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文/鈴木拓也

主治医を名医に変わらせるために患者ができること|『あなたの主治医が名医に変わる本』

「日本の医学教育はしっかりしているから、医師はみな均質の技量を持つ優れた人ぞろい」と、大半の人は思っているかもしれない。

しかし、医療の現場をよく知る人からの目線では、そうでもないようだ。

書籍『あなたの主治医が名医に変わる本』(マキノ出版)を著した、ハリウッド大学院大学の佐藤綾子教授と大阪市立大学の荒川哲男理事長兼学長によれば、医師は、「名医」、「名医予備軍」、「凡医」、「NGドクター」の4カテゴリーに分類できるという。

カテゴリーごとの比率については言及されていないが、技量・人柄ともに申し分ない名医は、どうやら少数派。そして、「やぶ医者」とも呼ばれるNGドクターは、思ったより多いらしい…。

こう聞くと、病院に行くのも別の意味で憂うつになってしまうが、そうした問題医師を回避し、名医あるいは少なくともその予備軍のもとで、安心して治療を受けられるためのコツが本書で語られている。どんなコツがあるのか、その幾つかを紹介しよう。

■NGドクターの見分け方

そもそもNGドクターとは、どのような医者を指すのか? 荒川学長は、例えば以下の言動が目につく医者は、NGドクターとみて間違いないと述べている。

・「気のせい」、「年のせい」を連発する
・矢継ぎ早に質問攻めをする
・患者の訴えをさえぎる
・冷たい感じがする

ミスを繰り返すリピーター医師は論外としても、患者に接する言動に問題のある医師がNGドクターとみなされている。これはなぜかと言えば、「(患者が)つらいだけなく、病気についての正確な知識が得られなかったり、ほかの治療の選択肢が閉ざされたりして、医療上のリスクにつながる」からという。確かに、患者としてこれは大きな問題だ。

もしNGドクターに当たった場合、荒川学長は「基本的に見切りをつけたほうがよいでしょう」と、明快にアドバイスする。

■名医を引き寄せるのは患者自身

本書の特徴は、週刊誌で時々見かける「名医のいる病院ガイド」のように一覧表を載せて、そこで受診すればいいというような導き方をしていない点だ。
それよりも重視されているのは、患者自身の心構え。これを、きちんとしておくことが、名医を引き寄せる(あるいは凡医を名医にする)近道になるという。心構えとは、例えば以下のようなもの。

・知名度と実態のズレを知る:著者は「有名病院の医師が全員一流とは限らない」事実を指摘する。もし有名病院で受診するなら、担当医師がどんな人物であるかに注意を払う。

・ネットやテレビに振り回されない:自分が病気になると不安になって、ネットをいろいろ調べてしまうもの。しかし、そこにある情報は玉石混交。また、医療に詳しくない知人に情報を求めたりするのも考えもので、一番良い情報源は自分の担当医というパターンが多いという。遠慮せず、担当医に疑問点を確認するように心がけたい。

・無知と本当の信頼はまるきり違う:上と逆説的に見えるが、全部医師任せで「どうぞ助けてくださいな、私は何の意見も申しませんから」という態度は、名医もダメにするという。正しいのは、「自分の体についても、現在受けている治療についても、目の前の医師の考え方の傾向についても、とことん勉強すべき」という姿勢。その上で担当医を信頼する。日本人に多い過度の遠慮は、医師の勘違いを助長するだけなので、この点にも留意する。

■かかりつけ医の存在は重要

本書でたびたび力説されるのは、かかりつけ医(主治医、ホームドクター)を持つことの重要性だ。いきなり大病院に行って何時間も待たされるのを防ぐばかりでなく、まずかかりつけ医の判断を仰ぎ、必要に応じて専門医・大病院を紹介してもらうという流れは、より好ましい治療につながる。また、家族ぐるみで診てもらえば、生活全般について相談に乗ってもらえ、症状の改善にもつながるなどメリットは大きい。
もちろん、かかりつけ医自身が一定水準以上を満たしていなければいけないが、その判断材料は、「わかりやすく説明してくれる」といったきわめてベーシックなレベル。また、「親しく、信頼できる人」の口コミも意外と役立つとのことで、なにはなくとも優れたかかりつけ医とめぐり合うことが、先決となる。

*  *  *

本書のタイトルの「主治医が名医に変わる」というのはとても示唆的で、読むと名医は患者とともに育てあげる側面が大きいことが、よく理解できる。その自覚のないNGドクターは、関わらないのが無難だが、並み以上の力量はある医師が担当についたのであれば、名医を探してドクターショッピングをするのでなく、「チーム戦」でともに病気を治してゆくという気持ちで付き合うのがベストだと実感される。

【今日の健康に良い1冊】
『あなたの主治医が名医に変わる本』

http://www.makino-g.jp/bookdetail/isbn/978-4-8376-7282-1/

(佐藤綾子、荒川哲男著、本体1,300円+税、マキノ出版)

『あなたの主治医が名医に変わる本』

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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