幼少の頃より漢文を読みこなした才女
紫式部(973ころ~1014ころ)は、『源氏物語』の作者といわれる平安時代の女性。
貴族の藤原為時の娘として生まれ、幼少の頃より漢文を読みこなしたという才女だった。
一条天皇の中宮、藤原彰子に女房として仕え、同時代の清少納言とはライバル関係にあったようだ。
紫式部の好物は鰯だった。鰯は当時、宮中の高貴な身分の人びとにとっては卑しい物とされていた。
ある日、夫の藤原宣孝が外出した隙に鰯を焼いていたところ、突然、夫が戻ってきた。
鰯のにおいをかぎつけた夫が、「そんな卑しいものをなぜ食べる」と詰問すると、紫式部は次の歌を詠んだという。
日のもとに はやらせ給ふいはし水 まいらぬ人はあらじとぞ思ふ
いわしみずとは石清水八幡宮のことで、鰯とかけている。
「日本で石清水八幡宮へ参拝しない人はいないように、鰯だってみんな食べていますよ」とやり返したのだった。
鰯には、脳の働きを良くするといわれるDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれている。
紫式部はこっそりと鰯を食べ続けて、筆をふるったことだろう。
文/内田和浩