俄で賑わう吉原。(C)NHK

ライターI(以下I):『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下『べらぼう』)で展開されている「吉原俄(にわか)」は、安永6年(1777)あたりの出来事です。11代将軍家治は劇中で登場していますが、京都の朝廷は第118代後桃園天皇の時代でした。

編集者A(以下A):このころアメリカが独立宣言を発してイギリスからの独立を果たします(1776年7月4日)。歴史の流れというのはおもしろいもので、江戸が世界有数の人口を有して活況を呈する中で、ようやくアメリカという国家が産声をあげたわけです。

I:そのアメリカですが、『べらぼう』の時代からおよそ70数年後の嘉永6年(1853)にはペリー艦隊が浦賀沖に来航して、当時の日本に衝撃を与えます。

A:今年の3月3日に、主人公が小栗上野介忠順という2027年の大河ドラマ『逆賊の幕臣』が発表されました。当然、ペリー来航(嘉永6年=1853)からの激動の日日も描かれてくるかと思います。日本とアメリカ(当時はメリケンと呼称)はペリー来航の翌年に日米和親条約を締結し、さらに安政5年(1858)には日米修好通商条約を結びます。

I:外務省外交史料館に原本が残されていますが、調印したのは「源家茂」。第14代将軍徳川家茂ですね。

A:『逆賊の幕臣』でも重要な場面として描かれると思われるのが小栗上野介の訪米です。これは日米修好通商条約の批准書を交わすための幕府側遣米使節としての訪米です。このとき幕府側のメンバーはアメリカに大歓迎を受けながら、海軍工廟などさまざまな施設を見学し、一大工業国に発展していたアメリカの国力に衝撃を受けます。これが1860年のことですね。おそらくこの段階ではよもや80年後にアメリカという国と日本が戦争することになるとは、冗談でも想像できなかったと思います。

I:2021年の『青天を衝け』でも描かれましたが、小栗はアメリカから1本のネジを持ち帰り、日本の近代化を進める決意をかためたということですね。それにしても『べらぼう』の「吉原俄」の時代を起点として日米関係に思いを致すと、なんだか不思議な感じがしますね。

A:『べらぼう』の時代にイギリスからの独立を果たしたアメリカが、驚異的な発展を遂げたということでしょう。幕府の将軍は、14代家茂になっていました。しかし、日本も負けていませんでした。小栗ら幕臣が進めた近代化の動きは、明治維新後に新政府に受け継がれましたが、日本もまた驚異的な発展を遂げます。

I:そういう視点で『べらぼう』をみていくと面白いかもしれないですね。なぜ、工業化するアメリカに日本は後れをとったのか。田沼意次(演・渡辺謙)からの政権の流れを注視していくとその答えがみえてくるかもしれません。

A:歴史を振り返るのと同時に未来にも思いを馳せていただきたいですね。30年後、50年後、80年後に日本はアメリカと同盟国のままなのだろうかと。

I:きっと現代を生きる私たちが想像もできない状況になっているのでしょうね。

●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ べらぼう 蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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