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健康

健康に長生きするための新指標「7つのウェルネス」を知っていますか?【予防医療の最前線】

文/中村康宏

生き方や価値観、健康観、ライフスタイルが様々なものになっている現代において、いったいどのような状態が「健康」なのでしょうか?

今回はいま米国では一般的になりつつある健康についての新しい概念「ウェルネス」と、その7つの要素についてご紹介しましょう。ぜひご自身にあてはめつつ、健康的な生き方について考えるきっかけにしてください。

*  *  *

そもそも英語には、“健康”を意味することばが二つあります。「ヘルス」と「ウェルネス」です。その違いとは何でしょうか?

まず「ヘルス(Health)」について、世界保健機関(WHO)は1948年に「身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であること」と定義しています。つまり簡単に言うと、「ヘルス」とは、病気ではなく、身体的には体力があり、精神的なストレスに上手に対応でき、社会的に豊かな人間関係がある状態とされます。

一方の「ウェルネス(Wellness)」は、こちらも「健康」と訳すことができる言葉ですが、こちらは健康をゴールではなく「手段」と考えるニュアンスがあります。また、病気の治療という範疇を超えて、予防と健康促進に重きを置く考え方です。具体的には、病気の改善・心のケア・社会参加など、7つの視点から見た「健康になるための統合的な方法」を提案するものです。

ではその「ウェルネス」を構成する7つの要素について、順に見ていきましょう。

■1:感情のウェルネス

感情は、生活の中で精神的なバランスを保ち、生活習慣をコントロールする上で重要な役割を果たすものです。近年の研究では、感情のコントロールが脳卒中や心臓病の予防に影響を与えていると考えられています(3)。

ストレスに上手に対処することは、健康促進と病気予防の両方にとって重要な要素です。

■2:知性/認知能力のウェルネス

創造性を追求し、知的好奇心をくすぐる活動は、心を楽しませ知的能力を維持させる方法として確立されています(2)。具体的には、旅行や映画、執筆活動、絵画鑑賞や描画、パズル、大学の講座受講などが挙げられます。

知性や認知能力は、精神状態、口内環境や食事内容などの生活習慣に影響を与えると考えられており、これらの維持は年齢を重ねるにつれて特に意識しなければならないポイントです(4)。

■3:身体のウェルネス

自立した生活をするためには、身体的なウェルネスは必須です。もちろん“病気がない”ことが理想ではありますが、そのためにも「病気にならない予防」(1次予防)、「病気を早く発見する予防」(2次予防)、「病気を悪化させない予防」(3次予防)が特に重要です(5)。

健康を維持し、改善させるような生活習慣としては、十分な睡眠や栄養、上手な感情コントロール、アルコール量の制限、禁煙、医療機関の定期受診などが挙げられます。

■4:職業上のウェルネス

仕事を通して人生の目的や意義を見出し、主体的に人生を選択することは大切な要素であり、「生活の質」に大きく影響し、人生の満足度に大きく寄与します。

人生の満足度が高い人ほど長生きすることが、これまで多くの研究で示されています(6)。仕事には、経験を生かしたボランティアやメンター、趣味を生かした講師なども含まれます(5)。

■5:社会的なウェルネス

具体的には家族や友人、近所の人と交流をもつことです。これは新しい情報に触れたり、精神的な刺激となり、「生活の質」を改善させてくれます。

一方で、対人関係が乏しい社会的に孤立した人は、糖尿病や高血圧になりやすかったり、それらを増悪させるということが研究で判明しています。社会的な孤立は、病気のリスクとさえ考えられているのです(7)。

■6:精神のウェルネス

精神の健康(ウェルネス)とは、生きていく上での意味や目的を持つことによって、健康である実感や世界とのつながりを感じることです。具体的には、自分と向き合う瞑想、信条に基づいた行動、ヨガや太極拳などが挙げられます。

ヨガや太極拳は精神的な安定だけでなく、高血圧や転倒の予防、認知能力の改善などにも効果があると医学的に証明されている(8)。このことからアメリカでは精神が健康に影響を与えるという意識が高く、瞑想やヨガのクラスに通う人も多く、タイチ(Tai Chi)と呼ばれる太極拳も日常的に行われています。

■7:環境のウェルネス

ここでいう環境には、自身の生活環境のみならず、職場環境や対人関係、社会経済状況なども含まれます。ストレスの感じ方は人それぞれですが、自分にあった環境づくりを心がけ、適度なストレスを維持することが肝要となります。

過度のストレスが続くと、うつ病や高血圧のリスクが高まることが知られている(9)。しかし、だからといってストレスを過度に避けて社会的に孤立していても、病気のリスクが上がると考えられています(7)。適度なバランスが大切なのです。

*  *  *

以上、今回は「ウェルネス」という新しい健康の概念についてご紹介しました。これはつまり、健康でいることを目的ではなく手段と考え、より広範囲な視点から健康を見る画期的な概念です。

ウェルネスの7つの要素は「輪」に喩えられ、これらの全てが満たされないと「健康」と言えないとされます。

「健康とは何か?」という問いに、決まった答えはありませんが、個々の状況、価値観、ライフスタイルなどを踏まえて、ご自身にとっての「健康」とは何か、考えてみてはいかがでしょう。それによって日常生活に良い変化が現れ、より充実した人生を送るきっかけになるかもしれません。

【参考文献】
(1) WHO
(2) International Council of Active Aging
(3) Pressman SD, et al. Psychol Sci. 2013
(4) Tomioka K, et al. PLoS One. 2015
(5) 厚生労働省
(6) Boehm JK, et al. Psychol Sci. 2015
(7) Nakamura Y. NYC NORC, 2017
(8) Solloway, et al. Systematic Reviews 2016
(9) Crump C, et al. Heart. 2016

文/中村康宏
関西医科大学卒業。虎の門病院で勤務後New York University、St. John’s Universityへ留学。同公衆衛生修士課程(MPH:予防医学専攻)にて修学。同時にNORC New Yorkにて家庭医療、St. John’s Universityにて予防医学研究に従事。

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