ライターI(以下I):冒頭、駿府に雪が降る様子が描かれました。現在の駿府(静岡市)は温暖であまり雪が降らないそうで、小学校などでわざわざ雪のある地方に出かける「雪見遠足」という行事が設定されたこともあるそうです。
編集者A(以下A):それで「駿府に雪が降るのはおかしい」と感じた視聴者が出たわけですが、そこが歴史の面白さ。実際には室町時代から戦国時代にかけての気候は現代よりも寒冷化していたようですから雪が降ってもおかしくはない場面でした。
I:駿府に雪が降る設定が、歴史談義の種になりましたね。寒冷化による食糧問題なども戦国という紛争時代の背景にあったということなのでしょうし、「縄文海進」など、気候問題は歴史の中でも度々キーワードになりますね。さて、今週の主人公は今川氏真(演・溝端淳平)でした。本作では第1回で描かれた時代にフラッシュバックしながら、氏真と家康(演・松本潤)との関係がクローズアップされました。
A:第1回だけでなく、これまで描かれなかった今川家にやってきたばかりの竹千代時代までさかのぼりました。義元(演・野村萬斎)の登場はうれしいですが、この先も登場することがあるのでしょうか。だったら、最初からがっつり登場してほしかったですけど(笑)。
I:でも、本作が氏真にフォーカスして懸川城(現掛川城)の攻防を描いてくれたおかげで、氏真があっさりと没落したわけではなく、長期にわたって意地の抵抗をしていたということがわかってよかったのではないでしょうか。
A:そうですね。その部分はほんとうにうれしい部分です。絶賛したいと思います。
I:最初から、北条の小田原に庇護を求めていれば、と思わなくもないですが、そこが「意地」なのでしょうね。才がないと父義元から言われ、自覚もあるが、できる男を演じて、陰で人一倍努力してきた氏真が哀れでした。その氏真を好演したのが溝端淳平さんでした。
A:溝端さんは、『立花登青春手控え』で、その実力は証明済でした。なんといっても1980年代にその後『武田信玄』で主演を張った中井貴一さんのテレビデビュー作のリメイクですからね。今回の第12回は溝端さんの好演で感動が引き立ちましたね。
【武田信玄の首実検の場面で思ったこと。次ページに続きます】