
30~40代半ばのプレ更年期や、40代後半~50代の更年期の女性は「なんとなくの不調」「ちょっとした違和感」を抱くことが多くなります。
なかでも多くの人が困っている悩みは更年期の肥満の症状です。
実は、その不調には漢方薬が役立つことをご存知でしたか?
私の悩みにも漢方薬が役立つのか知りたい! 根本解消する方法が知りたい!
そんな女性たちの疑問を、漢方の専門家に解説してもらいます。
今回は「更年期の肥満」の原因や対処法について、あんしん漢方の薬剤師で、漢方薬製剤の開発研究に携わる碇純子さんに教えてもらいました。
Q.夫から「肥満体型」と指摘され……いきなり太りやすい体質になって困っています

奈津子さん、49歳からご質問をいただきました。
「最近、昔に比べて体重がかなり増えています。若い頃はそこまで太っていたわけではないのですが、ここ数年で明らかに太りやすくなり、主人からも『肥満体型だよ。もう少し痩せたら?』と心無い言葉が……。
でも、鏡で自分の姿を見ると『肥満と言われても仕方ないかな』と感じてしまいます。やっぱりこれって更年期によるものなのでしょうか?」
ご質問ありがとうございます。昔は太りやすい体質ではなかったという奈津子さん。体型の変化は気になりますよね。奈津子さんがおっしゃる通り、その変化は更年期症状の可能性があります。
しかし、きちんと適切な治療やセルフケアを行えば、更年期の肥満の症状の緩和をめざせます。まずは、更年期の肥満の原因をしっかり把握して対処しましょう。
更年期の肥満の原因

まずは、更年期の肥満の主な3つの原因について見ていきましょう。
基礎代謝の変化
加齢による基礎代謝の変化で、太りやすい体質になる場合があります。基礎代謝とは、生命活動に必要なエネルギーのこと。血液循環や呼吸など、生命維持のために消費されるエネルギーです。
加齢によりこの基礎代謝量は徐々に低下していき、若い頃よりも必要なエネルギー量自体が低下していきます。そのため、若い頃と食事量が変わらないだけでも、太りやすくなってしまうのです。
筋肉量の低下
筋肉量は加齢とともに減少していきます。とくに、女性はもともと男性に比べて筋肉量が少なく、脂肪が多いため、太りやすい傾向にあります。
さらに、活動的な生活から家で過ごす時間が増えると、慢性的な運動不足に。その結果、筋肉量の低下を招き、基礎代謝の低下や体型変化の一因になることがあります。
女性ホルモンの減少
更年期の女性は、女性ホルモンのエストロゲンが急減。エストロゲンとは、女性らしい体作りをサポートし、自律神経など体を調整する重要な役割を持つ機能にも関わっています。
エストロゲンは血液中の悪玉コレステロールを調整する働きを持っていますが、エストロゲンが不足することで脂質代謝機能が低下し、結果として太りやすくなる傾向があります。
ホルモンバランスの崩れが原因で起こる肥満が続く場合は一度診療を

まずは肥満の原因を特定することが重要です。更年期のエストロゲンの低下による肥満の場合は、更年期症状を緩和する方向でケアを行っていきますが、それ以外の原因が肥満を引き起こしていることがあります。
たとえば、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患による肥満です。疾患による二次性肥満は、普通の肥満とは治療方法も異なります。肥満の原因を特定するには、まず内科や肥満外来を受診しましょう。
更年期の肥満を改善するセルフケア

