夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。月曜日は「健康・スポーツ」をテーマに、野球解説者の山本昌さんが執筆します。
文/山本昌(野球解説者)
いよいよプロ野球シーズンが開幕しました。名古屋は桜も咲いて春を感じる季節がやってきましたね。前回は、シーズン開幕目前の選手がどういった心境でいるのか、そして今シーズン注目の選手やチームを少しですがご紹介しました。今回は、仕事・趣味など日頃の生活で僕が意識をしているセルフマネジメント、モチベーションアップの秘訣をお伝えできたらと思います。
■小さなこと、当たり前なことでも継続して続けることが大切
ここ最近「セルフマネジメント術」や「モチベーションアップ法」などの紹介やセミナーを、いろいろな場所で見聞きすることが多いですね。人それぞれ合う合わないはあると思いますが、僕は日頃の小さな積み重ね、そして何ごとも準備を怠らないことが結果として自分を高めていくことに繋がると思います。
具体的に、僕が日頃から何を心がけているかを少しご紹介したいと思います。
まず、仕事をするうえで一番気を付けていることは「言葉遣い」です。
言葉遣いは、学生時代からしっかり鍛えられてきましたが、プロ野球選手になってからもきちんと意識していました。プロの世界では、自分より年下のメンバーがポジション的に上に来ることもよくあることですから、そういった時もきちんと敬意を表す敬語を使っていました。
現在、テレビ・ラジオ解説などの際は「わかりやすい」「聞き取りやすい」「イメージがしやすい」と思っていただけるような言葉遣いを意識しています。特に、ラジオ解説をさせていただく時は映像がないため、試合をイメージしやすいように、感覚的な言葉はなるべく使わずに、起こっている事実を正確に伝えることに注力をしています。
講演でお話しをする時は、言葉遣いのほかに「時間」も意識しています。それは講演の終了時間です。来場されている聴講者の中には次の予定がある人もいると思いますので、与えられた時間内できちんと話すことが大切です。そのために、話す内容の準備を欠かさずに行なっています。僕は、講演用にノートを付けているのですが、見開き2ページ分で90分くらいの講演内容が話せるようになっています。
もちろん、服装や髪型などの身だしなみは当たり前のことですが、こういった当たり前のことも継続して続けることが大切だと思います。僕が現役時代、キャンプ前のミーティングで星野監督が、
「日本人の髪は黒か白しかいないんじゃ!!」
とチーム全体を一喝されたことがありました。
茶髪や金髪が悪いわけではないのです。星野監督は第一印象が与える影響を考えて、そうチームに喝を入れたのではないかと思います。やはり、身なりや言葉遣いの乱れで、周囲からのマイナスな印象を持たれてしまったら、こんな損なことはありませんよね。
■日々の積み重ねで結果は自らついてくる
モチベーションアップ、といっても何をどうしたらいいの?となりますよね。僕は意識をして気持ちを上げようとしたことはあまりないように思います。もともと、あまりマイナス的な感覚を持ち合わせていないのか、前向きであきらめない性格が幸いしているのかもしれません。
プロ野球界入り後も、ただただ「一生懸命にがんばろう」とそれだけを思っていました。プロで初勝利しシーズン5勝をあげた年、後輩である立浪選手と同等の年俸をもらえるようになりました。その時「プロ野球選手はがんばって結果を出せばこれだけ評価をされるんだ、やらなければ損だ」という、プロとして上を目指す感覚が芽生えました。
同時に、勝てない時も使い続けてくれる監督やチームに対して恥をかかせたくない、裏切れないという思いも生まれました。もちろん、良い時も悪い時も応援してくれるファンの皆さんの気持ちにこたえたい、悲しませたくないという思いも重なり、それらすべてがプロ野球人生32年を支えてくれました。
今思うと、こういったことすべてが僕自身のモチベーションアップに繋がっていたのだと思います。
何ごとも真摯に向き合い、小さなことをコツコツと積み上げていくことで、自ずと結果はついてきます。結果ばかり追いかけて「なんでダメなんだ」「どうしてなんだ」と悲観的になっていてはいつまでも物ごとは好転しません。
プロ野球選手を引退した今、僕には新しい目標があります。
「再びユニフォームを着て日本一を目指したい!」
この気持ちが今の僕の毎日を支えてくれるひとつのモチベーションとなっています。仕事も趣味も「一生懸命頑張る」ことで、いずれ結果がついてくると信じ、これからも僕はがんばりますよ!
文/山本昌(やまもと・まさ)
昭和40年、神奈川県生まれ。野球解説者。32年間、中日ドラゴンズの投手として活躍し、平成27年に引退。近著に『山本昌という生き方』(小学館刊)。