文/鈴木拓也
スーパー・コンビニにある食材でOK
中国伝統医学の考え方にもとづき、健康改善に効果があるとされる「薬膳」。
旬の高級食材を使った、手のかかる料理というイメージがあるが、実は案外手軽に作れる。
そう説くのは、国際中医薬膳師で「薬膳アテンダント」として活躍する池田陽子さんだ。
池田さんが提唱するのは「ゆる薬膳。」。スーパーやコンビニで普通に売っている生鮮食品、缶詰、惣菜を活用して作る薬膳をそう呼んでいる。
池田さんによれば、重要なのは、体調・体質に合わせて必要な食材を摂る、あるいは不必要なものを控えるという視点。このポイントをふまえておけば、あとは自由自在という。
そうしたコンセプトのレシピを網羅したのが、著書『女40歳からの体調を整える 秒速「ゆる薬膳。」』(青春出版社)だ。
本書で取り上げるのは、馴染みの食材で手早くできる料理ばかり。でありながら、美容の悩みや体の不調を和らげるというから、試してみない手はない。参考までに、本書から3つのレシピを紹介しよう。
「ひじき、ツナ、ほうれん草の育毛サラダ」
頭髪のボリュームが寂しくなりはじめる中年期。中医学の理論では、髪は「血余」と呼ぶが、これは「血(けつ)」の余りを意味する。血とは、血液を含め栄養を与える体液全般を指すが、加齢などで不足すると髪はやせ、抜けていく。
池田さんが、血を補う食材としてすすめるのは、ほうれん草。これをメインに、育毛に良い食材をさまざま組み合わせたのがこちらのサラダ。
【材料(2人分)】
・サラダほうれん草:1把
・ツナ缶(小):1/2缶
・ひじきの煮物(市販品):80g
・黒すりごま:大さじ1
・ドレッシング―レモン汁:大さじ1、オリーブオイル&酢:各大さじ1/2、粒マスタード:小さじ1、にんにく(すりおろし):少々
【作り方】
ひじきの煮物とツナ缶の身を混ぜ、器に食べやすく切ったサラダほうれん草とともに盛りつける。混ぜ合わせたドレッシングをかけ、黒すりごまをふる。
「トマトとごぼうのイタリアンサラダ」
いわゆる中年太りも、薬膳で改善することが可能だという。池田さんによれば、太りやすい体質には、「熱でぶ」「血巡り不良でぶ」「気巡り不良でぶ」「気不足でぶ」の4タイプあるという。
「トマトとごぼうのイタリアンサラダ」は、「熱でぶ」タイプに有効。飲み過ぎ食べ過ぎで、過剰な老廃物が体内で熱を放ち、暑がりでのぼせやすいのがこのタイプ。トマトは、「体の余分な熱を冷ますとともに、胃の熱を鎮めて過剰な食欲をストップさせる」とし、ごぼうも同様の働きがあるそうだ。
【材料(2人分)】
・きんぴらごぼう(市販品):60g
・トマト:1/2個
・オリーブオイル:大さじ1
【作り方】
ボウルにきんぴらごぼう、食べやすく切ったトマトを入れ、オリーブオイルを加えて全体を混ぜる。
「ぎんなんと長いも、くるみのバターめんつゆあえ」
こちらは頻尿によく効くレシピ。中医学では、頻尿は「腎(じん)」の弱りが原因だという。「腎」とは、「人の成長や発育、生殖、老化をつかさどり、全身のエネルギーをためておく臓器」で、腎臓も含むがイコールではない。この腎を強化するのが、長いもやくるみ。さらにぎんなんは、尿の出を抑制する優れた働きがある。
【材料(2人分)】
・ぎんなん(水煮):10粒
・長いも:10cm
・バター:10cm
・めんつゆ(ストレートタイプ):大さじ3
・くるみ:10g
【作り方】
耐熱皿にぎんなんを入れてバターをのせ、ラップをかけて電子レンジで30秒加熱する。長いもの皮をむいて包丁の背でたたき、ボウルに入れる。加熱したぎんなんをとけたバターごと入れ、めんつゆを加えて全体を混ぜ合わせる。器に盛り、刻んだくるみをちらす。
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池田さんは、こうした「ゆる薬膳。」を食べるようになって、肌のトラブルを隠すための化粧品代が1か月10万円から3000円に激減。さらに、5kgの減量に成功し、肩こり、むくみ、花粉症、疲れ目なども改善されたという。安くて簡単に作れるので、同じような悩みを抱えているなら、トライしてみてはいかがだろうか。
【今日の健康にいい1冊】
『女40歳からの体調を整える 秒速「ゆる薬膳。」』
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った映像をYouTubeに掲載している。