神輿の担ぎ手13人はどう選ばれたのか?

偉大過ぎた父の跡を継いだ若き鎌倉殿(演・金子大地)。 (C)NHK

I:さて、今週は、『鎌倉殿の13人』のタイトルにもなっている13人がどのように選ばれたのかが丹念に描かれました。頼朝の死後に鎌倉殿になった嫡男頼家(演・金子大地)は当時18歳。

A:劇中でも描かれていますが、きっと北条と比企の主導権争いがあって、単純ではなかったのでしょう。神輿が勝手に動かぬようにコントロールする担ぎ手が必要だったのでしょう。

I:義時が、梶原景時(演・中村獅童)に相談して大江広元、三善康信(演・小林隆)、中原親能(演・川島潤哉)、二階堂行政(演・野仲イサオ)の文官4名に梶原景時の5名を鎌倉殿頼家との取り次ぎ役にするということが発端という設定でした。

A:俗に「13人の合議制」といわれる面々ですが、『吾妻鏡』には選ばれた13人の名前こそ出ていますが、誰がどのような基準を以て選出したのかは一切書かれていません。劇中のやり取りを見てわかる通り、頼家の直裁を制限することが目的ですから、頼家自身が命じるわけがない。

I:やっぱり大江広元とか文官らの発案なんですかね?  それとも北条?

A:『史伝 北条義時』の山本みなみさんの見解は〈『吾妻鏡』には明記されないが、この13人を選出したのは頼朝の後家政子とみてよかろう〉と明快です。確かにその説を首肯すれば、前話からの流れがストンとつながります。頼朝が亡くなり、父の時政らは全成擁立を目論むなど、最側近だった義時の立場も危うくなりました。義時は、すかさず政子(演・小池栄子)のもとを訪ねて、頼家擁立に引き込み、ラストシーンで頼朝の念持仏を媒介にして共闘することを決意する。

I:頼朝未亡人(鎌倉殿後家)の政子が後ろ盾になったからこそ、義時が自由に御家人間を行き来して取りまとめることができたと見えました。そうでなければ、いかに義時といえども「何でお前が動いてるの? どんな権限で?」となりますよね。

A:前週のラストシーンの義時、政子の「頼朝が築いた幕府を守る」という共闘宣言シーンはとっても重要な場面だったわけです。もちろん見方を変えれば「義時が自らの保身のために鎌倉殿後家・政子の威光を利用している」という解釈もできるかもしれません。

I:誰に肩入れするかで、見方がぜんぜん変わってきますね。さて、劇中では、当初5人の予定だったものが、話が広まるにつれて増えていく様子が、北条と比企の多数派工作も絡めながら展開されました。〈千葉のじいさんはダメ〉とか畠山重忠は名前が出たけれども選択されなかったとか。人事とは結局好き嫌いが反映されることも多いですから、私は政子と義時が嫌いなのかも、って軽い気持ちで眺めていました(笑)。

A:最終的な選出者が政子ということであれば、劇中でも、それを裏付けるように12人まで確定した段階で、政子のもとに書付がもたらされました。〈合わせて12人。これよりはこの者たちが、鎌倉殿をお支えすることになります〉と義時が言上します。

I:政子に承認を求めているんですね。ここで政子は〈もうひとり加えてほしい人がいるの〉と言い出し、義時をもメンバーに繰り入れようとします。これで、「13人の合議制」と称される寄合のメンバー選定を実質的に誰が仕切っていたのか黒幕が誰なのか鮮明になりました。山本みなみさんの著書(『史伝 北条義時』)には13人の略歴や今後鎌倉で起きることが簡略にまとめられているので重宝しますね。

根底にある「頼家暗愚史観」を注視

A:北条と比企の主導権争いで多数派工作しながら最終的にはバランスよい配置になった今週の流れを見て、この段階では、北条と比企の決裂を回避させようとする力学が働いたんだろうなと感じました。

I:結局、坂東武士=御家人らの考えは、「神輿が勝手に動いてもらっては困る」ということでしょう。神輿は、担ぎ手の思う通りに黙っていれば良いという。

A:ところがその担ぎ手13人も決して一枚岩ではない。頼家とすれば、信頼できる側近らを担ぎ手に任命するのは、当然のことでしょう。比企と北条がバランスの良い6人の若手側近たちが登場しました。

I:頼家に関する『吾妻鏡』の記載は「頼家暗愚史観」に包まれています。本作の頼家がどのように描かれようとも、頼家についての議論が深まるきっかけになればいいなと思います。そういう意味でいえば、やや頼家に感情移入した形で視聴すると面白いかもしれませんね。

※1;即位 皇位についたことを内外に宣明すること。
※2:践祚(せんそ)三種の神器を継承して皇位につくこと。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『半島をゆく』、鎌倉歴史文化館学芸員の山本みなみ氏の『史伝 北条義時』などを担当。初めて通しで見た大河ドラマが『草燃える』(1979年)。先日、源頼朝のもう一人の弟で高知で討たれた源希義の墓所にお参りした。

●ライターI:ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2022年1月号 鎌倉特集も執筆。好きな鎌倉武士は和田義盛。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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