明治末期の1905年、山梨県甲府市で生まれた米倉壽仁(よねくら・ひさひと)は、激動の時代であった20世紀を通して「芸術とは何か」を追求し続けた芸術家です。

詩集『透明ナ歳月』(1937年)を発表した詩人でもあった米倉は、第一次世界大戦後のフランスから世界中に広がったシュルレアリスム(超現実主義)に独学で取り組みました。

米倉壽仁の不思議な絵画の世界観を紹介する展覧会が、出身地の甲府で開かれています。(2023年1月22日まで)

米倉壽仁《早春》
1940年
山梨県立美術館蔵

本展の見どころを山梨県立美術館の学芸員、森川もなみさんにうかがいました。

米倉壽仁《ジャン・コクトオの「夜曲」による》
1979年(原画1931年)
山梨県立美術館蔵

「米倉壽仁は《ジャン・コクトオの「夜曲」による》をきっかけとして、シュルレアリスム画家として歩むことを決意しました。この作品は、首と手足のない人骨に美しい花や鳥たちが組み合わされ、コラージュの手法が用いられていると同時に、耽美的な傾向も感じられます。

米倉壽仁《ヨーロッパの危機》
1936年
山梨県立美術館蔵

また《ヨーロッパの危機》では、青空を背景に、卵か頭蓋骨のような物が置かれていて、表面はヨーロッパや北アフリカ、中東などを含む地図になっています。あるモチーフに別のイメージを重ねる表現は、シュルレアリスムの画家サルバドール・ダリによる手法です。米倉は戦前に、本作や《モニュメント》といったダリの影響を受けた作品を描いています。

米倉壽仁《モニュメント》
1937年
山梨県立美術館蔵

《早春》は穏やかな海上に大きな卵の殻のような物が浮かび、その中に包帯を巻いた人やイノシシのような動物が乗っている不思議な作品です。米倉は様々なモチーフを組み合わせた謎めいた作品を多く描き、その中に戦争や社会に対する眼差しを込めました。画家が何を表現しようとしたのか、会場でぜひじっくりご覧ください」

米倉壽仁の肖像写真(『透明ナ歳月』より)

耽美的かつポエジイな作品が並ぶ会場で、タイムトラベルしませんか!!

【開催要項】
米倉壽仁展 透明ナ歳月 詩情(ポエジイ)のシュルレアリスム画家
会期:2022年11月19日(土)~2023年1月22日(日)
会場:山梨県立美術館 特別展示室
住所:山梨県甲府市貢川1-4-27
電話:055・228・3322
開館時間:9時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし1月2日、1月9日は開館)、年末年始(12月27日~
1月1日)、1月4日(水)、1月10日(火)
公式サイト:https://www.art-museum.pref.yamanashi.jp
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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