シスターフッド(女性同士の連帯)を描いた映画やマンガがヒットし、女性同士の友情が注目されている。しかし、現実は、うまくは行かない。これは女性の友情の詳細をライター・沢木文が取材し、紹介する連載だ。

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このところ、女の友情をテーマにしたドラマが目立つ。韓国ドラマ『39歳』(Netflixで配信中)、『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)がヒットし、2023年4月30日から『日曜の夜ぐらいは…』(テレビ朝日系)が放送中だ。予告編では清野菜名さん演じる主人公が「愛なんか奇跡じゃない。友情こそが奇跡だ」と言い切っていた。

それを受け、淳子さん(60歳)は「人間関係は奇跡そのもの。私もそうだったんですが、この年の女の友情には、夫や生活水準などの問題が付きまとう。同じレベルじゃないと続かないんです」と語る。淳子さんは、夫の死後、刺繍教室でかつての部活仲間・絵美さんと再会し、“豊かな老後のために”と絵美さん(60歳)と友達になるも、亀裂が生じてしまったという。

【これまでの経緯は前編で】

奨学金を得て大学に通う、友人の娘

淳子さんと絵美さんは教室の後にお茶をすることにした。淳子さんはよく知っている老舗ティールームに誘ったが、絵美さんはチェーンのコーヒー店に行きたいという。

「そこはおしゃれな人がパソコンしているイメージがあり、注文方法もわからない。絵美がてきぱきと注文し、さらにオゴってくれたんです。絵美の大学生の娘がそこでアルバイトをしているんだとか。絵美は“この世に自分の遺伝子が残るなんて、信じられない”とずっと言っていたのに、子供がいることに驚きました」

オゴってくれたのは、娘から従業員用の無料チケットをもらっていたからだったらしい。40年ぶりの再会を喜び合う。絵美さんには離婚歴があると聞いたとき、淳子さんは「夫がいないのは私と同じだ」と思ったという。

「でも、絵美には恋人がいたんです。10歳年下の男性だと聞き、写真を見せてもらうと、とてもかわいい顔をしている。優しくて料理上手だと教えてくれました。昔から“飛んでる”ところがあったけれど、アラ還になってますます輝いていて、うらやましく思いました」

2週間に1回の刺繍教室で会うたびに、2人の距離はどんどん縮まる。高校の3年間、同じ私立女子校に通い、何度か同じクラスになり、地獄のように苦しいバレーボール部の練習を耐えた仲間だ。お互いの人間性も知っている。

「深いところで手を握っているような感覚もあったんです。懐かしいのはもちろんなんですが、慕わしいというか、心が温かくなるというか……。今、絵美が経済的に困っているのはなんとなくわかりました。離婚をしているし、娘が奨学金を受けて大学に進学していることも告白されました。助けてあげたいとも思いました」

ただ、それを口にしてはいけないことを淳子さんは知っていた。友達だからといって、安易に手を出すべきではない。

「昔、モデル時代の親友が困っているときにお金を貸した後、なんだかんだと理由を付けて、さらにお金を取ろうとしたんです」

100万円を渡したが、それ以上を請求し、貸さないと「なぜ助けてくれないの? 私を見殺しにするの?」と淳子さんを責めた。その後、彼女とは連絡が取れなくなったという。その経験を経て、お金の無心に応じるという一線を越えないように用心した。友情の再スタート。これまでの人生のこと、刺繍のことなどの近況を話し合った。

「絵美は私のようにお遊びで刺繍をしているのではなかったんです。趣味と実益を兼ねて手作り雑貨を販売しており、それに付加価値を持たせるために、刺繍を習っていると」

シングル女性の貧困のニュースは連日のように報道されている。絵美さんが多くの仕事を掛け持ちをしていると聞いたときも、喉元まで「困っているなら力になれるよ」という言葉が出そうになった。

【私が見せていた写真について、親友が思っていたこととは……次のページに続きます】

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