ライターI(以下I):大倉の薬師堂、運慶(演・相島一之)作の十二神将の戌神(じゅっしん)、そして北条一族の人々……。ドラマのクライマックス近くになって、懐かしい光景が戻ってきました。
編集者A(以下A):実際に北条一族の人々が集ったかどうかはともかく、この時に義時(演・小栗旬)が薬師堂を建立し、運慶に十二神将を造立してもらったのは『吾妻鏡』にも記されています。 『吾妻鏡』では、この戌神が重要な役割を担うのですが、本編ではどういう展開になるのでしょうか。
I:この時の十二神将の像は現在に伝わっていません。いったいどのようなお姿をしていたのか、想像するだけでも楽しいですよね。
A:例によってはしゃぐ北条一族が面白かったです。台座でポーズをとる朝時(演・西本たける)に対して〈罰があたるぞ〉と義時がたしなめます。
I:神社の参拝でもいくつもの神社に同じお願いをするのはよくないのでは、とかお守りをたくさん持っているのはよくないのでは? と考える人もいますが、「神様はそんなに心が狭くないよ」と言いますものね。
A: お、神職資格を持つIさんならではの発言ですね(笑)。そのはしゃいでいた北条一族の中でも〈身内から右大臣が!〉という政子(演・小池栄子)の嬉しそうな顔が印象的でした。
I:現代の感覚だとなかなか「右大臣」がどうすごいのかわからなのですが、ざっくりいうと太政大臣、左大臣ときて右大臣。かなりすごい地位なんですよね。
A:再来年の大河ドラマ『光る君へ』に登場する藤原道長(演・柄本佑)が右大臣になったのは28歳。実朝(演・柿澤勇人)の26歳での右大臣就任は摂関家に匹敵するスピード出世でした。平清盛は内大臣から右大臣、左大臣を経ずに50歳で太政大臣でしたから、実朝の右大臣任官はやはり異例の任官だったと思います。
I:政子は無邪気に喜んでいましたが、坂東武者からすれば、京の権威である「右大臣」などどうでもよかったのかもしれないですよね。以前は、分不相応な官位を与えて追い込んでいく「位打ち」というようなことも言われていました。
A:現代でも、分不相応な位について気苦労が耐えないことが多いですが、その比ではないですね。
【政子と実朝のやり取りがあまりに切なくて……。次ページに続きます】