暮らしを豊かに、私らしく

日本は睡眠に問題を抱える人が多く、睡眠不足によって失われる経済効果も発表されるなど、大きな社会問題になっています。最近では睡眠の質の向上を目指す製品が多く販売されたり、スマートウォッチなどで睡眠データをとる人が増えていたりと、睡眠時間の確保だけではなく、睡眠の質に関心を寄せる人が増加しています。

「睡眠負債」のメカニズムや睡眠法などの著書を手掛ける、脳神経科学者の枝川義邦先生は、「夜にスマホを触ることで浴びるブルーライトや、メール・SNS等のやり取りで交感神経が優位に働くことを日常的に行ってしまっていることが、睡眠の質の低下に繋がっている可能性が高い。寝る前や寝起きの習慣を見直して、深い睡眠の実感度が高い『ディープスリーパー』になることが、睡眠課題の解決だけでなく、日中の高いパフォーマンスにも繋がるのではないか」と指摘されています。

今回は味の素株式会社が実施した「睡眠と日中の活動、自分らしさに関する意識調査」の調査内容とともに、枝川先生と、快眠セラピスト・睡眠環境プランナーの三橋美穂先生に睡眠についての注意点や改善点を伺いました。

「日頃、ぐっすり眠れていない」と回答した中で、日中のパフォーマンスの高さに満足していた人はわずか2割

【表1】

「日頃、ぐっすり眠れている」と実感している人の70.7%が「自身の日中のパフォーマンスの高さ」に満足と回答。それに対して、「日中、ぐっすり眠れていない」と回答した人の中で、「自身の日中のパフォーマンスの高さ」に満足と回答したのはわずか20.4%と、50.3ポイント差が出る結果に。深い睡眠の実感が日中のパフォーマンスの高さに繋がる可能性があることがわかりました。

枝川先生「ぐっすりと眠れていることで、日中も存分にパフォーマンスを発揮しているという自覚に繋がるのでしょう。日中のパフォーマンスが充分に上がらないプレゼンティーイズムという状態は睡眠の状況と密接に関わっていることが、この調査にも反映されていたようです」

三橋先生「ぐっすり眠れず脳機能が回復しないと、ケアレスミスが増えて作業効率が低下します。残業が増えて、ぐっすり眠れない悪循環に」

【表2】

続いて、「日頃、ぐっすり眠れている」と回答した人と「日頃、ぐっすり眠れていない」と回答した人それぞれに、どの程度自分らしく生きることができていると思うかと複数の設問で比較集計したところ、各項目で大きなポイント差をつけて、深い睡眠の実感者のほうがポジティブな回答を多くしていました。

三橋先生「ぐっすり眠れないと前頭前野の働きが低下するので、意欲がなくなり、あきらめやすくなります。睡眠は自己肯定感を高め、夢を叶える近道です」

20~40代の睡眠不足の原因・理由、1位は「なかなか寝付けない」

【表3】

睡眠不足を日頃から感じているかという質問には、6割(64.1%)が「睡眠不足」を感じると回答し、「睡眠不足」を感じていない人のほうが少ない結果となりました。
また、睡眠不足になっている原因・理由について、20~40代は「なかなか寝付けない」、50~60代は「夜中にトイレに起きてしまう」が一番多いこともわかりました。

枝川先生「時代とともにライフスタイルが変わり、夜の過ごし方も変わってきています。それが眠りにも影響を及ぼしていることがうかがえる調査結果でしょう」

【表4】

続いて、睡眠時間と睡眠の質のどちらを重視しているかを聞いたところ、「睡眠時間を延ばすより、睡眠の質を改善したい」と7割強(75.6%)が回答し、睡眠の質を重要視する人が多いことがわかりました。

三橋先生「睡眠は質(深さ)と量(長さ)の掛け合わせ。どちらも大切ですが、時間をとることができない人が多い現状があります。でも質を高める工夫なら誰にでもできます」

【表5】

最後に、【表1】で「日頃、ぐっすり眠れている」と回答した543人に「睡眠時間の確保」以外に睡眠の質を上げるための取り組みを伺いました。
「お風呂にゆっくり浸かる」が32.0%と一番多く、次いで「普段の食事バランス・種類に気を付ける」が27.4%、「スポーツ(散歩やウォーキングも含む)をする」が19.0%の結果となりました。

三橋先生「日頃からぐっすり眠れていると実感できている人たちは、睡眠時間の確保だけでなく、しっかりと睡眠の質に向き合った活動ができていることで、睡眠と人生の満足度が高まっているのだと思います」

