朝晩の冷え込みを肌で感じる季節になりました。秋の長雨が終わり、日中は秋晴れの過ごしやすい日が多くなります。また、本格的に農作物の収穫が始まり、食卓が秋の味覚で彩られる季節です。こうした周りの情景に目を向けると、ふとした瞬間に季節の移ろいが感じられるのではないでしょうか。

日本人は、“二十四節気”を定め、古くから季節ごとの行事や慣わしを大切にしてきました。それは、それだけ日本人がこの国の気候風土に感謝をし、愛していたことを物語っているのではないでしょうか? この記事を通して、改めて二十四節気を理解し、より深く日本文化の素晴らしさを感じていただきたいと存じます。

さて今回は、旧暦の17番目の節気「寒露」について紐解きます。

目次
寒露とは?
寒露の行事や過ごし方とは?
寒露に旬を迎える食べ物
寒露の季節の花とは
まとめ

寒露とは?

「寒露(かんろ)」とは、10月前半から10月後半にあたる二十四節気の一つです。寒い露(つゆ)と書くように「草木に冷たい露が降りる時期」という意味が込められています。この時期になると、朝晩の冷え込みはきつくなりますが、日中は空気が澄んだ秋晴れの過ごしやすい日が多くなります。

二十四節気は毎年日付が異なりますが、寒露は例年10月8日〜10月23日になります。2022年の寒露は、10月8日(土)です。また期間としては、次の二十四節気の「霜降」を迎える、10月23日頃までが該当します。2022年は10月8日(土)〜10月22日(土)が寒露の期間です。

寒露の朝には、あたりに霧が立ち込め、ひんやりとした空気が広がります。息を吸い込むと、喉がすうと冷えるような寒気。そして夜空を見上げると、いつもより一層美しくきれいに輝く月が見られます。ふと耳を傾ければ、秋虫の鳴き声も聞こえてくるはずです。

一方日中は、雲ひとつない青々とした空が広がり、清々しい一日になります。空には海を渡ってやってきた、雁などの冬鳥の姿も見ることができるかもしれません。

寒露の行事や過ごし方とは?

寒露には、神宮(伊勢の神宮)にて、例年10月15日~17日に「神嘗祭(かんなめさい)」が行われます。「神嘗祭」はその年に収穫した新穀(しんこく)を天照大御神に捧げ、御恵みに感謝するお祭りです。天皇陛下は神宮に遥拝され、日本各地の神社でも神嘗祭遥拝式が斎行されます。

古来からお米を主食として生きてきた日本人にとって、「神嘗祭」は重要な祭儀であり、その伝統は今日にも受け継がれているのです。

五穀豊穣

下鴨神社では、えと祈願祭(崇敬者大祭)が行われます。豊かな秋の稔りを感謝する、年に一度のお祭りです。模擬店や福引き、舞楽の奉納などが行われ、境内は多くの参拝者で賑わいます。

また、寒露の時期にある祝日として「スポーツの日」が挙げられます。「スポーツの日」とは「体育の日」のこと。2020年に「スポーツの日」へと名前が変更されました。この祝日の趣旨は「スポーツに親しみ、健康な心身を培うこと」です。1964年の東京オリンピック開会式が行われた日として、10月10日と固定されていました。ただ、2000年からは10月第2月曜日と定められています。

寒露に旬を迎える食べ物

寒露の時期に旬を迎える京菓子、野菜・果物、魚、をご紹介します。

京菓子

初雁(はつかり)

古(いにしえ)より「初物七十五日」とか「初物を食えば七十日長生きする」と言われます。日本では、その年はじめて収穫された野菜や果実、穀物などを「初物」と呼んで愛でる習慣が根付いています。それは食べ物に限らず、「初月(はつづき)」、「初蝶(はつちょう)」、「初萩(はつはぎ)」などというように、花鳥風月にも「初」の字をつけ、季節の移り変わりを慈しんできました。

寒露の季節に見られる代表的な初物は、松茸や栗、柿などが挙げられます。そうした初物は、京菓子にも取り入れられます。下鴨神社に神饌などを納める「宝泉堂」の社長・古田泰久氏に、詳しいお話をお聞きしました。

