井伊直政を演じた21歳の板垣李光人さん。(C)NHK

ライターI(以下I): 天下分け目の関ヶ原を描いた第43回ですが、井伊直政を演じた板垣李光人さんからコメントが寄せられました。え? 井伊直政ってもう退場ですか? とびっくりしています。

編集者A(以下A):劇中でも描かれましたが、井伊直政は、戦場からの離脱を試みた島津軍を阻止せんとして、狙撃されました。この時の戦傷がもとで2年後に亡くなってしまうわけです。

I:島津軍の戦場からの離脱というのはすでに勝敗が決した後のことになりますから、なんとももったいないことではありました。

A:関ヶ原での井伊直政の負傷に思いを馳せるときに、いつも思い出すことがあります。1999年7月に国立競技場で行なわれたシドニー五輪サッカーアジア地区一次予選、日本代表VS.フィリピン代表です。このときたまたま観戦していたのですが、10点以上の大差で日本代表が勝利した試合で、日本代表の小野伸二選手がフィリピン代表選手の未熟なタックルによって靱帯断裂の大けがを負いました。天才選手のパフォーマンス低下を招き、「あのケガがなければ」と今でも語り継がれる試合です。

I:なるほど。なんとなくわかります……。さて、それでは板垣さんのお話をどうぞ。まずは、「直政の歩み」を振り返ってくれました。

ほとんどの家臣団は第1回から登場していましたが、直政(当時・万千代)は第15回からの登場でした。そして徳川四天王の中では酒井忠次(演・大森南朋)さんの次に早く亡くなるので、物語にスピード感があって、短い時間で人生が濃密に描かれていたなという印象です。

〈赤鬼〉とも呼ばれていたように、戦においての功績が目立ちやすい直政ですが、彼の魅力はそれだけではないと思っています。例えばドラマの中でも仲(演・高畑敦子)さんとのエピソードで描かれたように、物事を有利に運ぶためなら戦略的に人間関係を築いたりする一面も。そういう知的なところも魅力的だなと思っています。

I:板垣さんといえば、2021年の大河ドラマ『青天を衝け』で、将軍徳川慶喜(演・草彅剛)の弟で兄の名代でパリ万国博覧会に日本を代表して参加した徳川昭武を演じました。昭武はパリでは「プリンス・トクガワ」と称されたようですが、まさにプリンス然とした佇まいが印象的でした。

A:すでに懐かしいですね。昭武ゆかりの松戸市の戸定歴史館を訪れた際に、板垣李光人さんが、「広報 まつど」の表紙を飾っていたことを思い出しました。

I:さて、板垣李光人さんのお話は「役作り」について続きます。

血気盛んという面では平八郎(演・山田裕貴)とも近いところがあると思いますが、違う〈熱さ〉をどう表現できるかは当初悩みました。でもある日、家臣団が揃っているシーンを現場のモニターで確認していた時に、僕ひとりだけ異様に白くて、ちょっと異質さを感じまして(笑)。それを見た時、「あ、これだ!」と思いました。史実でも部下からすごく恐れられていたという逸話が残っているそうですが、特に小牧長久手の戦いのあたりからは、平八郎が炎の熱さだったら、直政は氷のような印象にしようと思いました。どちらも近付くのが怖いけれど、その方向性が少し違うというイメージを持って演じていました。

A:〈史実でも部下からすごく恐れられていた〉というお話がありました。実際の井伊直政は、大将でありながら戦場では最前線で戦うことが多かったといわれています。それがゆえに劇中で描かれたように敵方に狙撃されたのだと思いますが、自分にも部下にも厳しい感じだったのではないでしょうか。

I:「井伊の赤鬼」といわれているくらいですからね。それはもう鬼のような……といっても、今でいうイケメンだったともいわれていますから、「鬼イケメン」とでもいうのでしょうか。

A:「鬼」なわけですから、最強と言われていた武田残党を任されたのも当然といえば当然。武田由来の「井伊の赤備え」は戦場で映えたでしょうね。板垣李光人さんのお話の続きをどうぞ。

第32回で殿(家康/演・松本潤)、正信(演・松山ケンイチ)との3人のシーンがあり、そこでさらっと「武田の兵をまとめられるか」と殿から言ってもらえたわけですが、戦国の世を生きて殿に仕える者としてすごく光栄なことですし、ひとりの武将として力を認めて貰えたというのが実感できるシーンだったので印象に残っています。

実際に鮮やかな陣羽織と真っ赤な甲冑を着用し、武田の残党を率いて声を上げるシーンは、これまでの直政の人生を思うと感慨深かったですし、僕自身の高揚感も重なったように思います。

I:高揚感って大事ですよね。きっとアドレナリンが出ているのではないでしょうか。でも現実は大変です。続けてこんな話もしてくれました。

でも甲冑はかなり重みもあるので、撮影で1日中着用していると地面に沈んでいくような感覚になりました(笑)。

A:演技用とはいえ、甲冑一式を身につけていれば大変です。10~20kgはあるらしいですからね。それにしても〈地面に沈んでいくような感覚〉って面白いですね。

I:さて、板垣李光人さんのお話もクライマックスです。主演の松本潤さんについて語ってくれました。

基本的にどのシーンにおいても、気持ちの先にいるのは常に殿なので。殿あっての家臣団だし、殿のために我々は動く、というのはずっと軸にしていました。

松本さんと芝居をさせていただいて「やっぱり凄いな」と思っていたのが、撮影時に〈ステージング〉にもこだわられていたことです。「こう見せて、こういう動きを付けたらどう?」とか。それが映像になった時にどう見えるかというところまで計算して、作品全体のことを考えてリハーサルで意見されている様子を見て、いつも凄いなと思っていました。アーティストとして様々なステージに立たれて、さらに芝居の経験も積まれていて、両者を経験されているからこその視点なのだろうと思います。

その作品のテイストや周りの役者さんの空気感を踏まえて自分が役としてどう立ち回るべきかということであったり、自分のキャラクターの付け方であったり……それはいつも意識していますが、ステージング的なところや魅せ方、このシーンでどういう動きがあれば効果的かというところまではなかなか考えが及びません。自分にはハードルが高いかなと思いつつも、松本さんの背中を追いかけたいと思える一面でもあります。

I:長年ステージなどをプロデュースしてきた松本潤さんならではのお話ですね。これまでは松本潤さんよりの年長の演者の方々からのコメントが多かったですが、板垣李光人さんはまだ21歳ですからね。

A:板垣李光人さんは本作で大河出演3作目。おそらくこれからも出演を重ねていくことになるかと思います。「21歳の板垣李光人」のコメントを記憶に留めておいてほしいですね。

I:10年後、20年後に、現在の松本潤さんの立場になった時に読み返してみたいですね。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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