病院を受診して、肥満の原因が更年期由来かつある程度軽度な場合、セルフケアを行うことで肥満を緩和できる可能性があります。ここからは、肥満のセルフケアの4つの方法について解説します。
1.筋肉量をアップさせる
筋肉量を増やすことで代謝量を上げ、痩せやすくしましょう。運動は脂肪燃焼にもつながり、健康維持にも役立ちます。
運動方法としては、有酸素運動と無酸素運動をバランスよくとり入れると、筋肉量が増えやすいといわれています。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動、スクワット、ヒップリフトなどの無酸素運動の両方を、無理のない範囲で行いましょう。
2.食事の摂り方を工夫する
食事は1日3食、規則正しく食べましょう。朝食を抜かず、間食や夜食は控えるのも大事です。また、咀嚼もとても重要。きちんと噛んで食べることで、唾液を分泌し、消化酵素が働きやすくなります。食べものを細かく咀嚼することで、体内で吸収しやすくなり、胃腸の負担が減る点もメリットです。
また、食物繊維が多く含まれる野菜は、糖質や脂質の分解や吸収を遅らせ、食後の血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。
3.食べたもののレコーディング
食事のすべてを記録するレコーディングダイエットは、ご自身の食生活を見直すのに最適な方法です。口にしたものをすべて記録することで、食事傾向を客観視できるだけでなく、食べ過ぎに気づけたり、生活習慣そのものを改善するきっかけになったりします。
レコーディングダイエットは、食後すぐにメモすることが大事です。また、食べた量、カロリー、時間も細かく記録しておきましょう。
4.漢方薬を試す
「不調を根本から改善したい」
「いろいろと試したが症状が改善しない」
「西洋薬は一度飲み始めたら、やめられないのではないかと不安」
そんな方には、医薬品として効果が認められている漢方薬がおすすめです。
漢方薬は自然にある植物や鉱物などの「生薬」を組み合わせて作られているため、 一般的に西洋薬よりも副作用が少ないといわれています。
また漢方薬が目指すのは苦痛を和らげるための対症療法ではなく、根本的な解決です。体質の改善に働きかけることのできる漢方薬は、「同じ症状を繰り返したくない」という思いに応えてくれます。
「バランスのとれた食事や運動などを毎日続けるのは苦手」という方も、症状や体質に合った漢方薬を毎日飲むだけなので、手間なく気軽に継続できます。
更年期の肥満対策には、「脂肪の吸収を抑え、燃焼をサポートする」「血流をよくして基礎代謝を高める」「自律神経を調整してストレスを和らげ、過食を緩和する」といった作用を持つ生薬を含む漢方薬を使用しましょう。
更年期の肥満対策におすすめの漢方薬
・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん):老廃物を排出するとともに、脂質代謝を高め、余分な脂肪の燃焼を促進します。
・大柴胡湯(だいさいことう):自律神経のバランスを整えて脂肪代謝を促し、ストレス過食に働きかけます。
ただし、漢方薬を選ぶ際にはご自身の体質に合ったものを選ぶことが大切です。体質に合っていない場合は、効果が出ないだけでなく、副作用が起こることがあります。
購入時には、できる限り漢方に精通した医師や薬剤師等にご相談ください。
「お手頃価格で不調を改善したい」という方には、医薬品の漢方薬がおすすめ。スマホで気軽に相談できる「あんしん漢方」のような新しいサービスも登場しています。
AI(人工知能)を活用した「オンライン個別相談」サービスでは、漢方のプロが体質に合った漢方を見極めてくれます。お手頃価格で自宅まで郵送してくれるため、手軽で便利です。
更年期由来の肥満は、まず生活習慣改善から

更年期の肥満は、女性ホルモンのエストロゲンが急減することで起こる、更年期症状の不調の一種です。ただし、ほかの重大な病気が隠れている場合もあるので、急に肥満体質になってしまった場合は、なるべく早く内科などを受診し、医師の診断に従ってください。
更年期由来の症状であれば、食事や運動など、日々の生活習慣を見直したり、食事内容の記録を行ったりして、痩せやすい体質に変えていきましょう。
<この記事の監修者>

碇 純子(いかり すみこ)
薬剤師・漢方薬生薬認定薬剤師
/ 修士(薬学) / 博士(理学)
神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。
世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=221432a9sera0243&utm_source=sarai&utm_medium=referral&utm_campaign=250301
イラスト:にゃたり