「当店(茶寮宝泉)では、寒露の時期になりますと『初雁』を提供いたします。『初雁』とは、その年初めて北の国から渡ってくる雁のこと。その姿は、秋の到来を告げます。『初雁』は『万葉集』でも歌われており、古人が季節の変わりゆく様を空を見上げながら感じていたことがわかります。

『茶寮宝泉』の『初雁』は、こし餡を包んで蒸した上用饅頭です。仕上げには、飛来する雁の姿を焼き印で模しています。上用饅頭を作る工程は、つくね芋という丸い山芋をすりおろしてから、砂糖を加え寝かせます。そののち、上用粉を入れて練り合わせ生地を作ります。芋の風合いがまろやかに舌に伝わってくる、素朴な菓子に仕上げています。

高い秋の空に群れをなして飛ぶ雁の姿を思い浮かべながら、秋の風情を感じていただけたら幸いです」と古田氏。

茶寮宝泉 古田泰久氏
社長の古田泰久氏。「茶寮宝泉」の店内にて。

野菜・果物

寒露に旬を迎える野菜は、青梗菜(ちんげんさい)です。ミネラル豊富な緑黄色野菜で、和名では「体菜(たいさい)」と呼ばれています。もともとは中国の野菜で、日本に入ってきたのは、1972年の日中国交回復以降とのこと。シャキシャキとした食感とほのかな甘味がする野菜で、中華料理だけでなく、炒め物や煮物、スープ、お浸しなどの様々な料理に活用できます。

また、旬を迎える果物としては、柿が挙げられます。柿はカキノキ科カキノキ属の果実で、中国や日本などの東アジアが原産。ただ、ヨーロッパやアメリカには日本から伝わったため学名にも「kaki」という日本語で記されています。種類は大きく甘柿と渋柿に分かれますが、甘柿は渋柿の実を日本国内で品種改良し、生まれたものです。

寒露の頃に旬を迎える魚は、ししゃもです。10月〜11月の季節になると、卵を蓄えるメスは「子持ちししゃも」と呼ばれます。焼いて食べれば、濃厚で歯ごたえのある卵の食感を味わえるでしょう。丸ごと唐揚げやフライにするのもおすすめです。また、酢や柑橘類の調味料と相性がよいため、マリネにも向いています。

寒露の季節の花とは

寒露、つまり毎年10月8日〜10月23日頃は、空気が澄み、夜空に月が明るむ季節です。ここからは、そんな寒露の訪れを感じさせてくれる植物をいくつかご紹介しましょう。

寒露の時期に花を咲かせるのは、菊です。皇室の御紋にも用いられている菊は、奈良時代に中国から伝来しました。江戸時代の園芸ブームで品種改良が盛んに行われ、日本独自の多彩な菊が生み出されたとされます。秋に咲く菊は、春の桜とならんで、日本を象徴する花の一つです。大ぶりでたくさんの花びらを付ける菊や、小さく一重の風情ある野菊など豊富な種類が楽しめます。

藤袴
藤袴(ふじばかま)

また、藤袴も10月の初旬から開花します。万葉集や源氏物語にも登場する藤袴は、秋の七草の一つです。花の色が藤色を帯び、花弁の形が袴のようであることから「藤袴」と名付けられたとされます。茎や葉っぱを乾燥させると、桜餅の葉のような香りを放つのも特徴的です。中国では「香水蘭」「蘭草」と呼ばれ、ポプリとして扱われてきました。この香りは現代でもアロマに使用されています。

まとめ

草木に露が降り、澄んだ冷たい空気が肌で感じられる「寒露」。秋になって日照時間が短くなるため、夜は時間が長くなる、いわゆる「秋の夜長」となります。空気が澄んでいるため、月や星がきれいに見えて、窓を開けると心地よい風が吹き込んでくるでしょう。涼やかな夜風に当たりながら、季節の移ろいを感じてみてはいかがでしょうか。

監修/新木直安(下鴨神社京都学問所研究員) HP:https://www.shimogamo-jinja.or.jp
協力/宝泉堂 古田三哉子 HP:https://housendo.com 
インスタグラム:https://instagram.com/housendo.kyoto
構成/トヨダリコ(京都メディアライン)HP:https://kyotomedialine.com Facebook

 

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