文/鈴木拓也
身近な食材でつくれる薬膳
中医学の理論を土台とした健康料理「薬膳」。その薬膳がメニューのレストラン「然の膳(ぜんのぜん)」が注目を集めている。
ここは、各地の医療機関などに出店しているチェーン店で、薬膳の第一人者・追立久夫氏が総料理長を務める。ときには1時間の行列待ちができるほどの人気だという。
その「然の膳」が、東京TMSクリニックの田中奏多院長の監修のもと著したのが『大人気レストラン「然の膳」の世界一美味しいカンタン薬膳ごはん』(アスコム)というレシピ集。ふりかけから主菜・副菜、さらにはデザートまで、日々の食生活で薬膳が楽しめる内容になっている。
薬膳と聞くと、「手に入りにくい食材や生薬を用いた難しい料理」というイメージがあるが、実はそうでもない。むしろ、重要なのはレアな食材ではなく、「組み合わせ」。極端な話、とんかつと千切りキャベツの組み合わせでも、薬膳的な効能があるという。本書のレシピも、組み合わせのコンセプトを生かして、スーパーで売っている食材でつくれるものばかり。手間を要する下ごしらえもなく、料理ベタでも気軽にチャレンジできるものだ。参考までに以下、レシピを3つ紹介しよう。
さばとひじきの旨辛そぼろ
ふりかけやドレッシングなど「かける薬膳」の1つがこちら。ピリ辛風味で、白ごはんのお供に。さばは血行を良くし、ひじきは水分の代謝を高める効果があるが、この組み合わせで、水分の滞りなどで起きる腰痛を改善する。
【材料(作りやすい分量)】
・乾燥ひじき:5g
・しょうが:1片
・にんにく:1片
・ごま油:小さじ1
・豆板醬:小さじ1/2
・さば缶:1缶
A-しょうゆ:大さじ1、酒:大さじ1/2、きび砂糖:大さじ1/2
【作り方】
準備:乾燥ひじきは水で戻す。
1 しょうが、にんにくはみじん切りにする。
2 フライパンにごま油と1を入れて弱火にかけ香りが立ったら、豆板醬を加える。
3 Aの調味料とさば缶を汁ごと、2、ひじきを入れ、ほぐしながら水分がなくなりパラパラになるまで中火で炒り煮にする。
※冷蔵庫で2~3日保存可。
薬膳スパイシーローストビーフ黒ごまソース
ぱっと見た感じでは、ふつうのローストビーフ。しかし、クコの実、八角、そしてソースに含まれる黒ごまが、いつもとはちょっと違うポイント。一緒に摂ることで、アンチエイジングの効果があるという。
【材料(作りやすい分量)】
・牛もも塊肉:400g
・塩・こしょう:小さじ1/2
・ごま油:大さじ1
A-水:大さじ2、酒:大さじ3、八角:1個、クコの実:10g
B-黒ごまペースト:大さじ2、酢:大さじ1、砂糖:大さじ1、しょうゆ:大さじ4、しょうが(すりおろし):小さじ1、にんにく(すりおろし):小さじ1
【作り方】
準備:牛もも塊肉は常温に戻し、塩・こしょうをふる。炊飯器に沸騰湯を入れておく。
1 フライパンにごま油を入れて熱し、牛肉の表面を焼く。
2 Aを火にかけ、ふつふつとしたら火を止める。
3 耐熱用袋に1と2を入れ、空気をしっかり抜く。
4 炊飯器で保温を選択し、90℃のお湯を入れて50分保温する。
5 ソースを作る。Bをよく混ぜ合わせる。
6 4を炊飯器から取り出し、お好みの厚さに切り、ソースも添える。
ユッケジャンスープ
長ねぎやにらなど、体を温める様々な食材を使った一品。身体を芯から温め、冷えを撃退してくれる効果が期待できる。
【材料(2~3人分)】
・豆もやし:100g
・長ねぎ:1/2本
・にら:1/2束(50g)
・牛切り落とし肉:80g
・ごま油:大さじ1/2
・にんにく(すりおろし):小さじ1/2
・キムチ:100g
A-水:600ml、みそ:小さじ2、しょうゆ:小さじ2、コチュジャン:小さじ2、鶏がらスープの素:小さじ1/2
【作り方】
1 豆もやしはひげ根を取る。長ねぎは1cm幅の斜め切りにする。にらは4cm幅に切る。牛肉は大きければ食べやすい大きさに切る。
2 鍋にごま油を中火で熱し、牛肉とにんにくを炒める。8割色が変わったら豆もやし、長ねぎ、キムチを加えて炒め合わせる。もやしがしんなりしたらAを加え、沸いたらフタをして弱火で10分煮る(アクが出たら都度取り除く)。にらを加えさっと煮る。
* * *
これらのレシピ3例を見ただけでも、薬膳は意外なほど敷居が低いことがわかる。いつものメニューに、薬膳の効果を発揮する食材を組み合わせることで、献立のバリエーションは無限に広がる。本書を手引きに、家庭料理をより豊かなものへと生まれ変わらせてみよう。
【今日の健康に良い1冊】
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)で配信している。