暮らしを豊かに、私らしく

文・写真/坪井由美子(海外書き人クラブ/海外プチ移住ライター)

どんどん進化を続けるソウル。高層マンションが急増し景観も変貌。

2023年、マルタ共和国に続くプチ移住(※)第2弾は、いま世界中が注目する韓国へ。渡韓を重ねるたびにいつか暮らしてみたいなと思っていたのですが、この秋に思いきって決行。マルタではほんのプチ留学でしたが、今回は大学付属の韓国語学校でちょっとまじめに学ぶつもりです。ハングルは全く読めない状態からのスタート。さて、どうなることか……大変なエピソードもまじえて、リアルな体験記を綴っていきたいと思います。

韓国との出会いと縁

どこか懐かしさを感じるソウルの市場。

韓国ドラマ『冬のソナタ』が日本で放送されて、ヨン様がブレイクした第1次韓流ブームが起こったのは、今から20年前のこと。私が2泊3日のツアーで初めて韓国を訪れたのは、それよりも前の1990年代中頃。当時は日本よりもずいぶんと物価が安く、繁華街もどこかのんびりとした雰囲気でした。市場の賑わいやそこで働く元気なおばさんたちは、子どもの頃に暮らした関西の下町にも似ていて、初めてなのにとても懐かしく感じたのを覚えています。

おいしさに震えたカンジャンケジャン(カニの醤油漬け)。テーブルいっぱいに並ぶおかずが嬉しい。

私が何より魅了されたのが、韓国料理。あつあつの石焼きビビンバやハッとするほど辛いキムチチゲ、滋味あふれる味わいのお粥、付け合わせで出てくる何種類ものパンチャン(小さなおかず)……食べる物すべてが新鮮でおいしく、すっかり虜に。その後も何度か渡韓しましたが、2003年にドイツに移住することになり韓国は遠い国になってしまいました。

ですが意外にも、ドイツでは韓国を身近に感じることがたくさんあったのです。日本やアジアの食材を調達する時は韓国系スーパーへ行き、友人と外食する時はもっぱら韓国料理のレストランへ。仕事を通じて韓国の友人、知人もできました。韓国人のルームメイトと暮らしたこともあり、一緒に料理を作ったりも。自著『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)でも韓流レシピを多数掲載しました。

2019年春の明洞。世界中からやってくる観光客で大賑わい。

数年前、日本へ一時帰国する際に韓国を再訪。約20年ぶりに訪れたソウルは、別の国かと思うくらい進化していました。この時に人生の転機となるような出来事があり、韓国は私の中でますます大きな存在になっていきました。そして翌年の一時帰国の際も渡韓。その翌年も予定していたのですが、出発前日にキャンセルすることに。突然のコロナ禍で、世界は完全にストップしてしまったのでした。

韓国留学を決めた理由

おいしい屋台が集まる広蔵市場は活気いっぱいでワクワク。

そしてようやく世界が動き始めた2023年、私自身も動くことにしました。色んな国で暮らしを体験しながら発信していきたい。残りの人生で挑戦してみよう、とまずプチ移住してみたのがマルタ共和国です。体験記はサライ.jp『花人日和』(https://serai.jp/kajin)でも連載させていただきました(※)。

コロナ禍を経てソウルの友人たちと再会。近いうちに住んでみようと決意。

マルタ生活の後、5月に日本に帰国する際にソウルを経由し、アパートを借りて2週間ほど滞在しました。数年ぶりに友人たちと再会し、大好きな韓国料理を食べたり市場をめぐったりしていたら、むくむくと元気が湧いてきたんです。理屈抜きで心も身体も喜んでいるのを感じました。

それまではいつか暮らしてみたいとぼんやり考えていたのでしたが、もう実行しない理由は見当たりません。近いうちにしばらく暮らしてみよう! 、せっかくだから韓国語も学んでみよう! と決意しました。

韓国留学の準備

今回は日本のエージェントは使わず、個人で手配することに。ソウルの語学学校について調べてみると、一般的に4学期に分かれていて1学期(10週間)単位で留学できるようでした。時期的に秋学期になりそうだけれど、冬はドイツで予定があるのでそれまでに終了する必要があります。日程と立地を条件に、さほど迷わず学校を決定。もう少し調べるべきだったかなと後になって思うのですが……。学校の話はまた後日詳しくお伝えしたいと思います。

韓国で留学する場合、滞在先にはいくつかの選択肢があります。

コシウォンやコシテルは学生街のビル内にあることが多い。

・寄宿舎:語学堂(大学付属の語学学校)の寮。
・ワンルーム:家具やキッチンなどが揃ったウィークリーマンションのようなタイプ。一般的に1年~長期の契約。
・コシウォン:韓国の学生や受験生が試験勉強のために借りる3畳程度の部屋でキッチンは共同。ホテルのように設備が整ったコシテル(コシウォン+ホテル)と呼ばれるタイプも。
・下宿やホームステイ、シェアハウスなど

最近はワンルームが人気らしいですが、私は現地の普通の暮らしを体験することが一番の目的だったため、最初から下宿の一択でした。韓国のオンマ(おかあさん)の家庭料理がどうしても食べたかったのです。

滞在先が決まらないまま韓国に上陸

いざ韓国へ。住むところは見つかるのでしょうか。

韓国の友人によれば、下宿のオーナーは年配の方が多いため情報はほとんどインターネットには出ておらず、大学の近くを歩いて探すのが一般的とのこと。とにかく韓国に来てから実際に見て回るしかないと言われ、最初の数日は学生街のホステルに泊まって下宿探しをすることに。

とはいえ、そんなに簡単に見つかるものなのだろうか? 見つからなかったらどうしよう……。不安をいっぱい抱えたままソウルにやってきたのでしたが、結果からお伝えしますと、やはり思ったとおり、いや思った以上に大変だったのです。果たして住むところは見つかるのでしょうか……。次回に続きます!

* * *

※【50代でプチ移住&大人留学】
第1回 移住の準備 https://serai.jp/kajin/1130064
第2回 語学学校の様子 https://serai.jp/kajin/1140334
第3回 マルタのグルメ・自炊編 https://serai.jp/kajin/1147458
第4回 マルタのグルメ・外食編 https://serai.jp/kajin/1148270
第5回 マルタの観光名所を全部まわった私のお気に入りの場所 https://serai.jp/kajin/1155135

文・写真/坪井由美子
ライター&リポーター。ドイツ在住10数年を経て、世界各地でプチ移住しながら現地のライフスタイルや文化、グルメについて様々なメディアで発信中。著書『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

 

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