アルファロメオから始まった輸入車ライフ。BMW、プジョーを経てアルファロメオに戻る

旧友を通して次に購入したのはアルファロメオの『156スポーツワゴン』。流麗なスタイルに惹かれての選定です。

エンジンへの不満ですぐに手放すが、スタイルの美しさはいつまでも巽さんの胸に残り続ける

156に搭載されるV6エンジンは定評のあるものでしたが、AT(Qシステム)との相性か、それとも個体のせいか、巽さんの感触としてはちょっと物足りないものでした。車検を機に手放し、かねてより気になっていたBMWの4代目『318iツーリング』に乗り替えます。

数々の快適な装備が奢られ、日本での人気も上々だった318iツーリング。BMWらしく完成度は非常に高かった

「318iツーリングの乗り心地は最高だったのですが、4気筒のエンジンは重く、思うように回らないものでした。乗る度にストレスを感じ、ちょうどアルファロメオの出物があったこともあって手放しました」

318iツーリングと入れ替えに購入したのは、アルファロメオ『147』の後期型です。しかし購入後、程なくしてAT(セレスピード)に不具合が発生。修理しても修理しても出る不具合に、気持ちの上では「中古車輸入車とは、そういうものだ」と割り切りつつも、クルマを使えないことで生活に支障がでていたため、リベンジとばかりに『147』前期型のMT車に乗り替えます。

147はヨーロッパでカーオブザイヤー、日本でもインポートカーオブザイヤーやグッドデザイン賞を受賞するなど、高い評価を得たモデル

「ツインスパークを持った147のエンジンは回しがいがあり、MTのおかげもあってとても楽しい一台でした。1年半くらい乗り、タイミングベルトをはじめとした消耗品を交換する時期に入ったので、プジョー『206RC』に乗り替えました」

206RCは、日本でも人気となったプジョー『206』に2000ccのエンジンを載せたスポーツモデル

147よりもコンパクトなクルマが欲しくなり、購入した206RC。お手頃な価格が決め手の購入でしたが、いざ乗り出すとクラッチやCPU、マフラーを交換する必要が出てしまい、結果的に高価な買い物となってしまったそう。期待の通りに小回りが効いて乗りやすく、巽さんのお気に入りとなったのですが、1年ほどでエンジンがかからなくなる不具合が発生。何度、修理しても発生してしまうため、手放すことを決めます。

次のクルマを思案しながら中古車情報のWebサイトをながめていると、アルファロメオ『156』のV6エンジン(2500cc)モデル、しかもMT車という、巽さんにとって理想のクルマを見つけます。即座にショップへと連絡をいれるも、年末のため休業中。いてもたってもいられない気持ちのまま新年を迎え、営業開始日に即連絡。急ぎ現車の確認に向かいます。

5年前に156スポーツワゴンを手放して以降、巽さんの心中にはずっと156への憧れがあったそう

ショップで見た156は程度も良好。巽さんはその場で購入を決めます。

「V6エンジンは吹け上がりがよく、パワーも十分。MTとの相性の良さや足回りの良さもあって、最高に楽しいクルマでした」

巽さんにとって最良の一台となった156。購入直後は細かい不具合が発生したものの、大きなトラブルが起こることはなく、巽さんを様々な場所へと運んでくれました。

再び困難の時。156を手放し、軽自動車のできの良さを知る

2019年の秋から始まった新型コロナウィルス(COVID‑19)の流行は、巽さんの属するタクシー業界に大きな影響を与えます。翌2020年より巽さんの収入は大きく減少。その一方で、156はクラッチのオーバーホールを始め、大規模なメンテナンスを行わねばならない状態でした。

コロナ禍の終息は見えず、当面は収入の少ない状態を覚悟せねばなりません。メンテナンスを先延ばしにして156を痛める、あるいは不動状態にするのは、巽さんの本意ではありません。ちゃんと維持できる人の手に渡すため、156を手放すことを決めます。

「156を手放したのち、安価で維持費のかからないクルマを探しました。当初は昔のイメージで“軽自動車は無い”と思っていたのですが、実際に乗ってみると思っていた以上によく走り、考えを改めさせられました。そこで競技車両のベース車として人気があり、後ろからのスタイルが好みなダイハツ『エッセ』を購入しました」

本当はMT車が欲しかったものの、エッセのMT車は値段が高騰しており、手頃なAT車を購入。それでも十分に走りが楽しく、エッセを選んだことに満足しているそうです。

「コロナ禍が落ち着いたら、アバルトの『595』に乗れたらなと思っています。これまでクルマがあったおかげで、どのような状況にあっても希望を持って生きてこられました。きっとこれからもそうでしょうね。もうクルマのない人生は考えられません」

どのような逆境に立たされようと、クルマと共に耐え抜いてきた巽さん。これからもその時、その時の愛車のハンドルを握り、時に耐えるため、時に道を開くべく走り続けるでしょう。

取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ゲーム雑誌の編集者からライターに転向し、自動車やゴルフ、自然科学等、多岐に渡るジャンルで活動する。またティーン向けノベルや児童書の執筆も手がける。

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