風が吹くと指先や耳がツーンと痛くなる、そんな厳しい寒さがやってきました。動物たちは冬眠を始め、春の訪れまで長い長い眠りにつきます。葉を落とした木々が並ぶ街は、なんだか寒々とした雰囲気をまとっているようです。一年の終わりにさしかかり、カレンダーを見ては、月日の経過を意識させられる時期でもあります。

暦には日本人が、古くから大切にしてきた季節ごとの行事や慣わしが今でも記されています。稲作をしていた時代、“二十四節気”を定め、この国の気候風土を捉えていました。それは同時に季節の移ろいを感謝し、愛していたことを物語っているのではないでしょうか? この記事を通して、改めて二十四節気を理解し、より深く日本文化の素晴らしさを感じていただきたいと存じます。

さて今回は、旧暦の第21番目の節気「大雪」(たいせつ)について下鴨神社京都学問所研究員である新木直安氏に紐解いていただきました。

目次
大雪とは?
大雪の行事や過ごし方とは?
大雪に旬を迎える食べ物
大雪の季節の花とは
まとめ

大雪とは?

「大雪」(たいせつ)とは、12月前半から12月後半にあたる二十四節気の一つです。「“大”きな“雪”」と書くことからわかるように「雪がたくさん降る時期」という意味が込められています。野山が白く染まり、本格的な冬の到来を感じる頃合いです。

二十四節気は毎年日付が異なりますが、大雪は例年12月7日〜12月21日になります。2022年の大雪は、12月7日(水)です。また期間としては、次の二十四節気の「冬至」を迎える、12月21日頃までが該当します。2022年は、12月7日(水)〜12月21日(水)が大雪の期間です。

この頃の厳しい寒さは「冬将軍」という異名を持っています。モスクワに遠征したナポレオンが、冬の寒さと雪が原因で敗れたところから、この語が生まれました。正式には「シベリア寒気団」といい、シベリア方面から到来し、日本海側には降雪を、太平洋側には乾燥した冷たい空っ風を連れてきます。冬の気配が日本中を覆う時期です。各地でスキー場がオープンし、スケートリンクが賑わう……そんな冬ならではの盛り上がりを見せてくれます。

大雪の行事や過ごし方とは?

毎年12月13日にある行事は「正月事始め(しょうがつことはじめ)」です。読んで字のごとく「正月を迎える準備を始めること」を指し、昔はこの日に門松やお雑煮を炊くための薪など、正月に必要な木を山へ取りに行く習慣があったとされます。

下鴨神社の「事始め」は、御薬酒・若水神事が該当します。大炊殿の横にある御井(みい)から汲み上げた若水を京都の料理屋さんや和菓子屋さんに授けて、御神水をもとに新年に向けて調進していただくという神事です。

12月13日は、婚礼以外は万事に大吉とされる「鬼宿日(きしゅくにち)」にあたることから、新年の準備を始めるのにふさわしい日とされてきました。今でも各地の寺社で、この日に煤払い(すすはらい)などの行事が行われています。

「煤払い」とは、家の煤を払い、内外の掃除をする行事です。神社仏閣で行われる際には、ほうきでは無く、神具とされる笹竹の先に葉や藁(わら)を付けたものを使い、本殿や正門などの埃を取り除いていきます。これを「清め竹」という地域もあります。このことからわかるように、煤払いには掃除だけでなくお清めの意味も込められているのです。

大雪に旬を迎える食べ物

大雪の時期に旬を迎える京菓子、野菜・果物、魚をご紹介します。

京菓子

柴の雪

生活の中に今ほどガスや電気を使用していなかった時代、薪(たきぎ)や炭で暖をとったり、料理などをしていました。都会に住む人たちは薪や炭を手に入れる方法の一つとして、行商から買い求めていたそうです。京都では、この時期になると、大原の里から薪や炭を売る女性の行商が売り声と共に街の中を歩いたそうです。その行商を、親しみを込めて大原女(おはらめ)と呼んでいました。

