこのとき20歳前後。世が世なら信長嫡孫として、多くの家臣にかしずかれる立場だったことを思うと、涙を禁じえませんね。劇中、岐阜城城主が織田秀信だったことすら触れられないというのが、本能寺の変から18年経った「織田家の現在地」が端的に描かれたということなのでしょう。

I:戦国時代には、守護大名だったり鎌倉以来の名門だったり多くの家が滅亡、没落しています。それを考えると、すい星のように現れ、ほんの一時だけ燦然と輝いた織田家って、日本史の中では特筆すべき存在なんですね。

小山評定での家康の台詞と細川ガラシャの悲劇。次ページに続きます

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