実朝版13人が集まった!
I:さて、実朝と千世(演・加藤小夏)、政子と実衣、さらには義時、泰時(演・坂口健太郎)、仲章(演・生田斗真)、時房(演・瀬戸康史)、義村、広元に加えて時元まで集いました。これで12人!
A:〈今は12か。ひとり足りなかったですね。残念〉と時房が言っていましたが、公暁も入れたら13人になりました。鎌倉殿の13人というと、頼家の代の合議制の13人だと思われがちですが、しっかりここでも「13人」が出ました(笑)。
I:この場で実朝の後継者に後鳥羽上皇の皇子である頼仁親王が選ばれたことが明かされました。時期はともかく、頼仁親王は実際に実朝後継に擬されたことがある皇子ですし、劇中で触れられていた通り、頼仁親王の母は実朝御台・千世の姉という縁があります。 義時まで〈実現すればこれに勝る喜びはありません〉と言っていました。
A:義時の腹の底は読めませんが、政子が上洛することになります。政子が時房を伴って上洛したのは事実です。劇中では藤原兼子(演・シルビア・グラブ)と対面しましたが、そのやり取りがバチバチで面白かったですね。
I:慈円(演・山寺宏一)が〈元は伊豆の田舎娘〉などと言い放っていましたしね。塩引きの鮭を実際に持って行ったかはともかく、〈たまには汚れたものを口にするのもようございますよ〉というのは笑ってしまいました。
A:小池栄子さんの政子について、これまでもいろいろ言及したいことがあったのですが、最終盤でやって来るであろう「政子クライマックス」のシーンを見るまで、抑えておこうと思っていました。
I:「政子クライマックス」とは、史上に残る名場面のことを言っているわけですよね? 私もそのシーンには期待大です。きっと泣いてしまうのではないかとも予想しています。
A:これはおそらく大河史上屈指の名場面になると感じています。そのシーンとともに、頼朝と出会ったころの政子、挙兵時に伊豆山権現で暮らしていたころの政子、頼朝の愛妾亀が現れたころの政子、義経を膝枕にした政子、頼朝が亡くなった際の政子などなど、過去のシーンを編集したものを見せてほしいですね。
蹴鞠に秀でた時房と上皇のサプライズ対面
I:今回の政子の上洛ですが、劇中では描かれませんでしたが、熊野詣でもしているんですよね。
A:政子と時房の熊野詣ではこれで二度目です。熊野古道の道中には政子が建立した供養塔も残っています。なかなかに信心深い印象ですが、実は、熊野以外にも訪れていた場所があるのです。Iさんも取材で訪れたことのある丹生都比売(にゅうつひめ)神社です。
I:わかります。確かに政子が寄進したという社殿がありました。現在は奈良国立博物館に寄託されているそうですが、政子寄進の金銅琵琶も伝えられています。
A:そこで政子が会った人物がいました。詳しくは別記事で紹介しますが、頼朝の実子で出家していた貞暁です。劇中にはまったく登場していませんけれども。
I:これはほんとうに泣ける話なんですよね。
やっぱり三浦義村という男が解せない
I:さて、最後に公暁と義村のやり取りがありました。ここで義村は頼家の死の真相を公暁に暴露します。これが乳母夫のすることでしょうか。〈北条義時は無二の友〉などと、この人はいったい誰の味方なのでしょう。私は和田義盛(演・横田栄司)を見殺しにしたこともあって、三浦義村という男は批判的な目でしか見られません。
А:第32回で、比企尼(演・草笛光子)が〈北条を許してはなりませぬ〉と幼い頃の公暁(当時は善哉/演・長尾翼)に語ったことを思い出させてしまいました。
I:ほんとうに魑魅魍魎の鎌倉。私は義時と義村のことが許せなくなってきました。
A:その気持ち、わかります。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『半島をゆく』、鎌倉歴史文化館学芸員の山本みなみ氏の『史伝 北条義時』などを担当。初めて通しで見た大河ドラマが『草燃える』(1979年)。先日、源頼朝のもう一人の弟で高知で討たれた源希義の墓所にお参りした。
●ライターI:ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2022年1月号 鎌倉特集も執筆。好きな鎌倉武士は和田義盛。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり