実朝が夢見た大船での渡航

実朝と「再会」したと語る陳和卿(右/演・テイ龍進)。(C)NHK

I:第24回で登場した陳和卿(演・テイ龍進)が再び登場しました。前回は頼朝が上洛して、東大寺の大仏落慶法要の際に、少しだけ登場しました。

A:頼朝上洛の際に、面会を求められましたが、「頼朝は合戦で多くの人を殺している」からと言って断っているのですよね。その陳和卿がなぜか鎌倉に来て、実朝と対面します。〈私たちは初めて会うわけではございません。前世において、実朝殿様は宋の国~~〉とか何とか言って、前世では子弟の関係にあったと言い出します。なんだか、山師だとか詐欺師っぽい感じも受けますが、実際にこのようなやり取りがあったみたいですね。実朝は〈この光景、以前に夢に見た。そなたは私の前に現れ、同じことをいった〉と言っていましたが、実際に同じようなことが記録されています。

I:まさかの実朝のデジャブですね。そんなことがあり得るのでしょうか? ということで作者が展開したのは、実朝の夢日記というものがあり、それを誰かのぞき見をして、巡り巡って陳和卿に伝わったというような流れにしているところです。

A:なんだか信憑性がありますよね。いや、ほんとうに今年の作者はすごい! ところでこの時期の実朝は京から上洛してきた鴨長明や栄西などとも交流していますから、けっこうアクティブなんですよね。

I:鴨長明は、「ゆく川の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず」で始まる『方丈記』の作者ですね。栄西は日本に初めて喫茶を広めた臨済宗の開祖。本当に積極的ですね。

A:そのうえ、和歌もしっかり学んで多くの作品を残していますし、後鳥羽上皇とも頻繁にやり取りをして交流を深めていたようです。

I:こうして実朝の治績をなぞると、実際には頼朝、頼家をしのぐ政治家の素養があった人物だったのかなと思ったりもします。だからこそ作者も〈今や頼家様どころか頼朝様さえ超えようとなさっている〉という台詞を義時に言わせていると感じました。

A: そう、そしてそれを感じるのは、柿澤勇人さんの演技がはまりすぎているからともいえます。さて、陳和卿が音頭をとって建造した大船が進水することができませんでした。このエピソードは1979年の『草燃える』でも触れられていましたが、子供心に不思議に感じていました。今回は、しっかり大船を作ってくれて、その大船が進水できなかったシーンがあり、トウ(演・山本千尋)と時房(演・瀬戸康史)が工作する設定になっていて、やっぱり実朝の夢を阻止したい力学が働いていたんだなと得心しました。そして、相変わらず大河の美術スタッフの方々の仕事は素晴らしいです!  あのシーンで実朝の無念の思いが強く印象づけられることになりましたし。

I:柿澤さんの好演も特筆すべきですよね。おかげで私たちも実朝のことをもっともっと知りたくなりますよね。

鈴木京香の丹後局がふたたび登場

再び政子(演・小池栄子)の前に現れた丹後局(演・鈴木京香)。(C)NHK

I:後白河院の愛妾だった丹後局(演・鈴木京香)が諸国を巡っているという設定で鎌倉に立ち寄り、政子(演・小池栄子)と対面しました。

A:ドラマの中では頼朝、政子らが上洛した際に、「坂東の田舎もの」という対応をした丹後局ですが、小池栄子さん、鈴木京香さんの対面が再び登場するのは嬉しいことです。

I:ところで、実朝のシーンに私は聖徳太子の御影が登場したことに驚きました。

A:台詞にも出ていましたね。この時代にも太子は崇敬の対象だったのでしょうか。

I:そして、最後に久しぶりに時政(演・坂東彌十郎)が登場しました。

A:すでに懐かしい感じがしますが、義時が〈まだ生きているのか〉というくらい政の世界から完全に身を引いていたのでしょう。そういえば、10月中旬に坂東彌十郎さんが「板橋区民まつり」で挨拶をされていました。たまたまその場に居合わせましたが、彌十郎さんをお見掛けできてうれしかったです。

I:彌十郎さんはお住いのある板橋区の観光大使をお務めなんですよね。

A:その彌十郎さん演じる時政の〈政から離れて久しいが、今がいちばん幸せな気がする。力を持つってのはしんどいな〉という台詞が心に響きました。権力ってほんとうに怖いですね。いったん手に入れたら手放したくなくなるし、子孫にも伝えたいと思う。でもその権力を維持するのはやっぱりたいへんなのでしょう。しみじみ感じますね。そして、時政が最後を迎えた伊豆韮山(伊豆の国市)は1日では回り切れないほど関連史跡があります。

I:時政メインで行くなら運慶作の国宝もある願成就院は外せないですね。伊豆長岡温泉もありますし、頼家、範頼の墓地のある修善寺まで足を伸ばして、二泊三日の行程ですかね。

A: 大河を見ていると行きたいところばっかりが増えていきますね(笑)。

久々に登場した時政(演・坂東彌十郎)。(C)NHK

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『半島をゆく』、鎌倉歴史文化館学芸員の山本みなみ氏の『史伝 北条義時』などを担当。初めて通しで見た大河ドラマが『草燃える』(1979年)。先日、源頼朝のもう一人の弟で高知で討たれた源希義の墓所にお参りした。

●ライターI:ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2022年1月号 鎌倉特集も執筆。好きな鎌倉武士は和田義盛。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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