ついに残り11話となった『麒麟がくる』。演者の熱量がいよいよヒートアップして、名場面が続出している。そして、今後の注目ポイント・安土城はどのような威容を視聴者に見せてくれるのだろうか。
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ライターI(以下I): 2週前の当欄で〈長谷川博己の熱量半端ない〉とその熱演ぶりをクローズアップしましたが、今週の第34話では、織田信長(演・染谷将太)、松永久秀(演・吉田鋼太郎)、足利義昭(演・滝藤賢一)、筒井順慶(演・駿河太郎)、今井宗久(演・陣内孝則)、正親町天皇(演・坂東玉三郎)、摂津晴門(演・片岡鶴太郎)と主要キャストの熱演ぶりがビシバシと伝わってきました。
編集者A(以下A):今回を含めて残り11話。まさに座長・長谷川博己さん以下、チーム一丸になっているという印象でした。コロナ禍の困難な状況の中で撮影していることを思えば、感無量です。
I:その中で特に印象的な場面を振り返りたいと思います。
「それは聞かぬことにしておこう」
A:冒頭、銃声から始まりました。コロナ禍で大規模なロケはできないわけですが、カメラワークでそれを補っている風でした。これには意外にも引き寄せられましたね。
I:スリリングな展開でした。でも私が気になったのは、明智勢で捕まえていた叡山の僧を光秀の意向で逃がしていたシーンです。織田勢がうようよしているところに放てば、結局ほかの織田勢に捕まって斬られるのではないかとヒヤヒヤしました。せめて保護してくれたらと。
A:光秀は、純粋でまっすぐな設定ですから、そこは意図的にそうしているのだと想像しています。その場面の直後に、黙っていればわからないのにわざわざ信長に〈私の一存で女子どもは見逃しました。お許しください〉と“自白”していましたから。Iさんの見方だと、光秀が逃した女性や子どももほかの織田勢に斬られたかもしれませんね。
I:信長は鷹揚に〈それは聞かぬことにしておこう〉としたうえで〈ほかの者ならその首、はねておくところじゃ〉と釘をさします。
A:〈以後は皆殺せ〉ともいってましたね。鬼気迫るシーンでした。にもかかわらず信長は光秀に2万石の領地を与える。光秀は帰蝶(演・川口春奈)とはいとこの設定ですから、身内として対応したのかもしれません。
激しい怒りを顕わにする将軍足利義昭
I:ところで、今週も将軍足利義昭が怒っていました。
A: ついこの前(ドラマ上では2年前)の本圀寺襲撃事件の時などは、ブルブルと怯える姿を見せていたんですけどね。ブルブルしている義昭と今週の怒る義昭。それを見比べるだけで、信長と義昭の歴史がくっきりと浮かび上がります。滝藤さんの演技はさすがですね。私はNHKオンデマンドで本圀寺の場面を見直しましたが、「滝藤さんスゲー」としか言葉が出ません。惜しむらくは将軍義昭が、そういう状況に至る過程をもう少しじっくり描いて欲しかったですが……。
I:しかし、幕府では信長のことを徹頭徹尾「田舎者扱い」していますね。室町幕府は、自分たちでは兵を集められないから、衰退してきたんですけどね。
A:ここまで戦国期の室町幕府を濃厚に描いた大河ドラマは初めてなわけですが、そうなると、足利義満だったり、くじ引き将軍足利義教の時代も大河で取り上げてほしくなりますね。オリジナル脚本ではなく、原作小説もしっかり描いてもらっての10年計画くらいで取り組んでほしいです。
【松永久秀の“どの口がいう”問題。次ページに続きます】