(3)経済的負担
入院や外来治療、交通費、など治療に直接関わる出費に加え、健康食品・代替療法や民間保険料などの間接費用を合計すると、半数以上の患者さんが一年あたり100万円以上自己負担しています(※2)。その他、先進医療を取り入れる場合は全額自己負担となる治療費を考えないといけません。
一方、がんの症状や治療により今まで通り仕事ができなくなると、収入が減ることが考えられます。
(4)社会的な負担
がんは長期療養になる可能性もあり、今までどおりの仕事を続けることは難しくなり、場合によっては退職せざるを得ない状況になることもあります。
さらに、人間関係にまつわる問題が生じます。例えば、がんについて相談できる人がいない、同じ病気の人との交流や情報交換が出来ないといった問題を抱えている人が3割近くいます(※2)。
また、医療提供者との人間関係も問題になります。例えば、セカンドオピニオンを受けたいと主治医に言うと主治医との関係がうまくいかなくなる、主治医と話を聞く時間が短い、代替医療について相談できる人がいない、などで負担を感じることも多いのです。
* * *
以上、今回はがんになった時に降りかかってくる4つの負担について説明しました。
想定していなかった……となっても、時間は待ってくれません。限られた時間と条件の中で選択肢を選んで行く必要があるのです。
だからこそ、起こることを事前に想定し、あなたの生き方や価値観、健康観を深く考えてみたり、家族と「もしがんになったら」を話し合ってみるなど、できるところから準備を始めてみましょう。
【参考文献】
※1.もしも、がんと言われたら. 国立がん研究センター
※2.厚生労働省
※3.糖尿病 2012: 55; 477-82
※4.Eur Arch Otorhinolaryngol 2006; 263: 32-6
※5.J Am Coll Cardiol 2012; 60: 2384-90
文/中村康宏
医師。虎の門中村康宏クリニック院長。アメリカ公衆衛生学修士。関西医科大学卒業後、虎の門病院で勤務。予防の必要性を痛感し、アメリカ・ニューヨークへ留学。予防サービスが充実したクリニック等での研修を通して予防医療の最前線を学ぶ。また、米大学院で予防医療の研究に従事。同公衆衛生修士課程修了。帰国後、日本初のアメリカ抗加齢学会施設認定を受けた「虎の門中村康宏クリニック」にて院長。未病治療・健康増進のための医療を提供している。