期待大のムロツヨシさん版藤吉郎。(C)NHK

ライターI(以下I):(やや興奮気味に)今週は木下藤吉郎(演・ムロツヨシ)の衝撃的な登場が強く印象に残りました。物語は、水野信元(演・寺島進)に仲介されて元康(演・松本潤)が三河を訪ね、信長(演・岡田准一)と対面する設定でした。このとき元康満年齢で19歳。桶狭間から2年経過しています。

編集者A(以下A):ちなみに信長が元康と同じ年齢の頃には舅斎藤道三と対面しています。道三を驚愕させるほどの鉄砲を揃え、会見時には、平素の「うつけ姿」を封印のうえ、威儀を正して会見に臨むパフォーマンスを見せたというのは有名です。

I:ずらりと並ぶ織田家臣団のパフォーマンスに元康家臣団がややビビっていましたよね。しかも、道三会見時の信長の胆力と比較すると、この時の元康はまだひ弱であったという設定なんでしょう。それだけに信長との対面のシーンは見どころがありました。元康を圧倒する信長の眼力、それに気圧される元康。信長、さすがの貫禄でした。そして、松潤元康の脅えの様子が真に迫っていました。ところで、清須城がものすごい威容でした。紫禁城をイメージしたのでしょうか。

A:さすがにやり過ぎではと思わなくもないですが、ここまで振り切っていこうということであれば、大河ドラマファンとして「是」としましょう。ただ、清須城をここまで壮大にすると、今後岐阜城や安土城、さらには江戸城、駿府城や秀吉の大坂城など、どう表現してくるのか……。「ハードルがあがった」ということはいっておきたいと思います。

I:私は「あ、紫禁城みたい」と感じましたが、その辺はあまり気にしないで見ていました。

A:その流れで、柴田権六勝家(演・吉原光夫)が三河勢に木下藤吉郎を引き合わせます。藤吉郎が勝家に蹴り上げられる場面は衝撃的でした。三河衆もびっくりという設定でしたが、藤吉郎の所作や台詞回しを見て、ほんとうに声をあげて笑ってしまいました。あまりにも斬新な藤吉郎でした。

I:「今までこんな藤吉郎いた?」 というくらいのテンションでしたよね。今後どうなるんでしょう? なんだかわくわくします。藤吉郎の登場でこんな気持ちになるなんてサプライズです……。その藤吉郎が三河衆にみかんを配りました。

A:みかんは『古事記』『日本書紀』の時代は「橘」と呼ばれていました。明治以降は温州みかんが主流ですが、戦国時代は「小蜜柑」の時代。元康が手に持っていたのはまさに「小蜜柑」。清須城で思い切り振り切った制作陣も小道具のみかんではしっかり考証していたことになります。このギャップにちょっと感じ入っています。

I:みかんといえば現在では、愛媛県(伊予)、和歌山県(紀伊)、静岡県(駿府)が一大産地ですが、当時もすでに和歌山や駿府はみかん(柑橘類)の産地だったようです。元康が〈妻と子に〉というのもうなずけますよね。一瞬思ったのですが、尾張でみかんを用意できたのは、各地の商人とつながっている「藤吉郎の才覚」を表現したのかな? とも思ったりしました。

A:そういえば2020年『麒麟がくる』の藤吉郎(演・佐々木蔵之介)は、最初行商人設定でしたよね。

お市との衝撃の再会

元康(演・松本潤)は幼馴染のお市(演・北川景子)と再会。(C)NHK

I:信長は相撲好きだったことが知られていますが、元康との相撲対決が描かれました。藤吉郎が行司を務めていたのが笑えましたが、相撲を超越した総合格闘技のような闘いになっていました。なぜか周囲を柵で囲んでいましたし。

A:これは、昭和~平成の金網デスマッチ、あるいは総合格闘技のオクタゴンケージをイメージしているのか、と感じました。昭和ならラッシャー木村、平成なら大仁田厚が思い起こされますが、これは作者と演出陣、どちらの構想なのでしょうか……。ただ、信長の相撲好きは、後に安土城で大相撲大会を開くくらいですから本格的。それにしてもムロさんの藤吉郎がツボにはまりますね。今後、元康とは延々と絡んでくる相手ですから、先行きが楽しみになりますね。

I:ここで仮面をつけて木製ですが薙刀を持つ人物が登場しました。元康との間で白熱の勝負が繰り広げられますが、信長の妹お市(演・北川景子)でした。「そうきたか!」とびっくりの登場でした。曲芸のような闘い方をしていましたからほんとうに衝撃的です。

A:衝撃といえば、元康とお市をくっつけようって話にまで展開したこともびっくりです。しかもふたりは幼馴染という設定でした。

I:回想のシーンでは〈次は水練じゃ! 川へいくぞ!〉と竹千代に号令を発する信長の姿も描かれましたね。『信長公記』には信長が水練に励んでいたことも記されていますが、さりげなく挿入されてきますね。

A:そのふたりが清須の町を眺めながら、小牧山に新たな城を築いていること、美濃攻略を始めようとしていることを語らう場面もありました。

I:私は、機密情報をペラペラと、と思ったりしましたが(笑)、〈乱世とはまことに愉快な世であることよ〉と、続けての〈力さえあればなんでも手に入る。力さえあればどんなに大きな夢も描ける〉という台詞も印象に残りました。

A:この台詞のくだりで、アントニオ猪木さんの〈元気があれば、なんでもできる!〉というフレーズを思い出してしまいました。相撲のシーンで金網デスマッチを想起してしまって「プロレス脳」になってしまったのかもしれません。

織田×松平 清須同盟が成立。次ページに続きます

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