その姿は、藤原定家の和歌で詠まれたり、『洛中洛外図』にも描かれており、都人の心をとらえていたようです。

京都大原にある、大原女の木人形

大雪の時期になりますと、大原女が売っていた“薪”にちなんだ生菓子が出ます。下鴨神社に神饌などを納める「宝泉堂」の社長・古田泰久氏に、詳しいお話をお聞きしました。

「当店(茶寮宝泉)では、大雪の時期になりますと『柴の雪』を提供いたします。冬に暖を取るために束ねた薪の上に雪が積もった情景を表した生菓子です。

『茶寮宝泉』の『柴の雪』は、こし餡を炊くときに、黒糖を溶かし入れ、黒糖きんとんと呼ばれる生地を作ります。その生地を、籐の通しでそぼろ状に。丸めた白餡の周りに、そぼろを箸でつけます。

つくね芋を蒸して砂糖を合わせ、芋練り切りという生地を細かいそぼろ状にします。上部にのせて完成です。

雪のようにさっとなくなる口溶けを意識して、そぼろを柔らかく仕上げています。ご堪能いただけたら幸いです」と古田氏。

社長の古田泰久氏。「茶寮宝泉」の店内にて。

野菜・果物

大雪に旬を迎える野菜は、小松菜です。小松菜は、ビタミンやミネラルを多く含む、栄養満点の緑黄色野菜です。寒さに強く、霜が降りると甘みが増し、葉も柔らかくなって美味しくなるとされます。「小松菜」という名の由来は、東京の小松川(現在の江戸川区)だそう。江戸時代、将軍に献上する際、土地の名前を冠したことがきっかけだと伝えられています。

また、大雪の頃に美味しい果物は、レモンです。爽やかな風味が夏を連想させるかもしれませんが、国内産レモンの収穫時期は12~3月頃。冬の寒い時期にビタミンCを摂り入れることで、病気から身体を守ってくれます。食べる際には、塩レモンやはちみつレモンにして食べると、皮や果肉ごと食べることができておススメです。レモン汁だけよりも、効率よくビタミンCを摂ることができます。風邪の時だけではなく、日常的に取り入れたい果物ですね。

大雪の頃に旬を迎える魚は、鱈(たら)です。「鱈」と呼ばれる場合は一般的には「真鱈」を指し、日本では太平洋の北側で捕獲されます。大きいものだと1mを超えることもある大型の魚で、お腹が膨らんでいる姿が特徴的です。口が大きく、何でも食べる大食漢として知られ、「たらふく」という語に「鱈腹(たらふく)」の字をあてるほどと言われています。

寒さが厳しくなる初冬の頃、身がしまって美味しくなります。身は低脂肪で低カロリーとされ、淡泊なその味わいは和・洋・中と様々な料理に向いています。

大雪の季節の花とは

大雪、つまり毎年12月7日〜12月21日頃は、本格的に雪が降り出す時期です。ここからは、そんな大雪の訪れを感じさせてくれる植物をいくつかご紹介しましょう。

大雪の季節に咲く花は、ポインセチアです。クリスマスの代名詞のような植物で、冬になると様々なところで、大きな色鮮やかな花が見られます。ただ、一般的に花だと思われる部分は、苞(ほう)です。苞とは「蕾を包むように変化した葉」のことを指します。この色とりどりの苞が、花の少ない季節に彩りを与えてくれるのです。

また、アロエも冬に花を咲かせます。一般的に、薬用や食用とされる多肉植物のアロエ。寒い季節になると赤、オレンジ、黄色といった、明るい色をした円錐状の花を咲かせます。その優れた効能から「医者いらず」という別名がある植物ですが、鑑賞価値の高い花にも注目です。

まとめ

下鴨神社の糺の森と京都御苑(京都御所)は、京都市内で最後に紅葉が訪れる場所として知られています。「大雪」の時期、数年に一度の割合ですが、紅葉と初雪が重なることがあります。そんな滅多に見られない光景が見られるのは、「大雪」の時期のみの楽しみです。

監修/新木直安(下鴨神社京都学問所研究員) HP:https://www.shimogamo-jinja.or.jp
協力/宝泉堂 古田三哉子 HP:https://housendo.com 
インスタグラム:https://instagram.com/housendo.kyoto
構成/トヨダリコ(京都メディアライン)HP:https://kyotomedialine.com Facebook

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