日本人は大のお風呂好き。しかし、正しい入浴法を誰かから教わる機会はなかなかありません。そこで温泉・お風呂の医学研究者である早坂信哉に、現代人が知っておきたい入浴法について語っていただきました。
*
パソコン作業が長時間化した現代の病ともいわれる肩こりですが、痛みのひどい人は湿布や整体、マッサージなどさまざまな方法によって痛みを和らげていることでしょう。
温泉療法専門医の私からみると、入浴も肩こりの痛みの緩和に効果のある療法のひとつです。
長年の入浴の効果の研究をもとに、今回は慢性化した肩こりを癒す方法をみなさんにお伝えしていきます。
■肩こりを発症しやすい人の特徴
まず肩こりの原因についてですが、原因はいろいろとあります。
中でもデスクワークなどで同じ姿勢を長時間強いられる方やパソコンをじっと見つめているような方がなりやすい傾向にあります。筋肉の緊張が慢性的になると肩こりになるのです。
また精神的に緊張しやすい、さまざまなストレスに常時さらされている人も肩こりを発症しやすいタイプといえます。体を緊張させる交感神経の働きが優位になり、体の筋肉が強張ってしまうためです。
基本的にはお風呂に入ること自体が肩こりには良薬です。副交感神経が優位になり、血流がよくなり、筋肉も弛緩して症状がやわらぐのです。
それではどのような入浴が肩こりによいのか見ていきましょう。
■肩こりには40℃のお湯に10分
肩こりがある場合は、基本は肩まで浸かって温めてあげることです。肩まで浸かったら、肩や首を回すなど運動をして筋肉をほぐすとさらに効果的です。
肩こりは肩の周辺の筋肉である僧帽筋などが緊張で硬くなってしまうことによって、血流が悪くなることから生じます。
肩まで温められるくらいのお湯を張り、肩まで浸かって温めます。肩こりの方に効果が高いのは40℃のお湯に10分くらい浸かることです。
これはややぬるめのお湯にじっくりと浸かることで、自律神経の中でも副交感神経に働きかけ、心身のリラックス効果を生みだすためです。
■入浴中の肩こり解消ストレッチ
肩を温めたら、もっと積極的に肩こりを解消していくために周辺をストレッチします。
肩を前まわし、後ろまわしに回し、硬くなった肩甲骨をほぐしていきましょう。肩甲骨を後ろでぐっと寄せるように回します。
前後にほぐれたら、上下にもほぐしていきます。肩をぐっと上に引き上げ、息を吐きながら、一気に力を抜いて、肩を落とします。これを2~3回繰り返し、肩周りの血流をアップさせます。
スマートフォンやパソコン、長い時間読書をするなど、日常生活では肩は内側に入りやすいので、胸を張り、肩を正しい位置に戻すようにストレッチしていきます。
肩が凝っている人は首や腰など全身の筋肉にもこわばりが生じていることが多いので、肩周辺のストレッチに加えて首や腰のストレッチやマッサージも取り入れるとなお良いでしょう。
*
肩こりを放っておくと前かがみになって姿勢が悪くなり、年齢よりも老けてみえますし、首や腰の痛みにもつながっていきます。入浴の習慣で肩こりが悪化するのを防いでいきましょう。
監修・構成/早坂信哉
取材・文/庄司真紀
指導/早坂信哉(はやさかしんや)
1993年、自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。2002年、自治医科大学大学院医学研究科修了後、浜松医科大学准教授、大東文化大学教授などを経て、現在、東京都市大学人間科学部教授。一般財団法人日本健康開発財団温泉医科学研究所所長。博士(医学)、温泉療法専門医。
『たった1℃が体を変えるほんとうに健康になる入浴法』 早坂信哉 著
(KADOKAWA)