文/鈴木拓也

写真はイメージです。

超高齢化社会をむかえた日本では、「ひとり暮らし」の高齢者も増えている。

内閣府の統計では、2020年の時点で約672万人であった高齢者ひとり世帯は、2030年には800万人近くに増加するという。

高齢者の孤立は社会問題になりつつあるが、健康面で大きな懸念を抱いているのは、管理栄養士の森由香子さん。

森さんは、「もっとも注意したいのが食生活の乱れです」と前置きし、ひとり暮らしだと料理を作るのが面倒だからと「簡単な食事ですませて」しまう傾向に警鐘を鳴らす。また、世にあふれる健康情報を自己判断でとりいれ、自分に適していない食生活をしている人も少なくないとも。

そうした、シニアが陥りがちな食生活の改善策を記したのが、著書『100年長生き食:料理が苦手でも、ひとり暮らしでもできる!』(Gakken)。森さんは本書において、ひとり暮らしでも無理なくできる食生活の手引きを丁寧に解説している。

「ちょい足し」でたんぱく質を補う

森さんの提案する食生活は、ハードルは低くしつつ、必要な栄養はとれる自炊がメイン。

例えば「ちょい足し食事術」。インスタント食品やレトルト食品などに、具材をちょい足しするだけで栄養がアップするという方法だ。

カップ麵だと、「お湯を注いだ後にカニ風味かまぼこ(1~2本)をほぐしてから入れます」といったふうに。足す食材は、ゆでエビ、チキンサラダ、豆腐など、魚、肉、大豆製品が多い。これは、たんぱく質の積極的な摂取が主眼となっているため。粗食に傾きがちなシニアは、たんぱく質が不足しやすく、それでサルコペニアといった不調の原因になるのを予防するためのものだ。本書にあるちょい足し食材は、たんぱく質の含有量が多く、食が細くても無理なくたんぱく質摂取量を増やせるようになっている。

ひと皿だけで低栄養が防げる「主食二菜スープ」

もう少し手間をかけ、よりおいしく、豊富な栄養が摂れる「アレンジ料理」や「主食二菜スープ」といったレシピもある。

一例として「野菜入りコンソメスープを使った主食二菜アレンジ」を紹介しよう。まず主食として以下どれか1品を選ぶ(量はお好みで)。

・ごはん
・オートミール
・麺

次に主菜として以下どれか1品を選ぶ(量はお好みで)。

・ささみ缶
・ツナ缶
・サバ缶
・ソーセージ
・うずらのたまご(水煮か缶)
・温泉たまご
・生たまご
・ゆでたまご
・豆腐
・生揚げ
・焼き豆腐
・がんもどき
・ちくわ

そして、ベーススープの材料(3食分)を用意する。

・冷凍洋風野菜ミックス(または市販のカット野菜かお好みの野菜)300g
・コンソメ(顆粒)適量
・塩適量
・こしょう適量
・水5カップ

※「冷凍洋風野菜ミックス」とは、ブロッコリー、カリフラワー、ヤングコーンなどの洋風野菜がミックスされたものを指す。

食材が準備できたら、以下の要領で作る。

(1)鍋に水とコンソメ、洋風野菜ミックス(または市販のカット野菜かお好みの野菜)を入れて火にかける。

(2)ひと煮立ちしたら、塩・こしょうで味を調える。これで3食分のベースとなるスープが完成。このベーススープを3等分にしておく。

(3)3等分したベーススープの1食分を鍋に入れ、主菜の食材と主食の食材の中から1品ずつ選んでくわえる。

(4)主食にごはんを選んだ場合はひと煮立ちさせ、麺またはオートミールを選んだ場合は、表示どおりの時間で火を通せば完成。乾麺は短くカットして煮込むと食べやすくなる。

ちなみに、ベーススープのだしをコンソメから和風だしに、冷凍洋風野菜ミックスを冷凍和風野菜ミックスにすれば、和風のスープにもできる。

朝食を抜いてはいけない

さらに、何を食べるかだけでなく、いつどのように食べるかについてもアドバイスがなされている。

まず、「決まった時間に食事をする」。体は、食べものが入ってくる時間を覚え、消化の準備態勢を整えるようになる。そして、1日3食がすすめられているが、起きてから2時間以内に「朝食は必ず食べる」ようにとも。その理由について次のように記されている。

朝食を抜いてしまうと、体が休息モードから活動モードへなかなか切り替わらず、1日中なんとなく体がだるい、頭がボーッとしているといった状態に陥ることもありますので、朝食は必ず食べるようにしてください。
高齢者にありがちな朝食と昼食を一緒にする食事スタイルですが、体のリズム(体内時計)が崩れてしまうので絶対に避けてください。(本書134~135pより)

そして昼食は、朝食の消化が終わる3~4時間後に摂るようにする。また、このときの主菜は、朝食で食べたものとは異なる食品を選ぶことが大事。最後の夕食は、就寝の3時間前には終えるようにし、胃腸に負担をかけないよう、3食の中で最も軽い食事とするよう心掛ける。

* * *

森さんは、「100年長生き食」に必要なのは料理の腕よりも「知識」であると説く。知識といっても、上で取り上げたように、それほど難しい内容ではない。できることから始めてみるとよいだろう。

【今日の健康に良い1冊】
『100年長生き食:料理が苦手でも、ひとり暮らしでもできる!』

森由香子著
Gakken

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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。

 

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