脳神経科学者 枝川先生に聞く。現代社会における睡眠との向き合い方

深い睡眠の実感度が高い「ディープスリーパー」になることが重要

今回の調査結果にも見られるように、日頃から睡眠への満足感が不足している方は多く、睡眠時間を確保していても眠りが浅いと感じるなど、睡眠の質を改善したいと考える方が増えていると感じています。その背景には、インターネット社会が日常となったことが挙げられます。興味を惹くコンテンツに囲まれていることや、就寝時刻が近づいても、まだ眠くないからとスマートフォンを使用して、寝付けなくなることや睡眠の質が低下するという悪循環を生んでいるケースが散見されます。
寝る前の習慣は、眠ってすぐに現れる“深睡眠”に大きく影響しています。睡眠の質に向き合い、深い睡眠の実感度が高い「ディープスリーパー」になることが、日中の高パフォーマンスにも繋がり、心に余裕をもった自分らしい生き方にも繋がるでしょう。

枝川 義邦(えだがわ よしくに)先生
脳神経科学者。1998年、東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了、博士(薬学)。2007年、早稲田大学ビジネススクール修了、MBA。早稲田大学スーパーテクノロジーオフィサー認定、2017年 ユーキャン新語・流行語大賞を「睡眠負債」にて受賞。一般向けの著書は『 ぐっすり眠れる睡眠の本 「睡眠負債」を返済して自分史上最高の眠りを手に入れる! 』 (宝島社)など。

快眠セラピスト・睡眠環境プランナー 三橋先生に聞く。「ディープスリーパー」になるための4つの秘訣

1.目覚まし時計をオフにするだけでなく、 体内の“目覚めスイッチ”をオンにしよう

朝の目覚めが悪い、と悩んでいる方は、体内にある“目覚めスイッチ”がオンになっていないかもしれません。目覚めスイッチをオンにする方法、それは太陽の光を浴びること。午前中に30分程度、太陽光を浴びることで、目覚めのスイッチが入るだけでなく、夜になって眠りのためのホルモンであるメラトニンが分泌されるようになり、朝すっきり、夜ぐっすりの「ディープスリーパー」に近づきます。

2.入眠後3時間以内にあらわれる「深睡眠(質の高い睡眠)」を意識しよう

入眠後3時間以内にあらわれる「深睡眠」は、熟眠感が増して、溜まった疲労感の解消や翌日の眠気の改善、作業効率の向上も期待できます。この「深睡眠」のポイントは、就寝前、40度程度の少しぬるめのお風呂に入ることです。一旦、体温を上げておくことで、就寝時に体の中心部の温度が下がり、スムーズに「深睡眠」がもたらされることが期待できます。

3.起きる時刻を意識しよう(自己覚醒法)

就寝時に「明日は何時に起きる」と意識するだけで、目覚める1時間ほど前から覚醒に関わるホルモンの分泌が増えて、自然に起きられるようになります。短時間睡眠でも日中の覚醒度や作業効率が高いという報告があり、睡眠の質が高まっていると考えられます。8割の人は1週間程度で習得できるので、練習してみてください。

4.無意味なことで頭の中をいっぱいにしよう

眠れない原因の1つは、頭の中の考えごとが次々浮かんでくることです。その考えごとを、無意味なことに置き換えましょう。数字を100から1つずつ減らしながら、ゆっくり数えてみてください。カウントアップは簡単なので、500、1000と数字が増えていくと、「いつまで続くのだろう」と不安や緊張が高まるので逆効果。カウントダウンは集中力がいるので、雑念が入り込む余地がありません。単調な作業が退屈になってきて、いつの間にか眠ってしまいます。

三橋 美穂(みはし みほ)先生
快眠セラピスト・睡眠環境プランナー。寝具メーカーの研究開発部長を経て独立。これまでに1万人以上の眠りの悩みを解決してきており、とくに枕は頭を触っただけで、どんな合う枕がわかるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手がける。主な著書に『眠トレ!ぐっすり眠ってすっきり目覚める66の新習慣』(三笠書房)ほか多数。

睡眠と日中の活動、自分らしさに関する意識調査
<調査概要>
名称:「睡眠と日中の活動、自分らしさに関する意識調査」
対象:全国の20代~60代の男女1,000名(20代、30代、40代、50代、60代の性、年代別に100名)
期間:2022年10月12日~13日
方法:インターネット調査

文/ふじのあやこ

 

花人日和 Online Store

花人日和
花人日和の通販

暮らしが華やぐアイテム満載

ランキング

人気のキーワード

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

公式SNSで最新情報を配信中!

  • Instagram
  • LINE
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店