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高齢者にとってポリファーマシーのリスクは何か?|薬を使わない薬剤師 宇多川久美子のお薬講座【第16回】

高齢者にとってポリファーマシーのリスクは何か?|薬を使わない薬剤師 宇多川久美子のお薬講座【第16回】
高齢者ほど薬効成分が効きやすい理由

ポリファーマシー(多剤服用)という言葉が知られるようになりましたが、特に問題が出やすいのが高齢者です。読者の中にはご自身だけでなく、親の薬の量を見て心配されている方もいらっしゃるでしょう。

厚生労働省が2019年6月に発表した「高齢者の医薬品適正使用の指針」によると、65〜74歳の3割、75歳の4割の人に、5種類以上の薬が処方されていました。そのうち7種類以上の人が、それぞれ13.5%、24.5%と、なんと75歳以上では4人に1人でした。

ポリファーマシーになっている高齢者の多くの人は、かかりつけの病院で7種も10種もまとめて処方されるわけではありません。内科、整形外科、皮膚科など、いくつもの科で診療を受けて、似たような薬効の薬が重複していくことが多いのです。

一般的に服用する薬が6種類以上になると副作用のリスクが高まるといわれています。といって、5種類までなら副作用のリスクがないわけではもちろんありません。どんな薬も、1つから副作用はつきもの。それが6種類以上ともなると、副作用が起きても、どの成分による作用か突き止めることがむずかしくなり、予想外の副作用が起きるリスクも高まります。

高齢者に副作用が出やすい主な理由は、肝機能や腎臓機能の低下です。薬の成分の代謝が遅くなり、排泄されるにも時間がかかるようになります。薬効成分が体内に長く留まっているため、用法通りに飲んでいても効き目が出やすくなります。

高齢者にとってのポリファーマシーのリスク

ポリファーマシーがすべていけないとは思いません。6種類以上の薬を必要に応じて適正に服用している人もいます。

起こりえるリスクは、似たような薬効成分の薬が重なったときです。

たとえば、ふだんから肩や膝の痛みを抑えるために「痛み止め」を飲んでいる人が、風邪で熱が出て「熱冷まし」を飲むという場合。整形外科で処方されている痛み止めは、たとえば「ロキソニン」で知られるロキソプロフェンだとします。そして熱冷ましには内科でイブプロフェンが処方されたとします。いずれもNSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれる鎮痛解熱剤で、痛み止めにも解熱にも効果があります。それを2種類飲むことで必要以上の効き目が出る、つまり副作用が出るリスクが高まります。

眠くなる成分の入った薬にも注意が必要です。たとえば、ふだんから睡眠薬を飲んでいる人が、「かぜ薬」や「痛み止め」を併用する場合です。上述のNSAIDs(エヌセイズ)には、個人差がありますが眠くなる成分が入っています。また、花粉症などの抗アレルギー剤にも、人によっては眠くなる成分があります。

特に注意していただきたいのは高齢者です。睡眠薬との併用によって、日中にふらついたり、めまいを感じたりすることがあります。高齢者の場合、ふらついて転倒→骨折→入院という流れが非常に多い。長い入院生活のせいでそのまま寝たきりになったり、認知症が進んでしまうケースも非常に多い。高齢者にとって転倒は寝たきりコースの入り口になりかねません。薬の併用がもたらすふらつきやめまいを軽く見てはいけません。

何種類も飲んではいけない薬

先の厚労省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」の中で、急性期後の「回復期・慢性期で想定される薬物有害事象とその留意点」として次のような注意喚起がされています。

高血圧や糖尿病の薬、痛み止め、睡眠薬・睡眠導入剤など、併用されやすい薬です。ここに記載された有害事象と留意点は高齢者に限りません。また、長期間飲みつづけていい薬でもないことをつけ加えておきましょう。

・高血圧治療薬は「ストレス軽減や活動性の低下により血圧が過度に降下する場合がある」ため、転倒リスクや意欲低下、認知機能低下につながるおそれがあるとしています。

・糖尿病治療薬は「食生活の変化や体重減少によるインスリン感受性亢進により、血糖が過度に降下する場合がある」ため、低血糖やそれに関連した認知機能低下、転倒、骨折を避けるため薬の種類、量の検討が必要。

・NSAIDsなどの消炎鎮痛剤は「腎機能を低下させるリスクが高いため、短期間かつ低容量で使用すること」が望ましい。

・催眠鎮静薬(睡眠薬・睡眠導入剤)・抗不安薬は、特にベンゾジアゼピン系薬剤では急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることに留意する必要があるとされています。

・抗凝固剤(血液の凝固を防ぐ、血栓を防ぐ薬)は腎機能低下による薬の効きすぎと、転倒などしたときに出血リスクが高まると指摘されています。

このような注意が必要な薬を何種類も併用すれば、それだけ副作用のリスクは増します。ふだん飲む薬が5種類以上になったら、医師や薬剤師に薬の内容を相談してみることをおすすめします。そのとき役に立つのが「お薬手帳」です。とてもいい手帳だと思うのですが、あまり有効に使えてない人が多いのです。「お薬手帳」については次回、詳しくお話します。

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)

薬剤師、栄養学博士。一般社団法人国際感食協会理事長。健康オンラインサロン「豆の木クラブ」主宰。薬剤師として医療現場に立つ中で、薬の処方や飲み方に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」をめざす。薬漬けだった自らも健康を取り戻した。現在は、栄養学や運動生理学の知識も生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に薬に頼らない健康法をイベントや講座で多くの人に伝えている。近著に『薬は減らせる!』(青春出版社)。

構成・文/佐藤恵菜

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