コロナ禍で控えられていた歓送迎会が復活し、この春は飲酒をする機会が増える人も多いのではないでしょうか。お酒は健康を害するものと思われがちですが、近年は国内外の疫学研究により、「酒をまったく飲まない人より、適量飲酒を習慣にしている人の死亡率のほうが低い」ということが報告されました。これは、まさに「酒は百薬の長」という酒飲みにとって心強い格言が医学的に証明されたというエポックメイキングな出来事かもしれません。

とはいえ、やみくもに飲酒をしてしまったら病気へとつながることも事実です。『医者が教える もっと! 体にいい酒の飲み方』(宝島社)では、酒をこよなく愛する医師たちが、一生健康のまま楽しめる「酒の飲み方」、体に良い「つまみの選び方・食べ方」など、酒好き必読の新常識を指南しています。今回は、「体と脳を守る栄養学」について紹介します。

長引く二日酔い、翌日のだるさの原因は、ビタミンB群不足にあった!

<監修>
溝口徹(みぞぐち・とおる)
福島県立医科大学卒業。横浜市立大学附属病院、国立循環器病センター勤務を経て、1995年に溝口クリニック(現・辻堂クリニック)を開設。2003年には日本初の栄養療法クリニックである新宿溝口クリニック(現・みぞぐちクリニック/東京・八重洲)を開設。オーソモレキュラー栄養療法(分子整合栄養医学療法)に基づくアプローチで治療を行ない、患者や医師向けの講演会も行なう。著書に『栄養療法医が初めて明かす お酒の「困った」を解消する最強の飲み方』(青春出版社)など多数。

*  *  *

アルコールによる栄養トラブルの代表格が「ビタミンB群の不足」です。ほうっておくと病気につながるのはもちろん、悪酔いや重度の二日酔い、翌日の疲れの原因にもなります。ビタミンB群とは、ビタミンB1、B2、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、B6、B12、葉酸さん、ビオチンの8つの成分の総称です。これらはお互いに助け合いながら働くので、単独よりも複合体で摂ることが理想とされています。

飲酒によってビタミンB群の不足が起こるのは、アルコールを摂取すると「ビタミンB1の吸収が抑制される」ことに加え、「尿からの排出量が増加する」から。つまりアルコールを飲めば飲むほど、ビタミンB1は体内から消えていくのです。さらに、飲酒時の食事の内容もビタミンB1不足を加速させます。ポテトチップスや柿の種といった定番のおつまみ、〆のラーメンなどは糖質にかたよっており、ビタミンB1を上手に摂ることができません。しかも、糖質の代謝によってビタミンB1が大量に消費されるのです。供給不足のなか、消費量だけが増えていくビタミンB1。酒を飲む人ほど、日頃から積極的な摂取が必要なのです。

もう1つ、飲酒によって大量消費されるのがビタミンB群のうちのナイアシン(B3)です。アルコールが分解される過程では、「アルコール脱水素酵素(ADH)」と「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)」の2つが活躍しますが、この2つは「補酵素NAD」がないと働くことができません。そしてNADは、ナイアシン(B3)がないと作れないのです。また、NADさまざまな代謝で使用される人気の補酵素です。空腹の状態で飲酒した場合、体内にNADがあったとしてもアルコールの代謝には回りません。

こういった理由から、ナイアシンが不足しているとアルコールの代謝は遅々として進まず、悪酔いや、なかなか治まらない二日酔いの原因となるのです。ナイアシン不足によるNAD不足はエネルギー代謝にも影響を及ぼすため、飲酒翌日の抜けない疲れにもつながっていきます。

ナイアシン:アルコール代謝を助ける栄養素

飲酒習慣のある人は、ほぼナイアシン(B3)不足といっても過言ではありません。アルコールをスムーズに代謝するために、ナイアシンをビタミンB群と一緒に普段から摂っておきましょう。

ナイアシンはカツオの刺身や豚レバー、エリンギ、ピーナッツなどに多く含まれています。また、ナイアシンは必須アミノ酸の「トリプトファン」を材料に体内でも作られるので、大豆製品やチーズといったトリプトファンが多い食材もおすすめです。普段の食事で意識してナイアシンを摂取しながら、飲酒前にサプリメントで補給するのもよいでしょう。また、ナイアシンは体内で、必須アミノ酸「トリプトファン」からも作られるため、トリプトファンが豊富な「大豆製品」「チーズ」「牛乳」「ヨーグルト」などを摂取するのもおすすめ。

ナイアシンが足りていると「お酒を飲みたい」という欲求が抑えられる傾向にありますが、アルコール依存症の人がナイアシンを摂取する場合は、必ず医師に相談のうえ、指示を仰いでください。

<ナイアシン1日の摂取推奨量>
男 性:20~49歳 15mg、50~74歳 14mg
女 性:20代、50~74歳 11mg、30~49歳 12mg

ビタミンB群:アルコール代謝を助ける栄養素

ビタミンB群は、ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン(B3)、パンテトン酸(B5)、ビオチン、葉酸の総称で、アルコールだけでなく、あらゆるものの代謝に必要な栄養素です。ストレスがたまっている、疲れやすい、集中力が続かない、イライラする、肩こりがひどい、口内炎ができやすい、風邪をひきやすいなどの症状がある人は、ビタミンB群不足の可能性があります。飲酒習慣の有無にかかわらず、積極的に摂っておくべきです。

「ビタミン」と聞くと野菜に多いイメージがありますが、ビタミンB群は動物性タンパク質に多く含まれています。豚肉はビタミンB1、うなぎはB1やB2、牛レバーはB6やB12が豊富なので、おすすめの食材です。豚肉はしょうが焼き、酢豚など、健康効果が高い食材(しょうが、酢)も効率よく摂れるので、積極的に取り入れてみましょう。お酒とも好相性です。

<ビタミンB群1日の摂取推奨量>
男 性:20~49歳 1.4mg、50~74歳 1.3mg
女 性:20代~74歳 11mg、75歳以上 0.9mg

Column:酒飲みの寿命を縮めるNGアクション(2)

どんなに酒やつまみにこだわっても、これらの行動をとってしまったら台なしに。心あたりがある人は、命を守るために今日からやらないよう注意を!

<監修>
秋津壽男(あきつ・としお)
東京都品川区戸越銀座・秋津医院院長。日本内科学会認定「総合内科専門医」。
大阪大学工学部発酵工学科で酒造りを学んだあと、和歌山県立医科大学循環器内科勤務などを経て現職。テレビ東京「主治医が見つかる診療所」レギュラー出演のほか、著書も多数。ワインと健康に関する功績により、日本ソムリエ協会から名誉ソムリエの商号を受ける。

*  *  *

ウコンへの頼りすぎは実は危険! 肝障害がある人には毒になる

ウコンの成分「クルクミン」には肝機能の向上効果がありますが、「脂肪肝といった肝機能に問題のある人が大量に摂取すると肝機能に障害が起きる危険がある」と報告されています。肝臓の調子が悪いときは、アルコールの分解や修復に必要不可欠であるタンパク質、なかでも胃にやさしい食品を摂ることも有効です。

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医者が教える もっと! 体にいい酒の飲み方
監修/栗原毅、滝澤行雄、秋津壽男、栗原丈徳、溝口徹
宝島社 891円

 

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